風を切る記憶...テヘランを再発見するイラン映画『アミールの胸の内』
私のテヘランの記憶は、冬の濃いスモッグに覆われた灰色の空気だ。冠雪しているはずの、北方のアルボルズ山脈がかすむほどの淀み。
春から初夏にかけて、ヴァリエ・アスル通りの街路樹が生み出す緑の回廊は確かに美しかったが。
この作品が見せてくれたテヘランは、私の知っている現実よりいくぶん鮮やかだったことは確かだ。
そもそも、私が暮らしていた頃のテヘランで、自転車に乗る人などほとんど見かけなかった。起伏の激しい地形、交通量の激しさ、そして“都市の大きさ”が、ペダルを踏む移動手段を非現実的にしていたからだ。
だがスクリーンの中で主人公アミールは、配達の仕事をしながら、風を切って自在に走り回る。
この「自転車配達人」という設定こそ、監督アミール・アジジの巧妙な選択だ。都市を平面的に映すのではなく、“身体の高さ”から街を捉え直すことで、テヘランの美しさと、そこに生きる若者の息遣いを、余すところなく描き出している。
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