先行者としての一地点…東京・中野「カルタゴ」と日本のアラブ料理
中野のアラブ・地中海料理店「カルタゴ」が閉店を発表した。
店頭に掲げられた告知文は淡々としていて、過度な感傷を排したものだった。1990年から2025年まで——東京におけるアラブ料理の歴史の一片が、ひっそりと幕を下ろした。
日本に現存する中東料理店としては最古のひとつだろう。1990年当時、日本でアラブ料理を食べられる店はほとんどなかった。西新宿のレバノン料理店「シンドバッド」のような例外はあったが、北アフリカ、とりわけチュニジアに焦点を当てた店は、ほぼ皆無だったはずだ。その意味で、カルタゴは「老舗」というより、先行者だった。
シェフは美大出身である。1990年、まだ「中東料理」という言葉自体が今ほど一般的でなかった時代に店を開いた。その原点について、私は本人から直接話を聞いたことがある。
パリ留学中、同居していたチュニジア人を通じてアラブ料理を知ったという。造形や色彩を学んでいた若者が、異国の台所で香辛料と油と小麦の文化に触れ、それを東京で表現しようとした。その経路自体が、すでに地中海的な物語だった。
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