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赤の女王は薔薇を染めない。/Novel by cherie

赤の女王は薔薇を染めない。

1,957 character(s)3 mins

千切くんにそこらじゅうにキスされるお話。

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 眼の前で、赤い影が動いている。
 額は祝福。髪の生え際と少し下に。耳は誘惑。耳たぶをやさしく食むようにして。頬は親愛。まるで挨拶みたいに軽やかに。喉は──喉は。
「んぅっ……」
 思わず声を漏らすと、赤いロングヘアがふっと持ち上がり透き通る瞳がわたしを睨んだ。
「こら、動くな。やりにくいだろ」
「ご、ごめんなさ……んっ、んんっ」
 喉は強い欲求。最早噛みつくようにして、豹馬はわたしの喉に口づけた。彼は今、わたしの勉強の成果を見ているところだ。彼の好きな読書中、見かけた言葉に興味を持った豹馬はそれを調べ上げてわたしに見せてくれた。
 キスをする部位によって、意味が変わる。25箇所もの場所に別々の意味があって、一覧をノートに書いたものを見せられた。
「それ、丸暗記でもいいから覚えられたらご褒美やるよ」
 言って、ニィっと笑う顔は高飛車なそれ。サディスティックな笑みに思わず釣られ、わたしはその条件を受け入れた。そして今、なんと実践で答え合わせをさせられている。
 豹馬がわたしの髪を一房手にして口づけを落とす。愛おしさの表現だ。わたしだって、豹馬の艷やかな赤い髪にならキスをしたい。次に目を閉じるように言うと、瞼へひとつ。意味は強い憧れだ。なんてロマンチックなシチュエーション。目を開ける前に落ちてきた鼻の頭へのキスは大切にしたいという思いの現れ。とてつもなくしあわせな気分になる。そこまでは、良かったんだけど。
「あっ、ちょっ、ちょっと待って……!?」
「だーめ」
 豹馬の指がわたしのブラウスにかかり、ボタンをふたつみっつ外していくと首元を大きく開く。恥ずかしいのに許してもらえず、そのまま続けるよと言いながら彼の唇はわたしの鎖骨へと落ちてくる。鎖骨へのキスは、性的な、欲求。緊張からか思わず身体を跳ねさせてしまうと、眼下にあった彼の視線が持ち上がり、ゆるりと笑みの形に細くなっていく。心臓が、息をするのをやめてしまいそうだ。そのまま持ち上がってきた顔はわたしの首筋へと執拗にキスの雨を降らせてくる。それもそのはず、首へのキスは執着心。痕が残ってしまわないかそれこそ心配になるほどに、豹馬の唇が吸い付いてくる。
「ひゃぁっ……」
 今度のは流石に豹馬も緊張したのか、一瞬で済んだ。胸へのキスは独占欲。相手を所有したいという気持ちの現われだ。
「……足りない?」
「だ、だ、大丈夫だよ……!」
 上ずった声を出すわたしを眺めて笑いながら腕を取り、また口づけ。腕へのキスは恋慕の情。ゆっくりと、慎重に口づけられてわたしの心臓はどきんと跳ねる。唇は下がっていって手首へと。強い好意をストレートに示しながら、手の甲へ。敬愛。ひっくり返した手のひらへは懇願、指先は感謝。
「ちょ、っと待って、この続きは流石に──っ」
 このあと、リストは背中や腰、おしりへと続いていた。足の際どいところにまで意味があったのは覚えているけれど、実践されたらたまらない。豹馬も流石にそこまでしようとは思わなかったのか、そうだなと呟き目線を合わせてくる。
「じゃあ後で他の場所も覚えてるか確認するとして──なあ、お前はどこがいい?」
「え……っ?」
 赤い髪がさらりと揺れる。彼がゆっくりと首を傾ぐ流れに乗って。
「お前が一番してみたい場所が『正解』だったら、ご褒美をやるよ」
 最初と条件が変わっている。ずるいと言っても豹馬は笑うばっかりだ。
「どこでもいいからしてみろよ、ほら。どうした?」
 艶然と眼の前で微笑む赤の女王。その赤さに負けないほどに、わたしは真っ赤に染まっている。頬の熱が触らなくてもわかるくらいに。ぎゅっと目を閉じて、覚悟を、決めろ。豹馬へと腕を伸ばし、首筋に絡める。顔をそっと近づけて──
「……よくできました」
 離れた唇から、豹馬の満足げな声が漏れてくる。軽く触れただけのそこは、確かな熱を持っていた。ギラギラとした瞳がわたしを映し出す。赤い、赤い、あなたに染まりきったわたしの姿を。
「それじゃあご褒美だ。いい子なお前にだけ、とっときのをくれてやるよ」
「んっ、ぅ……んんっ……!」
 離れたばかりの唇がもう一度強く押し付けられる。油断していた隙間に無理矢理にねじ込まれた熱い舌がわたしの中で絡まりあっていく。吐息も唾液も愛情もなにもかも、ミックスされて蕩けていってしまう。息の仕方がわからない。頭がまっしろになっていく。だけど、眼前はずっと赤いまま。押し付けた唇を激しく重ね合い、わたしたちは口づけの洪水に溺れて呼吸を見失っていく。
 ────────もっと。
 ほんの刹那離れた唇から、どちらともなく言葉が落ちる。白薔薇を塗り損ねたペンキのように、真っ赤に滴って落ちていく。ぽたり。ぽたり、ぽたりと。

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