財務省がまとめた2025年の貿易統計(速報・通関ベース)で、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が2兆6507億円の赤字になったという。赤字は5年連続。アジア向け半導体など電子部品の輸出が増えたためだ。一方、米国向けは高関税措置の影響で5年ぶりに減少した。
貿易赤字と聞くと、赤字は悪いものだと思ってしまうが、単に輸出と輸入の差額であり、赤字が悪く、黒字がいいわけでない。仮に日本国内で貿易収支を計算すれば東京は日本各地のものを大量消費しているので貿易収支は赤字だろう。
日本の貿易収支赤字を心配する人に、日本は経常収支は黒字だというと、それで安心してしまう。
経常収支とは、その貿易収支にサービス収支、所得収支を加えたものだが、経常収支黒字で安心するのも困ったものだ。
まず、国際収支の経常収支黒字について、歴史的に重商主義時代にはいいものと信じられていたが、今となっては経済学的には誤りだ。
カナダのように経常収支が100年以上にわたりほとんどの年において赤字でも、発展してきた国がある。アイルランド、オーストラリア、デンマークなどの経常収支も第二次世界大戦以降、大体赤字である。
世界各国の平均経常収支対GDP比と平均実質成長率について、長期的にみると相関はほぼなく、経常収支対GDP比と実質経済成長率には、なんら関係がないことが分かる。
経常収支については、国の発展段階で異なるという「国際収支の発展段階説」がある。
国の発展の初期段階では、輸出するものがなく、資本も海外に頼るので、経常収支は赤字となる((1)未成熟・成熟債務国段階)。
そのうち貿易収支が黒字化し、所得収支は赤字になり、経常収支が徐々に黒字になる((2)債務返済国)。
その次には所得収支も黒字になる。この段階になると巨額の経常収支になる((3)未成熟債権国)。
その次の段階では、貿易収支が赤字になり、所得収支が黒字になり、経常収支の黒字は縮小する((4)成熟債権国)。
そのうち、貿易収支の赤字が多くなり、経常収支も赤字に転ずる((5)債権取崩国)。
今の日本は(4)成熟債権国の段階で経常収支黒字であるが、いずれ(5)債権取崩国になり経常収支赤字になるだろう。ただし、この考え方は超長期で妥当するものだ。
もちろん、(4)成熟債権国や(5)債権取崩国であっても、成長するかしないかは、その国の経済運営次第だ。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)