3年ぶりの京都出店…文学フリマというイベントの磁場の強さ
2023年1月以来、3年ぶりとなった文学フリマ京都への出店だった。
1月の京都は容赦なく冷える。正直なところ、寒さを理由に足が遠のいていた面もあるのだが、結果から言えば、いろいろな意味で「来てよかった」と思えた。
公式発表によれば、今回の 文学フリマ京都10 は、
出店者 1,738名、一般来場者 5,873名、来場者総数 7,611名。
過去最高を更新したという。数字は雄弁だが、実際に会場に立つと、その重みは身体感覚として迫ってくる。
開幕は正午。私は少し早めに会場入りし、1階ホールでブースをセットした後、3階のもうひとつの会場へ向かった。
つい最近、芥川賞を受賞した畠山丑雄さんが、友人とブースを出すという情報をキャッチしていたからだ。受賞作の概要を新聞で読んで、興味を持った。その畠山さんにごあいさつして、自作のZINEを手に取ることができたのは、文学フリマならではの距離感だろう。受賞作とZINEを読み比べるのが楽しみだ。
二つの会場に、千を超えるブースがひしめく光景は、圧巻だった。2年前と比べてずいぶん会場が広くなった記憶だ。
今回、とりわけ印象に残ったのは、私の屋号「カフェバグダッド」の由来について、熱心に尋ねてくれた来場者がいたことだ。
話を聞くと、その方は小学生から中学生だった1970年代、家族でバグダッドに暮らしていたという。1980年に始まり8年も続いた「イラン・イラク戦争」の前のことだ。私が初めてバグダッドを訪れたのが2001年の1月なので、それよりはるか前のこと。
当時、日本企業の駐在員とその家族が数千人規模でイラクに暮らしていた、という話は知識としては知っていたが、その時代のバグダッドを「生きた記憶」として語る人に出会えるとは思っていなかった。
当時の駐在員の間では、「戦前組」「戦中組」という言葉があったという。ブースにいらっしゃった方は、「戦前組」だったそうだが、その方の父親は、開戦後もバグダッドに居残ったのだという。父親は、今もイラクの思い出をよく話しているという。つい最近も、イラク特有の「ひし形」をしたパンを思い出して「ああ、あのパンをまた食べたいな~」と言っていたという。
文学フリマという場所が、ただ本を売るというだけでなく、出店者と来場者の交流を通じて、時間や記憶をも引き寄せる場所にもなることを、あらためて思い知らされた瞬間だった。
ブースのお隣さん、ご近所さんとの交流も楽しい。
タイ焼きについての本を出していた「みなみん」さんは、その土地土地のタイ焼きを求めて全国を歩いているという。その内に秘めた情熱の強さにおどろかされた。掲載写真にもこだわっていて、カメラマン同行で伊豆大島などを訪れ撮影するという徹底ぶり。「好き」がここまで突き詰められると、ひとつの文化史になるのだと実感する。
今回は、京都市内の宿代高騰を避け、滋賀県大津市に2泊した。これが予想以上によかった。
京阪電車と地下鉄東西線を乗り継げば会場までのアクセスも悪くない。紫式部ゆかりの寺としても知られる石山寺に参詣し、東海道の要衝だった瀬田の唐橋を渡る。石山駅周辺の居酒屋で呑むのも楽しかった。大津市中心部の旧東海道沿いの街なみには、時間が幾層にも重なったような情緒があり、ぶらぶら歩くだけで歴史をかみしめている感じになる。おみやげには琵琶湖産を使った鮒ずしを買い込んだ。
昨年は、文学フリマで福岡、高松、札幌、大阪、岩手を訪れ、ZINEフェスでは仙台や金沢にも足を運んだ。
出店は、長いこと訪れていなかった街、あるいは初めての街を訪れるきっかけになる。イベントそのものだけでなく、街を歩き、人と話し、土地の空気に触れることで得られる学びや楽しさもある。
次は二月の文学フリマ広島。
広島市内はほとんど歩いたことがない。いまから楽しみでならない。文学フリマは、本を売る場であると同時に、私にとっては、まだ知らない場所へ連れていってくれる機会でもあるのだ。
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