【トランプ政権の移民対策】米滞在資格、突如剥奪 日本人留学生ら「恐怖」
「米国第一」を掲げるトランプ政権が移民対策と外国人審査の厳格化を進めている。全米各地での大規模な移民摘発に加え、発足後の約1年で10万件以上の滞在ビザを取り消した。事前の警告なく、突如実施される事例も相次ぎ、影響は日本人の留学生や研究者らにも及ぶ。「恐怖や重圧を感じる」。自由でオープンだった米社会で閉塞感が急速に強まっている。
▽説明なし
「あなたの滞在資格は国土安全保障省に取り消されました」。2025年4月8日、西部ユタ州のブリガムヤング大の博士課程で人工知能(AI)などを学ぶ恩田賢さん(42)は大学からのメールに目を疑った。
同1月に発足した第2次トランプ政権が反イスラエルデモに参加した留学生らを「安全保障に脅威を与える外国人」とし、滞在資格剥奪を進めていることは知っていた。だがデモに参加したことはない。「なんで自分が」。手が震えた。
国土安全保障省は資格喪失から15日以内の国外退去を規定している。期限まで残された日数は10日ほど。精密機器メーカーで勤務後、19年に家族で渡米。これまでの生活を失いかねない。「とにかくなんとかしないと」。急いで弁護士に相談した。
弁護士は移民・税関捜査局(ICE)に拘束されないように手を打ってくれた。同じ境遇の留学生らと集団訴訟を起こすことも決めた。自身の正当性を訴えることも重要だと助言されテレビ局のインタビューに応じた。
帰国に備え荷物もまとめた。期限前日に訴状を提出した直後「滞在資格が回復した」と通知があったという。最後まで理由の説明はなかった。
▽覚悟
「何が原因で当局に目を付けられるか分からず、重圧を感じている」。ハーバード大医学部の内田舞准教授(43)は指導する留学生らの変化について「恐怖で発言を控える人もいる」と説明した。小児精神科医の自身も同様で、米国外の学会出席は見送っている。
米国はこれまで多くの留学生を受け入れてきたが、米国際教育研究所は昨年11月、秋学期に入学した新規留学生数が前年に比べ17%減ったと発表。ビザ審査の厳格化が影響したとみられ、この傾向が続く可能性がある。
「今の状況は米国にとっていいと思えない」。世界中から集う人材が自由に研究を続け、イノベーション(技術革新)を生み出してきた米国で、意見を表明することすらリスクを伴い、自由な社会が失われつつある。内田さんは「科学や医療を後退させないためにできることをする」と覚悟をにじませた。(ニューヨーク共同=篠原雄也)
有料会員登録がおススメ!
会員記事が読み放題
気になる記事を保存
新聞紙面(紙面ビューアー)の閲覧
信毎ポイントで商品交換
継続利用で初月無料
※適用条件がございます