再審見直し、法制審案まとまる 弁護士ら「冤罪救済を軽視」と反対
刑事裁判をやり直す「再審」制度の見直しを検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は2日、法務省が示した要綱案を賛成多数でとりまとめた。証拠開示の範囲を限定し、再審開始決定に対する検察の不服申し立て権限を維持する内容で、弁護士らは「冤罪(えんざい)被害者の声が軽視されている」などとして反対した。
法務省は法制審の答申を受け、衆院選後の国会に刑事訴訟法の改正案を提出する。現行法が制定された1948年以来、初めての再審制度見直しが実現する見通しとなった。要綱案の内容に対しては与野党に反対論があり、最終的な法改正の形はなお見通せない。
再審とは、通常の刑事裁判(通常審)で有罪が確定した無実の人を、冤罪(えんざい)被害から救うための制度。現行法には裁判をやり直すかどうかを決める「再審請求審」に関する規定が乏しく、不十分な証拠開示や審理の長期化が問題になってきた。
2024年には、静岡一家殺害事件で死刑が確定していた袴田巌(いわお)さん(89)が再審無罪とされたが、再審請求を始めてから43年の年月を要した。法務省は法制審の部会を設け、25年4月から見直しを議論してきた。
要綱案によると、再審請求をスクリーニング(選別)する手続きを新設。再審請求を受けた裁判所は速やかに調査を行い、明らかに再審請求理由のない請求などを棄却しなければならない。
そのうえで、入り口で棄却しなかった請求について「審判開始」を決定。この後でなければ、証拠開示や証人尋問といった事実の取り調べを行うことはできない。
最大の焦点である証拠開示については、検察が開示義務を負う範囲を限定。裁判所が①再審請求理由との関連性の程度②再審開始の可否を判断するうえでの必要性の程度③開示に伴う弊害の内容と程度――を考慮し、相当と認めた場合、検察に対して開示命令を出すよう義務づける。
裁判所が証拠開示命令の判断をするうえで必要な場合は、範囲を指定して、証拠の一覧表を示すよう命じることもできる。ただし裁判所だけが見ることのできる「インカメラ方式」で、弁護側は閲覧できない。
検察が開示した証拠については、再審手続き以外での「目的外使用」を禁止。弁護側がメディアや支援者にそのまま公開することができなくなる。罰則規定も設け、1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金とした。
一方、もう一つの焦点だった再審開始決定に対する検察の不服申し立て禁止は、要綱案に盛り込まれなかった。地裁が再審開始を決定しても、検察はこれまで通り、高裁への即時抗告や、最高裁への特別抗告ができる。
法務省は4月にも政府法案を閣議決定する方針だが、その内容は今後の与党審査や国会審議で修正される可能性がある。
再審制度の見直しをめぐっては、超党派の国会議員連盟(会長=柴山昌彦・自民党政調会長代理)がすでに議員立法案をまとめている。再審開始決定に対する検察の不服申し立て禁止を明記し、証拠の目的外使用禁止は盛り込んでいない。
法制審案のポイント
・裁判所が再審請求をスクリーニング(選別)する調査手続きを新設
・再審請求理由と関連性や必要性があり、開示しても弊害のない証拠について、裁判所が検察に開示命令
・開示証拠の「目的外使用」を禁止
・再審開始決定に対する検察の不服申し立て権限を維持
・通常審の判決に関与した裁判官を再審請求審から除外。再審請求審の決定に関与した裁判官を再審公判から除外
・再審無罪が確定した事件に限り、再審手続きの費用を一部補償