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2025年9月、金の国際市場が大きく揺れました。世界各地で相次いで発覚した「リチウム合金偽装ゴールドバー事件」では、これまでの常識では考えられない巧妙な偽装が明らかになりました。金メッキや単なる重金属の置換ではなく、表面1~2mmを本物の金で覆い内部にリチウムなどを用いた特殊合金を仕込む新手法が使われ、多くの検査をすり抜けてきたのです。本記事では、蛍光X線分析(XRF)、超音波検査、導電率測定など最先端の検査機器がどう偽造バーを暴き、日本の投資家が今まさに注意すべきポイントを徹底解説します。価格高騰が続く金投資市場の最新リスクと、その対策を2025年11月の一次情報でお届けします。
リチウム合金偽装ゴールドバー事件とは
2025年9月までに発覚した偽造ゴールドバー事件は、単なる金メッキや金張りとは比較にならない高度な技術が使われています。特に問題視されているのが、リチウムを含む特殊合金を内部に仕込む手法です。リチウムは極めて軽量ですが、複数の金属を調合することで金とほぼ同じ比重と色調を実現します。他方、過去に横行したタングステン芯も未だリスク要素です。タングステンは比重も19.25g/cm³と金(19.3g/cm³)に極めて近いため、一般的な重量検査や外観検査では発見困難です。実際、2025年に日本の大手買い取り店にも類似事件の持ち込みが確認されています。
最新の偽装手口と判別の難しさ
表面だけ本物、内部は偽物
リチウム合金偽装では、バーの表面1〜2mmに本物の金を被せます。このため、多くの検査機関で用いられているXRFなどの表面分析では「純度99.99%」と判定されてしまいます。表面テストだけでは真贋を見抜くことができず、視覚的にも本物との識別は不可能です。
過去事件から見る手口の進化
2019年の偽造ブランドバー(スイス精錬所のロゴ偽造)、2020年の中国Kingold Jewelry事件、2025年の米国ポートランド事件など、数億~数千億円単位で流通した事実があります。一度流出すれば世界中に広がる構造的な問題が存在します。
XRF(蛍光X線分析)の限界と役割
XRF分析は非破壊で金や貴金属の純度を測定する標準的な手法です。「表層数μm」しか測定できないため、表層だけ金で内部が異なる偽造バーは発見できません。日本国内の分析専門会社も公式に「内部に異素材があるインゴットの判別は困難」と認めています。ただし、メッキや合金比率が異なるもの、不純物混入(鉛・ニッケル等)は発見可能です。XRFは万能ではありませんが、粗悪な偽装や健康被害のある違法混入を排除する「第一関門」として重要です。
質量分析・超音波検査・導電率測定 最新検査機器の威力
質量分析とは(分子構造で暴く)
質量分析は一部をサンプリングして、分子レベルで構成元素を解析します。破壊検査であり、市販金製品には適用範囲が限られますが、疑義品の徹底解明には有効です。
超音波検査(UT)による非破壊判定
超音波は内部の材質や気泡、継ぎ目の有無を反射パターンで検出します。異材や空洞があれば明確な違いが出るため、非破壊かつ高精度な検査が可能です。日本企業(オリンパスなど)も専用機器を開発しています。XRFと超音波の2段階システムが導入されつつあり、世界標準の技術となっています。
導電率測定・SIGMASCOPE GOLDの徹底解説
ヘルムート・フィッシャー社のSIGMASCOPE GOLDは、非破壊で最大36mmまで貫通測定が可能です。金・タングステン・合金の導電率差を利用し、内部の異材混入を明確に判別できます。日本国内では東栄産業が販売しており、大手宝飾店や質店などですでに実装が進行中です。DIN ISO21968に準拠しており、包装内製品も検査可能というハイレベルな仕様です。
最新事件と主な流通ルート
主要事件の解説
- 2019年:スイス精錬所ロゴ偽造事件(JPモルガン倉庫に偽バー流通)
- 2020年:Kingold Jewelry事件(中国大手の銅製偽造バー、28億ドル規模)
- 2025年8月:米ポートランド女性が43000ドル相当の偽造金販売で逮捕
偽造品のサプライチェーン
製造地は主に中国の非公式工場、流通は香港・日本・タイ、最終消費は欧米投資家に分配される。正規ディーラー経由で一度でも流れると、サプライチェーン全体に一気に拡散するリスクが存在。
日本市場の現状と投資家が守るべき対策
主要地金商の販売・管理体制
田中貴金属は「直営店・特約店のみでの販売」を徹底しており、正規店舗以外での流通を防ぐことで、品質と信頼性の担保に努めています。三菱マテリアルは流通経路と証明書の完全管理を実施し、購入履歴や証明書の現物確認が必須となっています。徳力本店は、独自の検査証明書の原本を発行することで、真贋判定や後追い確認を可能にしています。
検査機器の普及と技術革新
現在、貴金属業界では検査機器や鑑定技術が広く普及しており、これにより品質保証・偽造防止の意識が高まっています。しかし、最新技術を駆使した偽装も出回っているため、検査機器の導入だけでは完全な安全が確保されないケースも増えています。そのため、信頼できる流通ルートや検査証明書の確認がますます重要になっています。
正規ルート・証明書の重要性
貴金属やブランドジュエリーの購入では、正規ディーラー以外での買い付けは厳禁です。必ず公式ブランドサイトで販売店を確認し、現物の証明書を直接確認してください。市場価格より10%以上安いものや包装・書類に不備が見られる場合は、すぐに警戒することが重要です。
個人売買やオークション取引のリスク
フリマや個人売買、オークション経由での貴金属購入は避けるべきです。現在の技術力では非常に巧妙に偽装された品も流通しており、これらの取引は高リスクとなります。リスクやトラブルを防ぐためにも、必ず公式・正規ルートで購入しましょう。
安心できる投資環境のために
2025年11月現在、XRF・超音波・導電率測定といった複合的な検査システムの導入により、従来の方法では見抜けなかった偽造品にも99%以上の高精度で対応可能となっています。金投資は今後も価値ある資産形成手段であり、正規ルートの利用と最新検査技術の理解、安すぎる商品への警戒という3つの原則を守れば、安心して取引ができます。偽造技術も進化していますが、それを見抜くための道具も進化しているため、知識と注意深い行動が資産を守る最良の武器となります。今後も最新情報を常にキャッチアップし、健全な投資判断に活用してほしいです。