3年間暴力団に潜入し懲戒免職・服役…「警察組織に梯子を外された」元警察官が語る"潜入捜査"の実態
■潜入中、ずっとやめたいと思っていた ――今回の「仮装身分捜査」をどう思うか? 【高橋】私の潜入捜査を検証しなかったのだろうか。検証するなら私たちの話を聞くべきだが、当局から接触はない。失敗を認めたくないから検証しないのだろう。 私が潜ったのは暴力団だが、仮装身分捜査の対象は暴力団ではなく半グレ集団だ。暴力団以上に何をするかわからないから危険度が増す。潜った警察官の保護対策を、辞めた後も含め万全にしなくてはならない。上層部に現場の警察官を守り切る覚悟がない限りやるべきではない。 それに今回の内容を見ると、仮にうまくいっても逮捕できるのは組織の下っ端ではないか。本来逮捕するべき首魁クラスは無理だと思う。そもそもこの種の捜査はひそかにやるべきで、大宣伝したら相手に防御策を講じさせる。 ――それでもあなたのように上司から命令されれば現場の警察官は逆らえない。後輩への助言があれば。 【高橋】潜入中、ずっとやめたいと思っていた。失敗の生き証人として言いたい。潜入捜査をやったら警察官を辞めざるを得ない。任務終了後に幹部になれる保証もない。家族のこと、親のことを考えて判断してほしい。 ■90年代の潜入捜査、元警察庁長官も「知らなかった」 高橋さんが挑んだ潜入捜査を警察庁側はどう見ているのか。東大卒業後の1978年に警察庁に入った元長官、金高雅仁さん(71)に聞きました。 金高さんは警視庁刑事部長や警察庁刑事局長などを歴任し、刑事捜査部門に詳しいとされる警察官僚です。在イタリア日本大使館在勤中は本場のマフィア対策を調べ尽くしました。日本の組織犯罪については「下っ端ではなく首魁クラスを逮捕しなければワルの撲滅はできない」が持論で、現場に奮起を求め続けました。 ところが金高さんは、90年代半ばの高橋さんたちの潜入捜査を知りませんでした。金高さんは当時、警視庁捜査2課長や刑事部参事官でした。銃器対策は管轄外ではありますが、ご存じないという。極秘裡に実施したことがうかがえます。 ■仮装身分捜査は「ないよりまし」 今回の仮装身分捜査については、「ないよりましだが、劇的な効果は期待できない」と冷ややかな見方をします。犯罪組織は、首魁から末端の間に多くの役割別人物を配置していて、末端は階層が上の人物を知らないし、その人物も同じ。雇われたふり作戦で捜査員が接触できるのは末端で、そこから上層部にまでたどり着けない、というのが理由です。 金高さんは「末端の者を『協力者』として運用してはどうか」と提案します。