3年間暴力団に潜入し懲戒免職・服役…「警察組織に梯子を外された」元警察官が語る"潜入捜査"の実態
■暴力団に潜入、警察に「梯子を外された」 その高橋さんは当方の取材に「警察組織に梯子を外されたという思いがある。私は失敗の生き証人」と話しました。今回の仮装身分捜査に参加する後輩には「よかれと思ってやるだろうが家族や親のことを考えて断った方がいい」と呼び掛けます。 潜入捜査の内実を聞きました。 ――あなたは1976年に大阪府警警察官となり、府警本部生活安全部在籍中の96年に潜入捜査を始めたと聞く。志願したのか? 【高橋】上司からの指示だ。警察官の身分を隠して暴力団組織や覚醒剤密売組織に入り込み、内部から拳銃の密売や所持に関する情報を入手せよ、と。「これまでにない捜査手法を使う」「場合によっては刑務所に入るおそれもある」「殺し以外は何をしても守る」とも言われた。 ――覚醒剤と拳銃は関係があるのか? 【高橋】覚醒剤を密売する者は当時、多くが護身用に拳銃を持っていた。関係は深い。 ――潜入に際し、やったことは? いきなり組事務所に行って「ごめんください。組に入りたいのですが」とは言えまい。 【高橋】まずは協力者作りを指示された。暴力団の幹部で温厚な性格、裏切らない、覚醒剤の密売をしている、妻子持ちで子煩悩、金銭に汚くない人物を探して取り込め、と。そんなの簡単に見つかるわけがない。至難の業だ。しばらく難航したが、同僚に紹介された男性を協力者にすることができた。1年以上かかった。 ■「ばれたら港に浮かぶぞ」 ――協力者には警察官と明かしたのか? 【高橋】明かした。そのうえで潜入捜査の目的を告げたら、協力者は驚いていた。「ばれたら港にあなたの死体が浮かぶぞ」と言われた。 ――そこからどんなことを? 【高橋】自分の見た目を変えることから始めた。黒髪をオレンジ色に染め、背広をマオカラースーツ(立襟のスーツ。著名なマジシャンや料理研究家が愛用していた)に変えた。氏名も「尾安圭司(おやす・けいじ)」とし、名刺も作った。 ――偽名のいわれは? 【高橋】やくざは刑事のことを「おやっさん」と呼ぶことが多い。街中で、事情を知らない知り合いのやくざからそう呼ばれてもいいように。「刑事さん」と呼ばれることもあるので、「おやす・けいじ」にした。 ――名刺の肩書は? 【高橋】協力者が営むバラエティショップの「主任」とした。このショップの2階を情報収集の拠点とし、公金の5000円で買った応接テーブルを入れた。上司に領収書を出した。 ――そこに出入りしていると、暴力団関係者から怪しまれないか。 【高橋】危うい場面もあったが、協力者が「この人は私が服役中に助けてくれた命の恩人で、兄貴分だ」とごまかしてくれた。以来、周囲の私への警戒感は薄れていった。