『星獣戦隊ギンガマン』第二十一章『トマトの試練』
◾️第二十一章『トマトの試練』
(脚本:荒川稔久 演出:辻野正人)
導入
前回までがやや重過ぎたということの反省なのか何なのか、今回はまたもや息抜き回ということで第十四章以来の荒川脚本回で、中身はほぼあってないようなものだ。
ここくらいしか出番がないと思ったのか、第十一章以来となる鈴子先生も再登場し、ゴウキと青山勇太少年以外の4人とも今回が初対面で海へバーベキューという構成になっている。
冒頭ではゴウキ以外の4人が水着姿で海水浴を楽しむというシーンも交えつつ、ハヤテはハチミツ以外にもトマトが苦手だったということで、結構な偏食であるようだ。
しかも敵側までなぜだか本気でギンガの光を探すためにトマトを狙うというわけのわからないことをやっていて、前回までと比べると話も演出的にもスケールダウンしている。
まあ荒川脚本だからと言えばそれまでなのだが、今回はお話に関しては他の戦隊でもよくやってるような息抜き回とほぼ大差ないクオリティーだろう。
というか、こういうナンセンス系のシュールギャグは『激走戦隊カーレンジャー』が一番面白いし、実際「カーレンジャー」での荒川脚本は筆が乗っていた。
その点本作は荒川自身も「アバレンジャー」のムック本で述懐していたが、いわゆる「ジュウレンジャー」「ギンガマン」のようなコテコテの王道は苦手だったという。
実際、この人がメインを担当した作品も含めて、ド直球なストレートよりもパロディを前提とした大きな同人誌みたいな二次創作の方が得意なようでもある。
とはいえ、じゃあ全く面白くないのかと言われればそんなことはなく、脚本的にはそんなに面白くないはずのネタを役者の演技と演出力で何倍にも膨らませて面白く仕上げている。
ここに私は映像作品を撮ることあるいは見ることの快楽があると思え、荒川脚本は本人の脚本よりもそれを膨らます演出家と演者の演技力で創意工夫するケースが多いのだ。
今回もまさにその一例であり、末吉広司と照英がアホな状況をどこまでも真剣に演じることで予想だにしない大笑いしてしまうような状況を作り上げてしまった。
これに関しては末吉氏がDVDブックレットのインタビューで「照英君と話し合って大真面目にやり切ろうと決めた」ということを述べている。
まあそんなこんなで終始ほぼ緩みっぱなしのギャグなのだが、一方で今回は黒騎士ブルブラックVSブドーというある意味夢の一騎討ちが見られるのも美味しいところだ。
ギンガマン側がほぼギャグになっている分、そのギャグ成分が一切ない黒騎士とブドーのシリアスさでギリギリ物語としての格を落とさないように調整した感がある。
しかし、それですらも争いの大元になっているのがトマトであるというのがどこまでも締まりがないが、次回以降が結構重めの展開が続くので致し方ないといったところか。
今回に関しては小難しいことを考えずに大笑いして楽しむ他はないだろう。
黒騎士VSブドーというある意味夢の一騎討ち
さて、全体通してほぼ馬鹿馬鹿しい話になっている中で、唯一シリアスだったと言えるのが黒騎士VSブドーの一騎討ちだろうか。
事の発端が「トマトをめぐっての争い」というのがなんとも言えないというか締まりがないが、そんな状況に流されることなく真剣にやっているこの2人の姿勢が素晴らしい。
例えギンガマンと鈴子先生がトマトをめぐっておかしなことをやっていたとしても、この2人はあくまでもギンガの光争奪に向けて本気というのがかえって面白さを生み出している。
第十七章でのブドーはレッド以外の4人を圧倒していたため、今回そのブドーと対等に渡り合える黒騎士の格がやはり1ランク上というのを感じさせるだろう。
勝負は途中で謎の痛みを訴え出した黒騎士が劣勢になったところをすかさずギンガレッドが機刃ショットを撃ってブドーの態勢を崩してなんとかイーブンに持ち込んだ感じだ。
この三つ巴の関係性はのちに第二十四章の伏線にもなっているようでもあり、黒騎士とブドーの間に割って入れるのがギンガレッドのみという力関係も示されている。
その辺りはやはり小林靖子が設定の伝達をしっかり他の脚本家・演出家に対しても行っているようだが、少なくとも名ありのキャラクターのパワーバランスは絶妙だ。
ブドーの改めて素晴らしいところは決して部下のみに頑張らせるだけではなく、必要とあらば自らも積極的に作戦に参加するという判断力の良さにあるだろう。
一方で、今回から謎の痛みを訴え出して撤退した黒騎士だが、これもまた第二十五章で解き明かされる伏線となっており、決して唐突に挟まれたものではない。
この謎の痛みに関しては次回以降も出てくるパターンなのだが、思えば荒川脚本が今同時配信中の『爆竜戦隊アバレンジャー』で悪用しているパターンである。
どういうことかというと、アバレッドのライバル格として登場するアバレキラーがあまりにも強すぎるためか、撤退させる理由として謎の腹痛という展開を多用していた。
1度か2度ならともかく大した理由もなくこのパターンを使い回しすぎるとかえって面白くない展開となるため、何事も程々が大事ということだろう。
誰も通らない田舎の道路でやっているというのもこれまたシュールというか、どうせ一騎討ちをやるならこんな色気のない場所でやるなとは言いたくなる。
とはいえ、今回の場合狙いがあくまでトマトなのでこんな展開になってしまったのもやむなしといったところだが、もう少しロケーションにはこだわってほしかった。
辻野監督はこういうロケーションにおいては結構こだわりを見せる人だと思っていたので、こういうところで手抜きしてしまってる感が見えてしまうのは残念だ。
ハヤテとゴウキの凸凹コンビの面白さ
さて、今回改めてギンガグリーン/ハヤテとギンガブルー/ゴウキの凸凹コンビの面白さが描かれいたのだが、思えばこの回までハヤテとゴウキが直接絡んだシーンはない。
ハヤテはどちらかといえばリョウマかヒカル絡みが多いし、ゴウキもやはりリョウマ絡みか勇太少年・鈴子先生絡みがほとんどであり、実はゴウキの交友関係はあまり広くないのだ。
後半に入るとゴウキのメイン回は第二十八章・第三十五章・第四十四章だがいずれも鈴子先生絡みであり、だからゴウキ=鈴子先生専用という形で宛てがわれる。
今回も鈴子先生が出ているためのそのテイストが強いわけだが、そういう意味でも実はゴウキがハヤテと大々的に関わることはとても珍しいと言えるだろう。
演じる役者としても2枚目のイケメンと3枚目の大男の絡みだが、いわゆる3枚目を面白おかしくいじる2枚目といった感じではなく、むしろ2枚目を優しく心配し見守る3枚目ということになっている。
ハヤテに関しては正直シェリンダとミハルで人間関係がほぼ出来上がっているためにあまり他のキャラクターと一対一で関わることが少ないのだが、だからこそヒカル・リョウマ・ゴウキと絡むのは美味しいだろう。
第三十六章では青山晴彦さんとの絡みもあってとても面白い仕上がりになっているのだが、そんなハヤテでさえほぼ唯一絡みという絡みがないのが最年長のヒュウガと最年少のサヤだ。
この凸凹コンビの絡みは後の『未来戦隊タイムレンジャー』でも小林靖子が継承しており、タイムブルー/アヤセとタイムイエロー/ドモンの絡みもそういうものだろう。
今回はハヤテが戦いの中でトマト嫌いを克服する話なのだが、その背景としてゴウキが決して説教くさくない形でトマトを食べられるように工夫していることが明らかとなった。
もはやオトメン通り越してオカンの領域に突入しており、なぜ「お袋の味」みたいなものを女のサヤではなく男のゴウキがやっているのか?という話だが、この辺りも悩みの種だったのだろうか。
個人的には最終的にラストシーンでのゴウキのセリフが印象的だ。
「食べ物はみんな大地の恵みだ。好き嫌いをなくせば、それだけ幸せも増えるし、頑張る力もわいてくる!」
もはや言っていることがNHK教育テレビの体操のお兄さんみたいだが、本作は物語自体はシリアスであるにもかかわらず「子供向け」であることも忘れていないのは素晴らしい。
どんなに命懸けの殺し合いといえど、対象年齢はあくまで子供であり、教育という側面で見るのであればこういう説教臭くない形での爽やかな台詞もまあありだろうか。
とはいえ、ここからは少し残念な話になるが、次回のことと合わせてどうにもサヤが割を食ってしまっているという感じは否めない。
なぜならばヒュウガへの淡い憧れという設定では既にギンガレッド/リョウマがいて、気遣い・気配りなどの「女子力」担当ではゴウキがいて、やんちゃっ子からの成長枠でもヒカルがいる。
更にどシリアスな重い背景を背負った戦士として黒騎士ヒュウガもいて、かといって秘書というか2番手担当ではハヤテがいるわけで、彼女だけどうにもポジションを確立できていない。
最近「男女平等というまやかし」というタイトルで「女らしさ」と「戦う女」のあり方について触れているが、サヤに関しては次回でそれこそ出番があるのでじっくり語るとしよう。
いずれにしても、鈴子先生の再登場、トマトを軸にして起きるハヤテとゴウキのシュールギャグなどこれまでのネタを集約しつつ、最終的には子供向けの番組として上手に着地させている。
また、パワーバランスとしても今回はきっちりギンガ獣撃弾とガルコンボーガンで勝ちを収めており、次回以降の展開に向けていい箸休めとなったであろう。
総合評価はB(良作)100点満点中75点、お話そのものはそんなに面白いわけではないものの、演者と演出家の力でなんとか見られるレベルにしっかり仕上げている。
こういう回も悪くないだろう。



コメント