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憲法で「緊急事態条項」を定めている国は、国民の「抵抗権」も認めている?!

改憲と緊急事態条項

  先日の記事でも触れたように、自民党が主張している憲法改正の議論の重要な要素の一つが、いわゆる緊急事態条項です。
 この種の議論では、戦争や災害などの国家の非常事態の時に政府に強い権限を与えることが問題となります。現在の日本国憲法は、この緊急事態を想定した条項はありません。
 (ちなみに現行憲法には参議院の緊急集会の制度がありますが、これは衆議院が解散されて開会できない間に国会の決議が必要となった場合、参議院だけで決議を行うもので、必ずしも戦争や災害を想定したわけではありません。)

ドイツとフランスの憲法にある緊急事態条項

 いわゆるG7諸国(日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)の中で憲法に緊急事態(非常事態)の条項を定めているのは、ドイツとフランスです。(米国の場合は憲法には緊急事態の定めはなく、個別の法律等で対応しています。)

  この両国の憲法の規定を見ると、緊急事態にあたる場合、確かに行政府の権限強化などの措置が行えるようになっていますが、その歯止めも、行政府以外の機関(議会や裁判所)が行うことができることとされているのがわかります。

ドイツの場合 - 防衛出動事態

 ドイツの場合は、憲法で「防衛出動事態」の規定を置き(第115a条~第115l条)、武力攻撃を受けるなどの事態に至った場合に、連邦政府の権限を強化し、連邦議会議員の任期を延長し、また連邦議会が機能できない時には、より少人数の議員による合同委員会が立法機能を代行できるなどの定めをしています。

 権限の濫用・悪用に対する歯止めもいろいろと設けられており、まず防衛出動事態は、内閣が単独で確定させることはできず、連邦議会または合同委員会が議決しなければ開始できません。さらに終了についても、内閣の意思に関係なく、連邦議会が防衛出動事態の終了を宣言できるようになっています。つまり開始(確定)も、終了も、議会が判断することができるようにされているのです。

フランスの場合 - 非常事態権力

 一方フランスの場合は、国の独立や領土保全などについて重大かつ切迫した脅威にさらされ、憲法上の公権力の正常な運営が妨げられた場合に、大統領が「非常事態権力」を行使できることとされています(第16条)。

 この非常事態権力が30日以上継続する場合は、国民議会議長など一定の者が、憲法院(憲法裁判所)に訴えて、この非常事態権力の要件が継続しているのかどうか審査させることができるようになっています。
 さらに60日継続した場合は、訴えを待つことなく、憲法院が自ら当然に審査を行い、非常事態権力が継続できるかどうか判断することとされています。

議会や裁判所が緊急事態条項を強制終了させられる!

 以上を見るとわかるとおり、ドイツとフランスでは、防衛出動事態や非常事態権力の必要がなくなった場合、行政府(ドイツは首相、フランスは大統領)が終了させるというだけでなく、議会や裁判所が強制的に終了させることができるようになっています。

 これによって行政府が緊急事態を引き延ばして強い権限を乱用・悪用する危険に対する歯止めになっているわけです。

ドイツとフランスの憲法には「抵抗権」があった!

 ドイツとフランスは以上のとおり、緊急事態条項とそれに対する歯止めが憲法に存在するのですが、この両国の憲法はもう一つ、重要な特徴があります。それは国民の「抵抗権」を認めているということです。

 まずドイツ憲法は、第20条で国民主権や民主制などについて定めたうえで、その4項で「すべてドイツ人は、この秩序を排除する何人に対しても、その他の救済手段を用いることが不可能な場合には、抵抗する権利を有する。」として、公権力が憲法および法的秩序を破壊する場合には国民が抵抗できることを定めています。

 (★補足:この第20条4項の「抵抗権」の条項は、1968年、先ほど紹介した防衛出動事態(緊急事態条項)をドイツ憲法が導入した時に、その強大な権限が悪用された場合に国民が対抗手段を取れるようにするため新設されたものです。)

 次にフランス憲法の場合は、その前文で、フランス革命時の人権宣言(1789年)を憲法の一部として組み込んでいますが、その人権宣言の第2条で「圧政への抵抗」を保全すべき自然権として規定しています。

 非常に興味深いことですが、このように、G7諸国のうち、憲法で緊急事態条項にあたる規定で行政府等に強大な権限を与えることを想定しているドイツとフランスは、いずれも、圧政に対する国民の「抵抗権」も、憲法の中でうたっているのです。

   もちろん憲法の中に「抵抗権」を定めたとしても、国民が好き勝手に暴れて良いというわけにはいかないので、現実問題として、どのような場合にどのような手順で「抵抗権」が認められるのかという話になると、非常に困難な問題がありますが、少なくとも精神的な意義は大きいと言えるでしょう。


 

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