【団地ちょっとレポート】MUJI×URの設計者と歩く「平城右京団地」

住まいのかたち | 2026.1.30

写真左から、MUJI HOUSE 松本、右はデザイナーで大阪芸術大学客員教授の辻 邦浩さん。

12月、寒さが増し時折見せる日差しの中、団地の中でも珍しい特長的なT型住棟が並ぶ「平城右京団地」にて、9回目のお散歩レポートは緩やかにスタートしました。

MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトに関わって10年余り、全国70団地ほどでリノベーションに関わってきたMUJI HOUSEの松本と、MUJI×UR団地まるごとリノベーションの泉北茶山台二丁団地のプロジェクトをきっかけに知り合った、大阪芸術大学客員教授の辻 邦浩さん。2人が奈良と京都の県境に位置する団地をお散歩した様子をレポートします。

今回ご紹介する団地情報<平城右京団地>

奈良市にある平城右京団地は、奈良と京都の県境に位置する団地で、全住棟が5階建以下の中層階段室型の住棟でその形状が上から見ると「T型」になっている団地住棟の中でも珍しい建物となっている。管理戸数は366戸とコンパクトな小規模団地。近鉄京都線「高の原駅」から徒歩5~9分

松本
今回一緒に団地レポートしていただけるのは、デザイナーであり、大阪芸術大学、また大阪公立大学の客員教授の辻先生です。

辻先生
毎度お世話になります。今回は改めましてよろしくお願いします。

松本
よろしくお願いします。泉北茶山台二丁団地での取り組みからグランフロント大阪での取り組みにいたるまで、最近は大学の授業までお邪魔させていただいて。このお散歩取材でお会いするのもなんだか新鮮ですね笑。

辻先生
そうですね。先日は梅田でのお疲れ様会もありがとうございました笑。

松本
そんな辻先生なのですが、実は僕が学生時代に読んでいたデザイン書籍にも載っていた著名なデザイナーの方で、まさか社会人になってからこのような取り組みでご一緒にさせていただけるとは思ってもいなかったので、本当に光栄です。

辻先生
これも何かの縁でしょうかね。今日は楽しみに団地の事も調べてきました笑。

松本
さすが先生ですね・・!これまでとは違うお散歩になりそうですね笑。

UR
本日はよろしくお願いします。最寄り駅である「高の原駅」から赤道(あかみち)を真っ直ぐ歩いて来ると、ここ平城右京団地にたどり着きます。

松本
赤道(あかみち)ですね。以前、兵庫の落合団地の取材の際もありました。駅から続く赤道は、全く車道と交差する事なく、歩行者専用の道路を歩きながら団地にたどり着く、まさにニュータウンらしい「歩車分離」された道ですが、ここ奈良の団地にもあるんですね。

辻先生
ちなみに、高の原駅周辺は、関西文化学術研究都市を形成する大規模ニュータウンとして開発された都市で、産学官連携による教育、研究機関が集積されていますね。地理的にも京都、奈良、大阪とアクセスもよく、3都市の中間地点のような場所になっています。

松本
そういう場所だったんですね。
ここが団地の入り口ですね。案内サインも綺麗に整備されていますね。

UR
外構やサインなどの団地環境は2022年に改修されました。明朝体を使用したロゴサインが特長です。ここから集会所の方に上がって行きましょう。

松本
確かに奈良や京都の品の良さが感じられますね。

松本
集会所の前に住棟が見えてきましたね。地図を見ながら思っていたんですが、上から見るとT字型ですよね。

辻先生
私も調べている時に気づいたのですが、いわゆるポイントハウスにも似たような造りになっていて1フロアに3戸ずつあり、どの部屋も3面彩光で風通しが良い住棟になっていますよね。

松本
1フロアに3戸ずつということは、スターハウスみたいな住棟になっているんですね。

松本
さて、集会所に着きました。三角屋根が特長的な集会所ですね。早速入ってみましょう。

辻先生
中はコンパクトですが、洋室と和室があって、透明な折戸を開けると、緩やかにつながりますね。
外から見えていた三角屋根はこの部分ですかね。

松本
まさにですよね。この集会所も改修されて綺麗になっているんですね。昔の和室の古い木部はそのまま見せるような演出もされていますね。

UR
最近では子育て世帯向けのイベントを集会所に中で行ったりもしていて、収納を改修して授乳室を設置したりもしています。令和8年度には「こどもつながるサポーター」が高の原エリアに配置される予定で、子育てしやすい団地を目指して取組みを進めていて、授乳室の設置もその一環です。

松本
素晴らしいですね。子育て世帯の方には嬉しいですよね。
それでは、団地内の方にも行ってみましょうか。

辻先生
各住棟にある自転車置き場のサインもかわいいデザインになっていますよ。

松本
ほんとですね。自転車置き場自体もかっこいいですが、丸いプレートにピクトグラムの立体文字になっていて他の団地ではあまり見たことがないデザインですね。

松本
ここから住棟を見ると、建築のこだわりポイントがよく分かりますね。窓の手摺りと階段の手摺りがまず他の団地とは全然デザインが違いますね。それに窓の庇(ひさし)、階段室の庇、バルコニーの庇と場所によって庇を3ヶ所ともにデザインを変えている。

辻先生
庇の軒裏の差し色も意味がありそうですね。隣の住棟と色を変えているので、自分の家の住棟を間違えなくて済みそうですね。

松本
確かにそうですね。妻側(建物の短い方の側面のこと)の壁は、細かく色分けもされていますよ。

辻先生
しかし、すべての住棟に色がついている訳ではなさそうですね。これも何か法則がありそうですが・・・。

松本
実はこれまでの団地を散歩してて気づいたのですが、広場に面した住棟の妻側の壁には、ほとんどの場合で絵が描かれていました。もしかしたらその法則かもしれませんよ・・。

妻側(建物の短い方の側面のこと)の様子

UR
この先に、団地のシンボルである給水塔があるので行ってみましょう。

辻先生
確か、ここの給水塔には他にはない、珍しいものがついているんですよね。

松本
そうなんですか、、なんだろう?楽しみですね笑。

辻先生
見えてきましたよ。これはまさに地域のシンボルですね。

松本
これはもしかして、時計ですね・・・!ロンドンの時計台みたいな。
白い巨塔に青い空が映えますね。

UR
また、この近くの団地の敷地内に、ちょうど奈良県と京都府の県境もあるんですよ。

松本
それは行ってみたいですね。

UR
ちょうどこの辺ですね。

松本
この足元ですか?僕が立っているのが京都で、先生側が奈良ということですね?
私も大阪出身なので、京都と奈良って完全に山で囲われた盆地だと思っていたのですが、こんな街中に小さな尾根があって県境になっている場所が団地の中にあるんですね・・・!

UR
今回、住戸の方も見学ができますので行ってみますか?

松本
ぜひぜひ!お願いします。

辻先生
楽しみですね。このエントランスの色使いも先ほどの軒裏の差し色とリンクしている感じですね。
エントランス自体も他の階段室型の団地の住棟とは違って空間が豊かです。

松本
階段も中央が吹き抜けの螺旋状で、この雰囲気はまさにスターハウスに似ていますね。スターハウスは三角形の吹き抜けでしたが、この四角い吹き抜けもかっこいいですよ。

辻先生
階段室から先ほどの時計台型給水塔も見えますよ。
給水塔についている時計は駅からの動線の東側と住棟から見える南側のみに取り付けられているようですね。

松本
給水塔ビューの住棟、たまらないですね・・!笑。

松本
玄関ドアもステキですね。袖のFIXガラスにポストがセットで、室名サインもわざわざコンクリート躯体を少しだけ凹ましているディテールがたまらないですね。

辻先生
住棟外観は、欧米のアパルトマンのような雰囲気でしたが、階段室共用部も同じような装いで、日本ではないような雰囲気ですね。

松本
結構好きかもしれないです。この感じ笑。

UR
では、中に入ってみましょう。

松本
お邪魔しまーす。

松本
内装はいつものURさんの住戸と仕様は似ていますが、キッチンはビルトインコンロでより高機能になっていますね。。。

UR
この団地では、広さは80~90㎡前後、間取りは3LDK~4LDKの住戸が中心になっています。
広い間取りの部屋が中心なので、子育て世帯にとって暮らしやすいのが特長です。

松本
広いですね・・・!

辻先生
和室にあるバルコニー側にない小さな窓は、1フロア3戸のT型住棟ならではですね。
さらにちゃんと独立した洗面脱衣室に洗濯機置き場があって、空間の余裕を感じます。

松本
外から見えていた洗面の縦型上げ下げ窓は、中から見るとこんな感じなんですね。
明るくて良いですね。

松本
80年代の団地らしく、天井や梁も少しだけ通常の階段室型の住棟よりも高い気がしますね。

辻先生
そうですね、50年代のスターハウスの良さを残して進化した理想形を感じますね。
バルコニーからの眺めも良さそうです。

辻先生
下から眺めていた印象と、上から見た印象もまた違って見えます。本当に日本じゃないみたいですね。海外にいるような。

松本
実は僕もさっきからそんな印象で、、 海外っぽいんですよね。団地全体が。一度そう見えるとここから見える遊具や擁壁、曲線の道までそんな風に感じて見えるのが不思議ですね。

松本
先ほどの階段室にあった手摺りのデザインなんかは、遊び心があってセンスを感じます。

辻先生
そういう質の高いディテール一つ一つが住棟全体を、さらには団地全体をデザインされた心地良い空気感が支配しているんだと思います。
ドイツの良き時代であるバウハウスのデザイン思想に通じるものを感じますね。

UR
それではそろそろ降りて先ほどの集会所まで戻りましょうか。

松本
はい、お部屋も見せていただきありがとうございました。

松本
そういえば、この案内サインの足元の模様ですが、高の原のTでもあり、住棟の形のTでもあり、かわいいですよね。さらに案内サイン自体も上から見るとT型ですね。

辻先生
住棟の基礎の立ち上がり部分にも同じ模様があり、徹底してますね。

松本
集会所に戻りながら見ていても、本当にいい団地ですよね。

辻先生
この季節ならではの紅葉がまた綺麗ですね。団地の敷地内で四季を感じられるのは、敷地が綺麗に整備されていてこそですからね。

松本
ほんとそうですよね。特にこの高の原の周辺の団地はどこも綺麗な団地が多くて、MUJI×URを展開している平城第2団地も綺麗な団地なんですよね。

松本
最後にこの赤道を下りながら集会所に向かいましょう。

辻先生
赤道を挟んですぐ民家があって、団地周辺には高い塀もないので、団地自体が街に溶け込んで敷居を感じないですね。赤道沿いの住棟も4階建になっていて圧迫感もない。

松本
この赤道を通って通勤通学する日常がイメージできますね。
さて、集会所に戻ってきました。ここには、新旧のサインが並んで見えますね。石に掘られたサインはきっと建設当初からありそうですね。ずんぐりしていて笑。そのすぐ横には洗練された案内サインがあって、この新旧のコントラストがいいですね。

辻先生
他の団地にはない質の高さを感じる、素敵な団地でしたね。

松本
はい、私もいろんな団地を訪れましたが、この平城右京団地が正直一番住んでみたい団地になりました笑。駅からの距離、駅前の大型ショッピングモール、団地の雰囲気、かっこいい住棟、
80㎡以上の広い間取り。そして手頃な家賃感。
今まで知らなかった団地に出会えて、久しぶりにテンションが上がりました。
こういう団地との出会いがあるのでやめられないですよね笑。

辻先生
私も同感です。こちらの近隣には知り合いの研究者も沢山住んでおられるので私も住んでみたくなりました 笑。

今日はお誘いいただき本当にありがとうございました。

松本
こちらこそお忙しいところ団地のお散歩にお付き合いいただきありがとうございました。

<ゲストプロフィール>
辻 邦浩さん
音響空間デザイナー / Kunihiro Tsuji Design代表
大阪公立大学都市科学・防災研究センター客員教授/大阪芸術大学デザイン学科客員教授

東京大学 空間情報科学研究センター研究員、国立民族学博物館特別客員教授などを経て
現職。
専門は音響空間デザイン、都市デザイン、プロダクトデザイン、サービスデザイン、コミュニケーションデザイン、文化人類学、デザイン人類学などの研究と実践を行う。
近年は都市デザインにおける歴史文脈から未来文脈を創造し、文化開発を通じてwell-beingな未来社会の社会実装メカニズム研究から、市民一体型の共創社会を実現するサロンやリビングラボの新しい産学官連携の実践を行なっている。

2000年Water Speaker(水のスピーカー)プロトタイプをデザイン。
2001年ヴェネチアにてWater Speakerを世界に発表。
2002年フランス「Biennale Internationale Design Saint-Etienne」にWater Speakerが日本の代表としてセレクション。
2007年ミラノサローネにてインスタレーション。
2008年水がテーマのスペインサラゴサ万博日本政府館をWater Speakerを使って音響デザインを手掛ける。
2010年上海万博で「未来の水都大阪の象徴」としてWater Speakerが展示される。

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