健康寿命を延ばすには「筋トレ」を 老年医学の専門家が教える健康法
人生を自分らしく楽しむために欠かせないのが「健康」です。2024年の日本人の「平均寿命」は男性が81.09歳、女性が87.13歳でした。しかし、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる「健康寿命」は男性が72.57年、女性が75.45年(いずれも2022年)と、「平均寿命」と「健康寿命」には男性8.52年、女性11.68年の差があります。 「健康寿命」を長くするためには何が大切なのか、老年医学が専門の国立長寿医療研究センター・荒井秀典理事長にインタビューして聞きました。 (Reライフプロジェクト 樋口彩子)
年代によって気を付けたい 「健康寿命」の延ばし方
―自立した生活をできるだけ長く続けたいと考える人は多いと思いますが、「健康寿命」を延ばすためにもっとも大切なことはなんでしょうか? 健康寿命には「体」と「心」の問題がありますが、まずは日ごろから何不自由なく生活ができる「体」をできるだけ長く保つことが基本になります。そのために必要なのが「病気の予防」です。若い頃から定期的な健診を受け、病気の初期のサインを見逃さないことが重要です。脳卒中などの循環器疾患やがんは健康寿命を阻害する大きな要因ですから、早期に発見し、治療していくことが大切です。 さらに高齢期(65歳以上)においては、そういった病気だけでなく、体がちゃんと動くかどうかが非常に重要です。加齢により筋肉量が減少することで身体機能が低下する「サルコペニア」や、認知機能の低下に注意しながら生活することが大切です。 「心」の面では、「生きがいを持つこと」が大切になります。これは簡単なことではなく、個人によって大きく異なると思います。身体的な面と精神的な面、この両方で大きな問題がなく人生を送ることができれば、健康寿命を延ばすことにつながります。 ―年代によって気を付けるべきことも異なりますね。 高齢期(65歳以上)になると筋肉の機能が落ちます。30代くらいから落ち始め、50代くらいから加速すると言われているので、加速する前の40代から、筋肉の健康を考えてアプローチを始めることが必要だと考えています。 これまでは有酸素運動をしていれば健康で長生きできると言われていました。もちろん有酸素運動は大事ですが、中年期(45-64歳)になってより重要になってくるのは「筋トレ」です。ジムに通ってトレーニングをするということだけではなく、日常生活の中で意識をすることが大切です。例えば、エスカレーターではなく階段を登る、信号待ちで片足立ちをしてみる、テレビを見ながら簡単なスクワットをするなど、いつもの立って歩く動作に加えて、もう少し筋肉、特に下半身に負荷をかけることを意識することで、動きやすく病気になりにくい体を維持できます。 40代から筋肉を意識して生活することで、これまで60代・70代でのサルコペニアを遠ざけ、筋肉の健康を長く保つことができます。筋肉の健康は脳の健康にもつながり、認知症の予防にもつながります。 ―すでに高齢期の場合は、どのように取り組めばよいでしょうか? 高齢期や70代になってから体の衰えを自覚したという方でも、遅すぎるということは決してありません。生活を変えるのは、いつから始めても大丈夫です。 特に高齢期になると、食事の問題も大きくなります。太っているからといって体重を減らすための食事をするのではなく、食事のバランスや質を考えましょう。糖尿病や脂質異常症、高血圧についてはきちんと管理しなければいけませんが、場合によっては体重を維持することの方が優先される場合もあるかもしれません。 筋トレなどの運動とともに、バランスのよい食生活を送ることで「サルコペニア」の予防をしましょう。サルコペニアになってしまった場合は、たんぱく質の摂取量を上げて筋トレにも取り組むことで、サルコペニアの改善を目指すとよいでしょう。これが徹底されれば、いつまでも元気に活躍できる高齢者が増えてくると思います。