減少する宮大工、育成急務に 脱「徒弟制度」へ塾登場
神社仏閣の建築や改修を担う宮大工の数が、減少の一途をたどっている。現在では寺社のみを扱う専業の宮大工は全国で千人以下ともいわれ、若手の育成が急務だ。専門家は「従来の徒弟制度ではなく、数年で一人前になれるような教育の仕組みが必要だ」と強調、現場で実践を重ねながらカリキュラムに沿って若手宮大工を育てる塾も登場した。
4月、三重県志摩市の薬師寺で、4人の若者が本堂の修繕に取り組んでいた。中学や高校を卒業後に親元を離れ、一般社団法人「宮大工養成塾」(大阪府柏原市)に入り各地で腕を磨いている。
韓国出身の佃周亮さん(20)は進路に悩んでいた高校時代、大阪府出身の母親に「宮大工という仕事もある」と勧められ、卒業後に来日。2023年2月に入塾し、すぐに志摩市で寮と現場を行き来する生活が始まった。
最初の1カ月は刃物を研ぐ修業が続いた。その後は現場で学びながら、木材の加工や立て付けの作業も任されるように。「簡単そうに見える作業も、やってみたら難しい。見る人が見れば分かる良い仕事ができたらかっこいい」
やりがいを感じるのは、はりや骨組みがむき出しだった本堂が形になっていくのを実感した時だ。「今思えば、昔から古い物を直すのが好きだった。思ったよりも自分に向いていたのかな」。どんな作業でも任せてもらえる技術を持った宮大工になることが目標だ。
養成塾は16年、金田社寺建築(柏原市)の金田優社長(38)が設立した。近年、地方の寺社で資金難から建物の修繕が行えないケースが増加。養成塾では、塾生が授業料を納め、その資金で金田さんの指導を受けながら寺社の修繕などをすることで、寺社再生に貢献しながら若手を育成する。塾生は3年間、塾が用意したカリキュラムをこなして学んでいる。
宮大工不足には、33年に式年遷宮を控える伊勢神宮(三重県伊勢市)も頭を悩ませる。神宮が抱える宮大工に加え、式年遷宮前には延べ約100人を全国から募集する。神宮司庁広報室の音羽悟次長は「熟練の技術が必要な仕事だ。前回も人材確保に苦労したが、より厳しい状況だろう」と話す。
宮大工になるには通常、昔ながらの内弟子制度の下で、数年間過酷な修業を積む必要がある。芝浦工業大の蟹沢宏剛教授(建築生産システム)は「薄給で修業をしながら10年で一人前というやり方は今の時代には難しい。早く一人前になり働けるような教育が必要だ」と指摘する。
宮大工は国の文化財などの維持に必要な存在だとし「行政が育成や雇用を行う公的な仕組みがあっても良いのではないか」と話した。
〔共同〕