『成瀬~』が大ヒット!新潮社の大幅組織改編と出版戦略
『くじらバンチ』というアプリを立ちあげ
業績を伸ばしているコミック事業については、コミック出版部の折田安彦部長に聞いた。 新潮社のコミック部門は、2024年に『月刊コミックバンチ』という紙の雑誌を休刊させると同時に創刊したデジタルコミックサイト『コミックバンチKai』と、従来からあった『くらげバンチ』の2つのサイトを運営してきた。前者は従来『月刊コミックバンチ』で連載してきたストーリー性の高い作品を中心にしたサイトだ。 そして2025年、それに加えて、新たに11月11日、『くじらバンチ』というアプリを立ち上げた。 「これまでは『くらげバンチ』と『コミックバンチKai』、他社と協業して電子で作って電子で売るというデジタルコミック編集部と、3つの編集部があったんですね。 これを再編して、デジタルコミック編集部と『くらげバンチ』を統合し、1つの編集部にしました。その結果、『コミックバンチKai』と『くらげバンチ』の2編集部体制になったのです。デジタルコミックを統合した『くらげバンチ』はXでバズったり、デジタル分野で売れるマンガを、『コミックバンチKai』は長編の歴史ものなどを含む作品性の高いマンガを作っていくと、そういう2つの編集部にしたのです。そして、それを全部包んだものとして『くじらバンチ』というアプリを立ち上げたのですね。コミックは、 雑誌で読む、ウェブで読むという時代からアプリで読む時代に変わってきており、電車の中でもアプリで読んでいる人が増えています。『くじらバンチ』は、2つのウェブサイトを飲み込む大きなくじらというイメージです。新潮社が出しているマンガが全部この中に、連載が終わった作品も含めて入っています。 読者からの要望もあったので、今回アプリを立ち上げたのですが、予想以上に好調で驚いています。あっという間に3万ダウンロードされて、そのうちの3~4割が毎日見に来ているという感じです。 デジタルで連載しているものは順次単行本にしていきますが、最近は必ずしも紙にしない作品もあります。全体の売上の7~8割がデジタルになっているので、全部が全部紙にするというわけではなくなっています」 このところのヒット作を幾つか聞いた。 「『くらげバンチ』で連載している『魔王城の料理番』が、単行本5巻で80万部まで来ています。それから『魔法医レクスの変態カルテ』が3巻で60万部、『俺のワクチンだけがゾンビ化した世界を救える』が3巻で15万部です。 映像化も増えていて、『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』(略称『沖ツラ』)がアニメ化されて60万部までいっています。 面白いのが、2025年の甲子園で沖縄尚学高校が優勝し、それを作者が『おめでとう』とイラスト付きで応援をしたらニュースになり、アニメ終了後もしばらく売り上げが続くということがありました。 あと『女性に風俗って必要ですか?』がドラマ化されて、電子書籍が35万部売れました。TVerでのドラマ再生も100万回いったと聞いています。 他にも『パパと親父のウチご飯』『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』が12月現在ドラマ化されており、映像化作品は多いですね。『クマ撃ちの女』が、クマの出没が増えると同時に注意喚起のブログを書いたらそれがニュースになり、多くの人が読み始めたという話題もありました」(折田部長) 最近は前述の新潮文庫nexとコラボしたプロジェクトも進められているという。 「nexコミカライズプロジェクトと呼んでいますが、マンガ編集者と小説編集者が一緒にコンテンツを作っていく取り組みです。以前は、新潮社の原作をただマンガ化するだけだったんですが、今は両者の視点で、じゃあこれはどうマンガにしよう、これはどう小説にしよう、マンガにしたい小説って何だろうといったことを協議していくプロジェクトを本格的に始動させました。2026年3月には特設サイトを作って、作品をリリースしていく予定です。 そのプロジェクトで動き出した第1弾は新潮文庫nexの『コンビニ兄弟』ですが、これはいわゆるコミカライズですね。第2弾以降は、両編集部がゼロから一緒に作っていく予定です」(同) 2024年末には「C-KANATA」という新しいレーベルも立ち上げた。 「割とアダルティな作品だったり、 BL なんですけど、やりたいという者がいたので立ち上げました。『蛍火艶夜』という作品が累計 20万部に達しています。ファン向けに豪華箱入り大人向けセットも作って 1万3000円もするのですけど、これが数千部完売しました。こういう新しいレーベルはこれまでなかったですが、やりたいという者がいたら、新しいこともどんどんやっていこうという、そういう雰囲気で、いろいろな動きが出ています」(同) 大幅な組織改編とそれを受けての様々な取り組みと、今後の行方はどうなるのだろうか。