『成瀬~』が大ヒット!新潮社の大幅組織改編と出版戦略
新潮新書にも幾つかのヒットが
新潮新書も2025年はヒットが多かった。出版企画部の葛岡晃部長に話を聞いた。 「まず4月に出た俵万智さんの『生きる言葉』。かつての『サラダ記念日』のカバーと同じポーズで写真を撮らせていただいて、帯にしています。初版1万部からのスタートでしたが、発売直後から俵さんにいろいろなインタビューを受けていただいたり、ラジオにもご出演いただいたりして大きな話題となり、版を重ねました。12月現在、13万部に至っています。 次は8月に出たジェーン・スーさんの『介護未満の父に起きたこと』です。『考える人』というウェブマガジンで連載していたもので、父親の介護以前、大変だった5年間の記録です。家族がこういう介護未満の状態になり、心配されている方にとっては実用的な内容でもあるので、発売直後から跳ねました。12月現在、12万部です。 それから、9月に出た三宅香帆さんの『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』。もともとは新潮社の月刊誌『波』での書評連載だったのですが、新書に収録するにあたって、このタイトルにつながる長い文章を加筆くださり、それを導入部としています。書評集ではなく、情報のインプット指南書として世に出したことで、この新書もよく売れました。初版1万2000部でスタートして、12月現在、10万部に達しています。 三宅さんはユーチューブチャンネルを、ジェーン・スーさんはラジオのレギュラー番組をお持ちなので、やっぱりちゃんと固定の読者がついているのだと思います。こうしてみると、新書3冊とも、世の中のニーズにピッタリ合ってますね。 新潮新書は月に3点ずつ刊行していますが、新書の市場は今、厳しい競争が続いています。市場全体として縮小しており、ピーク時の3の1ぐらいではないでしょうか。そうした中で今回の3つは突出したわけです」 続いて新潮選書についても聞いた。 「新潮選書では、1月に五木寛之さんの『忘れ得ぬ人 忘れ得ぬ言葉』、3月に澤田瞳子さんの『京都の歩き方』、9月に阿刀田高さんの『90歳、男のひとり暮らし』と小説家の作品が続きました。特に大きく伸びたのは『90歳、男のひとり暮らし』で、初版5000部から12月には2万7000部まで積み上がりました。校了の少し前に奥様が亡くなられ、それについても最後に触れられています。 それから、5月に出た熊本史雄さんの『外務官僚たちの大東亜共栄圏』は、大佛次郎論壇賞、司馬遼太郎賞、樫山順三賞の3冠で話題となりました。 小林秀雄賞を受賞した川本三郎さんの『荷風の昭和』前・後編も注目を集めました。これも元は『波』の連載で、文芸のファンに広く読まれています」(葛岡部長) 2025年に行った施策として話題になったのは、新潮選書と中公選書で合同の書店フェアをやったことだ。 「書店で2社の選書を展開していただいたところ、普段は専門的だからと見向きもしない人でも手に取ってくれたようで、売り上げが伸びました」(同) そのほか、話題になって売れたのは、8月に出た水野太貴さんの単行本『会話の0・2秒を言語学する』だ。 「著者の水野さんは出版社の編集者として勤務するかたわら、ユーチューブやポッドキャストで『ゆる言語学ラジオ』という番組をずっとやられています。水野さんもしっかり固定の読者がいるんだと思います。 この本は、『バリューブックス』というネット書店で予約を取ったら、すごい数のオーダーがあり、初版部数を上乗せしました」(同) 他に反響が大きかったのは『BTSレジェンド10曲の歌詞で学ぶ韓国語』だ。 「これ実は、BTSの曲の歌詞から韓国語を勉強しようという教材なんです。定価が3000円を超える本なので受注販売に近い形で制作し、いわゆる一般流通版と、弊社のECサイトで売るものと、2パターンのカバーで準備しました。 同じ韓国関連では、YUMEKIさんの『ONE DANCE世界で夢を叶える生き方』も出版しました。YUMEKIさんは日本人ですが、韓国を拠点にアイドルグループのダンス振付をしていて、非常に活躍されています。この本は、編集の段階から韓国の出版社に声をかけて、日本版と韓国版を同時に出すという施策に挑戦しました。今後もこういう試みは進めていきたいと思います」(同)