『成瀬~』が大ヒット!新潮社の大幅組織改編と出版戦略
2025年7月に大きな組織改編
新潮社は2025年7月に大きな組織改編を行った。今後の同社の方向性を見るうえで重要な改編なので、まずはそれについて書いておこう。三重博一取締役に話を聞いた。 「7月から会社全体の枠組みを変えました。各事業や部署を〈作る〉〈売る〉〈広げる〉〈企業に活かす〉〈支える〉という五つのカテゴリーに分けて、それぞれの機能、役割を明確にしました。 その上で、事業系セクションは事業本部として、その他は部門として再編しました。各事業本部や部門を、原則として一人の執行役員が所管する形です。 例えば出版部と文庫出版部はともに文芸事業本部の傘下に入りました。両部の仕事は雑誌から文庫まで繋がっており、とても関係が深いのですが、伝統的に担当役員も別々で独立性が高かった。それが今回の再編によって文芸事業本部という一つのまとまりとなり、一人の執行役員が全体を統括することになりました。 ノンフィクション系の書籍や新潮新書、新潮選書の編集にあたっているのは出版企画部です。この出版企画部と、ジャンル的に関係の深い『週刊新潮』『デイリー新潮』『ウェブフォーサイト』さらに新たなネットビジネスを準備中の新事業準備室がインテリジェンス事業本部を構成します。『週刊新潮』から新事業準備室まではニュースメディア部という形で、これからのニュース系メディアのビジネスモデルについて総合的に考えていきます。 さらに、弊社の新しい柱として成長してきたコミック事業本部。実はコミックだけは先に事業本部の形にして、独自に施策が打てるような組織作りをしてきました。いわば事業本部制の先駆けですね。 ほかに事業本部が二つ。新設のIP事業本部と企業マーケティング支援事業本部です。IP事業本部は新潮社が作り出してきた文芸コンテンツや、上り調子のコミック作品のIP展開を担います。 企業マーケティング支援事業本部は旧広告部と『芸術新潮』『エンジン』『ニコラ』などの月刊誌系事業部が中心です。かつての広告部はビジネスプロデュース部という名称になり、ただ広告を雑誌に入れていただくということではなく、企業の課題解決を支援するという形でのビジネスを目指します。それを有機的に行うために一つの事業本部にしています。 このほかに〈作る〉セクションとして、製作部と校閲部と装幀部を束ねる製作部門。〈売る〉セクションとして営業・プロモーション部門、これは営業部とプロモーション部ですね。そして全体を〈支える〉のがデジタル戦略部と管理部門です。 組織体制を明確にすることで、各部署の役割と目標を定めて、変わり続ける新時代に臨んでいこうということです」 その後8月に『週刊新潮』コラムの問題が起き、人権デューデリジェンス推進室が新設された。これは管理部門の一環として三重さんが統括している。 「人権デューデリジェンス推進室は10月1日に発足し、社内のチェック体制の点検や研修などの再発防止策を進めているところです。人権意識を高めることは会社全体で取り組んでいかなければなりません。推進室はそれを進めるための体制作りを担います。『週刊新潮』コラムの問題は、決して起きてはならないことです。猛省して、出版社としての在り方や編集者の役割をもう一度足元から見つめ直していかなければと思っています」 この問題をめぐっては、結局、コラムで名指しされた深沢潮さんが新潮社との契約を解消し、同社前の市民グループの抗議行動もいまだに続いている。その意味ではまだ終わっていないし、様々な問題は残されたままだ。本誌も今後も引き続き、機会があれば誌面でとりあげるつもりだが、とりあえず本稿では、いま新潮社がどういう組織体制でどこへ向かおうとしているかを探っていこう。7月の組織改編に伴って、現場の部長クラスも大幅な異動が行われた。