上流から下流へ流されるメガバンカー

ちなみにビズリーチへ登録するのは「転職」だけでなく「自分の市場価値を確認する」意味合いもある。「組織に最適化された中高年」が、外の世界でどれくらい通用するのか。期待と不安に胸を膨らませてスカウトを待つ人は多い。

Cさんも、職務経歴書に「銀行内でエリア長や本部次長など管理業務を経験」「得意分野は投資銀行業務や外国為替、融資業務」「30~50人規模の部下のマネジメント業務」など、銀行内のキャリアを書き連ねた。しかし、この55歳の「釣書」は無風に終わる。

人けのない時間帯のオフィス街に立ち尽くす男性の後ろ姿
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「予測はしてましたが、やはりと思いました。こんな未来が待っているなら、銀行になんて就職しなければよかった……」

ビズリーチで惨敗し、役職定年を迎えたCさんは、銀行から紹介された規定路線の一つ「保険代理店」にしぶしぶ再就職する。

保険代理店でのCさんは年収700万円で「課長クラス」。ポストも年収も希望より低く、仕事内容も銀行時代と違ってドロ臭い。

「部下の9割は保険営業の30〜50代の女性。やり手のベテランばかりで、負けん気が強く、女性同士が派閥をつくってお互いを牽制しあう世界です。女性同士のいじめやパワハラ、顧客からのクレーム対応。とにかく求められたのはリスク管理でした」

実務経験のために「もっと経営に近く」

女性の多い職場に管理職として迎えられるのは、銀行員に限らず「アガリのサラリーマンあるある」だ。Cさんはそこで腐ることなく、隔月で部下との個別面談をはじめた。トラブルを最小限に抑えるためだ。

「私の前任者の銀行時代の先輩は『こんなの自分の仕事じゃない』と、問題を放置していたようです。しかし私は、人間関係のトラブルは最悪の結果を招きがちと思っていたので」

Cさんが逃げずに問題と向き合ったため、新しい職場には平和が訪れたという。それでもCさんは次の転職を画策していた。

「このまま銀行の延長線上で働いても先細るばかり。70歳まで働き続けるには、もっと実務経験があるほうがいい。そのために経営に近いところで働こうと考えました」

Cさんはビズリーチの職務経歴書を書き換えた。しかし銀行の経歴に「保険会社のマネジメント経験」を加えても、依然としてスカウトはゼロのままだ。