「この10年で、構成作家が半数近く入れ替わり」…元スタッフが語る「ナイトスクープ問題」の深層 「番組への愛情ある局員も現場を去っていった」
感覚の麻痺
ハードでタイトな作業である。 「常に“ネタ不足”に追われるなかで、少し依頼内容がおもしろくない、つまり“弱いネタ”でも採用することがある。依頼者への事前取材を進めるなかで依頼の“芯”をより明確にし、デフォルメすることもあります。ただし、これは依頼者自身が納得し、依頼の事実背景が変わらないことが大前提です」 今回、ABCが公表したような依頼文の“改稿”も、 「あくまで放送上伝わりやすいように“整える”ことや、依頼者に新しく“書き直してもらう”ことはあります。ただ、今回は依頼の原文が《家族8人みんなで家事や育児を協力しあって頑張っているが、他の兄弟よりも僕が一番頑張っている。他の家族の子供と比べてどうなのか調査して欲しい》という趣旨だったとか。それが実際に放送された内容では、家事や育児を長男ひとりが背負っているように描かれていました。元の趣旨の『他の家族との比較』を調査するものではなくなってしまっています。書き換えられ、放送された依頼文も《長男やるの疲れました。ぼくの代わりに長男やってくれませんか? 》と、元のものからはかけ離れたものになっている印象を受けました。それでも依頼者が納得し、おもしろいと乗っかってくれることも多いですが、今回の家族は深刻な社会問題となっている『ヤングケアラー』と紙一重の家庭環境。制作陣もその点への認識があったはずです。しかし、下がり続ける視聴率を少しでも取り戻したい、おもしろいものを世に出したいというプレッシャーと、長年繰り返してきた依頼文の『デフォルメ習慣』で、そうした感覚が麻痺していたことは否めないと思います」
すぐに動けるスタッフが重宝
バランス感覚の欠如に加え、問題の背景にここ数年の「スタッフ入れ替わり」もあるのではないかと指摘する。 「ローカル番組でスタッフが少ないがゆえに、ナイトスクープでは、通常アシスタントディレクターが行うようなことも、構成作家が行うことが少なくない。構成作家に、会議や分科会の最中、“今すぐ飛行機に乗って依頼者に会いに行ける? 現場見てこれる?” “今日中に専門家ブッキングできる?”などの指示が飛ぶ。それゆえ、いつでもすぐに動けるスタッフが重宝されるんです」 こうなると、 「それなりにキャリアを積み、他の番組からも声がかかるようになった中堅やベテランの構成作家は、他の仕事にも時間を割かなければならないため対応しづらく、結果、“動きが悪い”とお払い箱になる。この約10年の間にも、作家陣の約半数近くにあたる8人以上の中堅・ベテランが番組を去りました。この中にはベストセラー作家をはじめ、長年演芸教養番組や情報報道番組に携わり、数々の修羅場をくぐりぬけてきた人も多く含まれていました。それら経験や知見、教養を身に付けたスタッフに代わり、業界へ入りたての若手作家やバラエティ番組しか経験のない作家らが、時間が取れるという理由で、スタッフの多くを占めるようになっていきました。構成作家は、本来ディレクターの壁打ち役で、時にブレーキ役にもなる。その機能が薄れ、人材の多様性も失われていったと思います」