【新・日本の絶景】瀬戸内海に浮かぶ唯一無二の美しい建築物群(香川)
あなぶきアリーナ香川(香川県高松市)
斬新でユニークな建造物が多い香川県で、今注目の3館をめぐった。建築デザインや展示物に、瀬戸内の海景が融合する、ここにしかない絶景だ。 城の石垣のような石積みの壁がユニークな瀬戸内海歴史民俗資料館 高松港に船で入っていくと、白い曲線を描く大屋根が見えた。2025年2月にオープンした「あなぶきアリーナ香川」だ。建物全体に流動的な浮遊感があり、まるで不思議な生命体のよう。設計は建築家ユニット「SANAA」(サナア)で、最大1万人収容できるメインアリーナのほか、サブアリーナ、武道施設を持つ。讃岐(さぬき)の山々や瀬戸内海、周囲の景観との連続性を重視したデザインが秀逸だ。 エントランスから館内に入ると、海に面した交流エリアから女木島(めぎじま)が見えた。この建物を含めた絶景は、海と陸の双方から味わいたい。大屋根にプロジェクションマッピングを投影するイベントも好評で、26年も開催予定。高松の夜景を背景に、クルーズ船から見るのがおすすめだ。
瀬戸内海歴史民俗資料館(香川県高松市)
続いて〝海賊の城〟と称される「瀬戸内海歴史民俗資料館」を訪ねた。 海に突き出た溶岩台地・五色台(ごしきだい)の山上にある。城壁のような外観は、工事の際に出てきた安山岩(あんざんがん)を積み上げたもの。設計は県内の建築物を多く手掛けた山本忠司(ただし)氏。自然と調和したモダニズム建築として高く評価され、国の重要文化財に指定された。 館内には木造船や漁撈(ぎょろう)用具など、瀬戸内地方の歴史や民俗を伝える資料が並ぶ。天井から吊るされたクジラの骨格標本は、かつて瀬戸内海で捕鯨が行われていたことを伝える展示物。ここに来なければ、知り得なかった海洋文化だ。屋上展望台からは、本州と四国の距離が最も近い、備讃(びさん)瀬戸の大パノラマが見える。行き交う船のエンジン音を聴き、眼下に広がる海峡の眺めに酔いしれた。
直島新美術館(香川県直島町)
〝現代アートの聖地〟とも呼ばれる直島に、25年5月に新たに開館した「直島新美術館」も見逃せない。地下2階、地上1階の建物の設計を担ったのは建築家の安藤忠雄氏。装飾のない打ち放しのコンクリート壁が特徴で、三角形の開口部から自然光が差し込む、地上から地下まで続く階段室はとりわけ印象的だ。 ギャラリーは四つあり、絵画、彫刻、インスタレーションなどアジア地域のアーティストによる多様な作品が展開されている。99体のオオカミが飛び交う蔡國強(ツァイ・グオチャン)の作品《ヘッド・オン》や、村上隆(たかし)が描いた13㍍の大作《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》など、豊かなイマジネーションを具現化した作品に圧倒される。 最後は海に面したカフェのテラス席から豊島(てしま)を眺め、香川県の美しい建築をめぐる旅を締めくくった。 文/北浦雅子 ■あなぶきアリーナ香川 営業:交流エリア(一般開放)10時〜17時/不定休/無料、カフェ11時〜17時/不定休 ※イベント等で利用可能日や時間の変更あり 住所:高松市サンポート6-11 交通:予讃線・高徳線高松駅から徒歩4分 電話:087・825・1313 ■瀬戸内海歴史民俗資料館 営業:9時〜17時/月曜(祝日の場合は翌火曜)、年末年始休(臨時休あり)/無料 交通:予讃線・高徳線高松駅からタクシー30分 住所:高松市亀水町1412-2 電話:087・881・4707 ■直島新美術館 営業:10時〜16時/月曜(祝日の場合は翌日)休、不定休あり(Webサイトで随時更新)/窓口1700円、オンライン1500円 交通:高松港から高速旅客船30分、またはフェリー50分の宮浦港下船、町営バス8分の桃山下車徒歩10分/宇野港(岡山県)から旅客船15分、またはフェリー20分の宮浦港下船、以下同じ 住所:直島町3299-73 ※「旅行読売」2026年1月号の特集「2026年に見たい 新・日本の絶景」より