東大は「ゴルフに行くな」と戒めた 医学系の闇と「産学連携」の果て
東京大大学院の教授らと共同研究相手との間で接待が繰り返されていたとして、警視庁が、皮膚科の権威として知られる教授(62)を収賄容疑で逮捕した。
癒着の舞台になったのは、大学院医学系研究科。そして大学と民間事業者による「産学連携」の取り組みだ。
産学連携の共同研究はここ20年余り、国から国立大学への運営費交付金が縮小する一方で、大学が研究費を「自己調達」する方法として推し進めてきた。
そうした中、東大関係者や現役教員らは「医学系はただでさえ癒着が起きやすい。そのうえ、近年は研究者に自ら『稼ぐ』ことを求める風潮が強まり、こんな事件はいつ起きてもおかしくないと思っていた」と語る。【長屋美乃里】
「製薬会社仕切り」の飲み会
2025年10月、東大の事務局から現職教員に向けて、ある資料の配布があった。盛り込まれていたのが、学内の「倫理規定」だ。
「酒食等の接待供応は禁止です」
「利害関係者とゴルフはできません」
ある自然科学系学部の現役教員は「何を今さらというような内容。大学当局はこの件を気にして引き締めを図ったのだろう」と話す。
事件化はしていなかったが、東大はこの頃、既に一連の問題を把握。「コンプライアンス違反」と認定し、再発防止を呼びかけていた。
ただ、この教員を含む複数の東大関係者は「(今回の事件は)長年の慣習に基づく、もっと根深い問題だ」と指摘する。
東京都文京区本郷。「赤門」で知られる東大キャンパス近くの居酒屋では30年ほど前、医学部の教授が「今日の懇親会は、○○製薬さんに仕切ってもらっています!」と言って始める飲み会が、当たり前のように開かれていた。
ある元東大職員は、「勤務後に飲みに行くと、しょっちゅうそんな光景を見かけました。医学部の先生は当然のように企業の人におごってもらっていました」と振り返る。
今回、収賄容疑で逮捕された教授は、皮膚科の権威として知られ、学会でも大きな発言力を持っていたとされる。
前出の現役教員は指摘する。
「特に医学部系は癒着の余地が大きい。大学病院の医局では使う薬、機器類が教授の一声で決まるし、影響は他の病院にいる同門の医師らにも及ぶ。取り入りたい出入りの業者による飲み会は今もあると思う」
東大では、25年11月にも付属病院の准教授が出入りの業者から賄賂を受け取ったとして逮捕される事件があった。
削られる研究費、増える外部資金
こうした長く続く「癒着」の土壌の上で始まったのが、大学などの教育機関に民間企業が資金を出して、協力して研究開発をする産学連携の推奨だった。
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