強制送還、弁護士通知の廃止に抗議
出入国在留管理庁は、外国人を強制送還する際、代理人弁護士に2カ月前に通知してきた運用を2月1日からやめる。本人に1カ月前に伝える仕組みは続ける。日本弁護士連合会(日弁連)は「裁判を受ける権利」の侵害になると抗議している。 【写真】クルド人の父が突然、強制送還された一家 弁護士への事前通知は2010年に始まった。入管庁によると、民主党政権が一人ひとりが支え合う社会をめざす「新しい公共」を掲げるなか、官民協力の一環で入管と日弁連の協議会を設置。これにあわせて事前通知をスタートした。 希望する弁護士に対し入管当局が、送還の原則2カ月前に「○月の第○週」と時期を知らせてきた。弁護士はそれを受け、本人の意向に応じて送還取り消しを訴える裁判手続きをとる。25年には東京入管だけで50件の通知をしたという。 ただ、入管庁は「弊害」が生じていたと主張する。19年以降、弁護士に事前通知をした外国人7人の行方が分からなくなった。送還対象になる人は、入管施設への収容をとかれた仮放免の場合も多く、定期的に入管に出頭しなければならない。7人は事前通知後に出頭せず、行方不明になった。「送還を逃れるため逃亡した可能性がある」としている。 入管庁は昨年、日弁連に事前通知をやめる方針を伝えた。両者は2度にわたり協議したが折り合わず、入管庁は2月からの廃止を通告した。 日弁連は1月27日、廃止に抗議する会長談話を出した。本人には1カ月前に伝えるものの、談話では「訴訟提起などを1カ月以内に行うことは極めて困難」と指摘。裁判を受ける権利が侵害されると訴えている。 ■「不法滞在者ゼロプラン」推し進める中で 弁護士通知の廃止は、外国人政策の厳格化が進む中で行われた。 入管庁は昨年5月、「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている」として、入国から出国までの対応を厳格化する「不法滞在者ゼロプラン」を始めた。 高市政権が1月に刷新した外国人政策の基本方針でも、ゼロプランの「強力な推進」を明記。強制退去処分が出ても出国や送還を拒んでいる人を係官同行で帰国させる「護送官つき国費送還」の件数を27年までに倍増させ、強制退去が確定した外国人の数を30年末までに半減させるとの目標を掲げている。 ゼロプラン開始後の3カ月間で、護送官つき国費送還されたのは約120人で、前年同期に比べ倍増。日本で育った子が送還されたり、親子が離ればなれになったりする事例も起きている。 今回、入管庁との協議にも関わった日弁連人権擁護委員会の滑川和也弁護士は「政府が送還を促進する中、国内で司法の救済を受ける最後の機会を保障する手段として、弁護士通知の意義は高まっていた」と指摘。入管庁が主張する「逃亡」との因果関係も不明だとして、協議の継続を求めている。(二階堂友紀、米田優人)
朝日新聞社