米大学が入学審査でAI活用-採点コスト削減も、MIT教授「同じ学生像だけ合格の恐れ」

  • バージニア工科大学やカリフォルニア工科大学の試み
  • 子どもの人生の決定をAIに任せられない-専門家や親に不安
米ノースカロライナ州ダーラムにあるデューク大学のキャンパスPhotographer: Cornell Watson/Bloomberg

数千人の米大学入学志望者が、今年は例年より早く合否結果を受け取る見通しとなっている。背景には、大学側による人工知能(AI)の活用がある。

  全米の大学の入学審査部門は、エッセーの読解や成績証明書の審査にAIを取り入れ始めている。大学が資金面の圧力に直面する中、職員の業務を効率化する狙いがある。

  米企業が採用選考でAIを使っているのに倣って、バージニア工科大学やカリフォルニア工科大学などの大学も、企業の採用担当者の手法を取り入れている。

  OpenAIなどが開発する大規模言語モデル(LLM)の登場によって、米国の教育は大きく変わりつつある。大学教員は授業にAIを組み込み、学生はリスクに関する警告にもかかわらず、リポート作成の助けとしてChatGPTを利用している。

  通常4月に公表される合否結果を心待ちにする学生にとって、入学審査の迅速化は、発表を待つ不安な期間の短縮につながる。

  一方で、専門家の一部は、AIへの依存によって意思決定に偏りが生じる恐れがあると懸念している。米トランプ政権が多様性、公平性、包摂性(DEI)の取り組みへの反対や制限を強める中、偏りは対立の可能性をはらむ問題だ。

  「子どもの人生で最も重要な決定の一つを、AIによって下されることに、喜んでいる親を私は知らない」。AI倫理を研究するニューヨーク大学の教授、メレディス・ブルサード氏はこう語った。

  「エッセーをAIで評価すると、予測可能性が高く評価される。特定のAIが求める厳密な数学的フォーマットに従う人が報われる。それは学生の文章に私たちが本当に求めているものとは正反対だ」と言う。

効率化されるプロセス

  連邦政府による資金凍結Bloomberg Terminal入学者数減少の見通しに直面する大学にとって、AIの活用は、出願書類を読む人手を減らすことでコスト削減につながり得る。出願時に学生による動画の提出を可能にするサービスを多くの大学に提供するイニシャルビューの共同創業者、テリー・クロフォード氏はそう指摘している。

  バージニア工科大学の出願プロセスを例に取ろう。通常の年であれば、学生は四つの短いエッセーを提出し、それぞれを2人の担当者が読んで採点する。最初の2人の点数に大きな差が出た場合は、3人目が加わる。昨年は過去最多の5万8000件の出願があり、読む必要のあるエッセーは約50万本に上った。

  今年は、各設問について1人の担当者とAIが採点し、差異が出た場合は追加の人間の担当者が採点する。これによって、これまでに約8000時間の節約になったと、入学管理担当の副学長、フアン・エスピノサ氏は述べた。同大学はAIの活用により、合否発表を例年より約1カ月早める計画だ。

  「人間は依然として重要な役割を担っている」とエスピノサ氏は言う。「ただし、審査を速める方法や、何らかの形で要約できる出願書類があるならば、大学はそれを検討すべきだと思う」と語った。

  ジョージア工科大学も、編入学生の成績証明書の審査にAIを用い、決定をより早く出す取り組みを進めていると、同校で戦略的学生アクセス担当エグゼクティブディレクターを務めるリック・クラーク氏は述べた。

出願者にとってのリスク

  AIは入学審査部門の効率を高める可能性があるが、合否判断や順位付けに関してAIに過度に依存するのは危険だと、マサチューセッツ工科大学の経済学教授、ダロン・アセモグル氏は指摘する。

  複数の大学が同じAIモデルを使えば、同じような判断を下し始め、特定のタイプの学生が有利になる可能性があると同氏は説明した。

  出願書類の作成で学生にAIの使用を認めることも、同様にリスクを伴う。

  「一部の学生は、より高度なAIモデルを使えるだろう。そうした学生は、経済的に恵まれていたり、人脈が豊富だったりする場合が多い」とアセモグル氏は話す。「一方で、恵まれない立場の集団は、さらに取り残されることになる」。

  こうした制約があるため、ブラウン大学を含む一部の大学は、出願におけるAI使用を厳しく制限したり、適切な利用範囲を明確に示したりしている。ブラウン大学への出願では、AIを使ってスペルや文法のチェックを行うことは認められているが、短い記述式設問の回答や、提出するその他全ての資料の内容は、出願者本人の手によるものでなければならない。

  コーネル大学は、エッセーのテーマを考える際や、文法の確認にAIを利用することを認めている。一方で、不適切な使用例として、AIにエッセーを書かせること、別の言語で書いたエッセーを翻訳させること、美術、デザインなどの専攻で提出が必須の作品集に含める画像をAIに生成させることなどを挙げている。

原題:Colleges Are Letting AI Bots Help Make Decisions on Who to Admit(抜粋)