配送業者で真面目に働いていた元ヤクザの友人が6、7年前の事件の容疑で突然逮捕された。しかし、実際には事件に関与していないことがわかり釈放された。
警察はそもそも友人を起訴にもっていけるとは思っておらず、逮捕して組織や事件の情報を調べたいという思惑だったようだ。
警察サイドとしては ただの空振りだったわけだが、友人には大きなダメージがあった。
釈放後、職場からは長期の無断欠勤を理由に解雇が伝えられた。事情を説明したものの、「疑われるような生き方をしてきたあなたが悪い」と取り合ってもらえなかった。
友人は「やめろやめろっていうからヤクザをやめたのに、その警察が仕事を奪うのかよ」とツライ顔をして語った。
一時期は「これはまたヤクザに戻れってことだよな」とひねくれた感情になり、犯罪の道に戻りそうになった。しかし、「ここで戻ったら負けたことになる。悔しい」と気持ちを入れ替えて現場系の仕事で汗を流すことを選んだ。
元ヤクザの社会復帰は想像以上に難しい。「人に迷惑をかけるような生き方をしてから当然だ」ということは本人たちもわかっている。
しかし、銀行口座が作れなかったり携帯電話を契約できなかったりアパートを借りることができなかったりすれば、カタギとして頑張ろうという気持ちもしぼんでしまう。
ましてや、ようやく決まった職場で懸命に働いていたにも関わらず、その働き口を本人が関与していない事件による逮捕で失うとすれば、ほとんどの人がグレてしまうのではないだろうか。
一般の人からすれば、そんな人間は野垂れ死すればいいとか、一生刑務所に入れておけばいいと思うかもしれない。
しかし、現実的に考えれば、人間は野垂れ死をするぐらいならその前に犯罪に走る。そしてその時、被害に遭うのはあなたかもしれないし、あなたの家族かもしれない。
更生を誓ったものの、仕事を見つけることができず、再犯を繰り返す人は数え切れないほど見てきた。
また、一生刑務所に入れておくことはよほどの重罪を犯していない限り不可能だし、服役中の彼らの生活費には我々の税金があてられることになる。
私が原作を書いている『ヤクザはサウナに入れますか?』の主人公マコトは5年前に組織を抜けた元ヤクザだ。現在は犯罪に手を染めることなく、配送業者で働いている。
モンスター客からは嫌味を言われ、上司にはいびられながらも毎日荷物を運んでいる。マコトの背中には刺青があり、左手の小指は欠損している。
そんなマコトを受け入れてくれるのがサウナだ。全裸になるサウナではマナーや立ち振る舞いによって、その人物の人間性が明らかになる。
当初は、マコトが気持ちよくサウナ巡りをする作品になる構想だった。しかし、元ヤクザを取り巻く環境はそんなに楽なものではない。
過去の仲間がトラブルを持ってきたり、兄貴分が突然押しかけてきたり、元ヤクザという身分が会社で問題になったりと、サウナで簡単にととのうことを許してはくれないのだ。
マコトにもさまざまな試練が降りかかるが、マコトは「もうヤクザには戻らない。まっとうなカタギになる」と誓って目の前のトラブルや自らの過去に向き合っていく。
私の友人の中には元ヤクザという身分でありながら更生し、建築業、配送業者、タクシー運転手、営業職などで働き、カタギとして生活している人が大勢いる。
決して簡単な道ではないが、失敗した人がやり直せる世の中になってほしい。そんな願いを込めて執筆しているのが『ヤクザはサウナに入れますか?』という作品だ。
本日、2巻が発売になりました。気になる方はチェックしてみてください。リンクはツリーにあります。