「すいません…メール誤送信しました……」
新人くんの声が、
明らかに震えてた。
聞けば、
A社に送るはずだった請求書を、
間違えてB社に送ってしまったらしい。
金額も違う。
条件も違う。
完全アウトなやつ。
一瞬、
オフィスの空気が止まった。
「いつ送った?」
「…今です」
全員の視線が、
上司に集まる。
新人くんは
今にも泣きそうな顔で言った。
「本当にすみません……
自分が注意不足で……」
教育担当が割って入った。
「私の責任です。
確認が不十分でした」
上司が冷静に言った。
「いや、誰の責任でもない。
仕組みのせいや」
「まず、謝罪の準備しよか。
それと同時に考えよ。
これ、個人のミスで終わらせたら
また起きるから」
実際、
こういうミスは珍しくない。
条件が揃えば、
誰でも起こりうる。
これをきっかけに、
社内でのルールが変わった。
・メールは送信しても、10分間は相手に届かない仕様に変更。(その間は送信取り消しが可能。)
・請求書や見積書は必ずファイル名に顧客名を入れる
・添付時にファイル名を自動で赤字表示
・社外メールは送信前に確認ポップアップを2段階
・新人が送る場合は教育係がすべて確認
新人くんは、
何度も頭を下げてた。
でも上司は言った。
「これは君の失敗やけど、
君だけの責任じゃない」
「人の注意力に頼ってる時点で、
仕組みとしては不十分やからな」
後日、
顧客にはきちんと説明して謝罪した。
大事にはならなかった。
新人くんは、
ポツリと言った。
「正直、
辞めたいくらい怖かったです」
上司は笑って即答した。
「それくらいで終わる会社なら、
とっくに潰れてる」
ミスはゼロにはならない。
でも、同じミスを繰り返すかどうかは、
仕組みで決まる。
怒鳴るより、
反省文を書くより、
一番の再発防止はこれ。
人を信用しすぎない仕組みを作ること。
むしろ、
チームは一段強くなった。
いい会社って、
ミスを消す会社じゃない。
ミスが起きた後に、
ちゃんと賢くなる会社。