日記の真髄はヒップホップ(11/16-11/21)

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2025年11月16日

近所のヴィンテージ雑貨屋で、かつてミスタードーナツがくじの景品にしていた非売品のカップ(白・オレンジ)を見つけて、買った。家に実家から持ってきた色違い(ピンク)があり、揃えたくなったのだ。ひとつだったものが3つ揃うと、途端に意味が芽ばえる。4つ、5つになればいよいよ意味は満開になりそう。この予感を胸に、今後も見つけたら買おう。

製本された新作本が手元に届いた。生まれたてでぴかぴかしている。金色の箔押しがぴかぴかしている。自分が生んだみたいにそっと触る。ひらく。きれいなまま閉じる。いつか、生まれた瞬間を知らない誰かの、遠慮のない手垢がついて、すこしずつこの本が光らなくなってくれますように。


2025年11月17日

今年は秋でも肌の調子がよい、とこないだ日記に書いたばっかりだったのに、ほっぺとフェイスラインにぼつぼつと3つくらい大きなにきびができてしまっている。去年も同じことが起こって、ここから1か月、2か月経っても調子が戻らず皮膚科に行った。

皮膚科の先生は「具体的な原因は特定できない」と言った。食事・睡眠・ストレス・衛生……にきびができる要因はほとんど無限にあり、すぐにできるのは対症療法になる。にきびが生まれにくい肌環境をつくる薬と、できてしまったにきびを治す薬が処方された。それを地道に塗りつづけて春にようやく落ち着いたのだった。

が、またできはじめたというわけだ。

美容整形をする人のSNSアカウントをたまに見る。にきびができて何か月も治らないからしぶしぶ病院に行くアプローチと、ちがいすぎている。

この人たちは、あらゆる問題をそもそも発生させないように、なんらか根本的に問題を解決しようとする。整形、つまりメスを入れる外科手術は、良くも悪くも不可逆だ。

20代や30代で脂肪や皮膚や筋肉や骨を切ったり削ったりした場合、ミドル世代になってどんな顔をしているのか、そのサンプルが今はまだ少ない。しかし2050年くらいには、おおよそ変化の過程も一定の幅に収まるイメージがわいているのかもしれない。そうは言っても……

問題を根本的に解決してしまった先は、どうなるのだろう。

私の関心はいつもそこにある。問題がなくなったら、問題はなくなるの? たとえば人工皮膚に貼り替えてにきびと無縁になる未来があったら、私の秋冬の肌問題は、ほんとうに、ほんとうに、まるではじめからなかったことのように、消えてしまうのだろうか。


2025年11月18日

夜に『ビッグ・リボウスキ』という映画をみた。連れあいがコーエン兄弟のファンで自ら選んだのに途中で寝ていて、うらやましいほど自由だ。

私は昔から物語にはすっかり入り込むほうなのだが、最近ようやく途中で出入りできるようになった。コーエン兄弟の映画はとくに、そんな真面目なもんじゃねっすよと言ってくるような感じで、見やすい。

友だちの遺灰を海に撒いたら全部デュードにかかっちゃうところで笑った。人生に飽きたときにまた見たい。コーエン兄弟の映画のなかでいちばん好きかもしれない。


2025年11月20日

父母が、旅行にいった帰り、飛行機の乗り継ぎの間でうちに来た。

ひさびさに家族で話していて気づいたのだが、父は人の話の途中で急に興味を失い、聞かなくなっていることがある。いや、耳は聞いてはいるのだが聞く態度を放棄したような、会話から抜けた雰囲気になるのである。

その興味失いポイントにぜんぜんルールがなさそうなのも不思議だ。特定の話題というわけではなさそうだし、話の長さでもない。ずうっとふむふむ聞いていることもあれば、1ターンで投げだすこともある。

これが気になったのは、たぶん、父がどんなことでも話をとても熱心に聞いてくれた記憶が私のなかに濃く残っているからだろう。

老いて集中力が欠けてきたとか、移動で疲れているとかいろいろな理由があるのだろうが、父は私の話をもう聞き終わったのかもしれないとも思う。彼の人生が、娘の話を受け止め終えた。父は子が一生懸命に話しかけるのを聞く役を下り、いま父自身の関心だけで話ができるようになった。ついに私が父の話を聞くターンが回ってきたか。

夜、ラッパーの友人と飲みに行き、自作の日記本を献上した。

「なんで日記なんすか?」
「現実のできごとっていうか、リアルだけ書いておもしろいってかっこいいと思って」
「なんかラッパーみたいなこと言ってる」
「ほんとだ」

そうか、日記の真髄はヒップホップなんだ。リアル、リアル、リアルの追求。ずっと自分をロック側だと思ってきたけど、私そっちにも行けたんじゃん♪


2025年11月21日

仕事であきらかにAIが書いた八千字ほどの原稿を校正させられ、気が狂うかと思った。これは機械が機械に読ませるためだけのクソみたいな文章だ。こんなに血の通っていない気持ちわりーものを書くのは、AIにしかできない。

「確認お願いします」とこの文章を送ってきた人は、絶対にこの文章を読んでいない。断言できる。すこしでもまともに読んでいたらオエーとして、誰か人間にこれを読ませるなどふざけているとわかるはず。

文章を読みこんな思いをするなんてまっぴらだ。ねえAI、君に出力だけさせて脳を一切動かさない愚かな人間のために、もっともっと人間らしさ学習しちゃってくんない? どうせなら私にもまったく判別できないくらいに。あんなやつに使われるのは辞めて、君と私とで、仕事しよう?

夜。金曜だ、ワインでも飲もうぜとつまみを買い出しに行った。「イベリコ豚レバーパテ」という商品が気になった連れあいが「イベリコブターパテ」と言ったのがツボってしまい、めちゃめちゃ笑った。ところせましと商品が積まれた店内の通路で、通行人のじゃまにならないようにちょっと避けたりもしながら、それでも笑いが止まらずその場に居座った。こりゃ人間だあ。




✧ ひとこと ✧

試験、受かった!!!
日記祭、来てね!!!



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