記憶のポストとその実在(12/8-12/16)
12/21の「BOOK TURN SENDAI」ありがとうございました! お礼や次回イベント出店のお知らせなど、最後に書きます↓↓↓
2025年12月8日
すでに持っているスキンケア商品の広告がまいにち私のタイムラインに流れてくる。出稿料を支払っている広告主が気の毒だ。
ちょっと高い保湿クリームだが、市販のスキンケア商品というのは使う都度なにかがよくなっている気配があるわけではないので、流れてきた広告をタップし、日々恩恵を受けているはずの、商品の効用をあらためて読む。そうそう、酷使している目のまわりがシワシワにならないようにこれを塗っているんだった! もう一度クリームを信じて閉じる。
そんなことをするからInstagramのアルゴリズムはまた私にクリームの広告を表示してしまう。そして数週間経ち、きっと私は効用を思い出したくてタップする。広告って、新規顧客獲得のためだけにあるわけじゃないんだ。
2025年12月9日
昨夜、地元のほうで大きな地震があって家族や友だちとやりとりした。みんな無事でよかった。弟が住んでいる地域がけっこう揺れたのだが、本人は福岡に旅行中で不在だったらしい。
家族でやりとりしているLINEグループで弟が送ってくる文面には興奮がにじんでいた。父母の安否確認もそこそこに「家ぶっこわれた?」と尋ね、知人から届いたという半壊した建物の写真を見せてくる。なんだか心配というより盛り上がっている。この感じ、身に覚えがある。
東日本大震災のとき、私はちょうどアメリカに旅行中で、フロリダに住む親戚の家にいた。おばがベッドルームに飛んできて地震を知らせ、ニュースを見たら瓦礫の山が映っていた。
えっ日本終わったじゃん。このままフロリダ永住ってこと? 銃社会こわいな。英語もぜんぜんできないし。お金とかどうしよ? 家族の心配より先に、そんなことがなぜか次々に浮かんだ。海外のテレビに映しだされる被災地は、それほど ~~日本終了~~ の光景だった。そのあと私はわけもわからず熱を出した。
何か大事が起こってすべてが終わったような気がするとき。そして自分だけがそこから浮いているとき。急にでっかい自由が到来する。あらゆる縁から放たれ、ひとりの人間、いっぴきの動物として、広い広い世界に向かって立ちスタートを切ったような。とてつもなく壮大で、とんでもなくさびしい気分。自分はこれからなんでもできるし、ひとりではなんにもできない!
弟も福岡で、もしかしたらちょっとはそんな気分になっていただろうか。
2025年12月13日
顔が寒くて夜中に目が覚めるため、最近目の下まで覆える薄いシルク素材のマスクを買った。温かいし口のなかも乾きにくくてとてもよい。しかし三日経つのに、シルクで顔を覆っているキラキラした気持ちによりたまに目が覚めてしまう。そろそろ慣れたい。
2025年12月15日
連れあいが会社の健康診断でひっかかり、精密検査を受けていたことの結果が発表される日だった。詳しくはわからないがなんかやばめの内容だったので、私は緊張していた。結果は、経過観察ということだった。
検査自体もけっこう負荷のかかるもので、彼の身体にはわりと大きな検査痕が残っている。どんどん傷は治るだろうが、これは完全になかったことにはならないだろう。そうまでしても調べておかねばならないほどの病だと思ったら、いっそうこわい。
こないだの地震もそうだけど、身近な人が命にかかわる事態になったら、どうすればいいんだろう? 概念的には生き死にのことをよく考えているほうなのに、実際の心構えはまったくできていない。机上の空論とはこのことである。想定しているよりもあっさりと自分が世界に絶望してしまわないか、心配だ。
2025年12月16日
家の近くにあるポストまで、歩いて7分かかる。今日みたいな怠惰モードの日の7分は、もうひとつ別の用事がないと渋ってしまう距離。でも今日のうちに投函しちゃいたい……うだうだ部屋で考えていたら、とつぜん、ポストの記憶が降ってきた。
徒歩7分のポストと逆方向へ進んだ道にも、なんかポストあった気がする。前にそこを通ったとき「あれ、ここにもポストあるじゃん」って言ったような。
でも、そっちへ進んでやっぱりなかったら? 確実な7分ポストに出しに行ったほうが結果的に早いかも。もう夕方で寒くなってきている。ってかこの悩んでいる間に10分は経ってる。確かな7分ポストか、不確かな3分ポストか。
賭けだ。
自分、記憶まだいけます! やらせてください! 7分ポストと逆方面に歩きだす。信号をわたり、バス停があって、曲がり角が見えてくる。たしかそこを曲がったところに、記憶のポストは……実在…………した。
これまでに見たどのポストよりも赤く、つやつやと光っている。3分ポストここにあり。いつかの私は忘れぬようにと、あのときわざわざ声に出して言ったのだ。連れあいに教えるふりをして自分に聞かせていたのだ。あのときの行動がこうして、ついに、真っ赤な実を結んだ。これからは、3分ポストだ。
✧ ひとこと ✧
年末が来てしまっている、ここからは早いぞ! 年末を逃がすな!!
12/21、仙台で開催された「BOOK TURN SENDAI」に参加しました。想定より多くの方に本を買っていただけて、しかも私のことを知っている方が何人もいてびっくり。『おろおろオスロ』『ゆらゆらユーロ』をあわせて購入の方がけっこういらして、うれしい! 仙台、東北のみなさんありがとう。
11/14から広島PARCOで開催中のイベント「BOOK PARK CLUB」でも本を置いてもらってるんですが、一週間で『不在日記』が完売、先日『おろおろオスロ』も完売のお知らせがありました。すごい! パルコの力、あずきのチカラくらい信じられる。『ゆらゆらユーロ』も在庫僅少とのことで、全作とも追加納品しました。広島のみなさんありがとう。
次の出店は、3/8「ZINEフェス東京」です。12/21同様、友人と一緒に「心だけパンクス」という名義で参加し、各々の本を売ります。ひとりのを買ったからもうひとりのも買わなきゃいけないかな、とかまったく気にしなくて大丈夫です。ぜひ遊びにいらしてください! ⇒詳細
【宣伝コーナー】
▼日記ZINE 3『ゆらゆらユーロ』11/30に発売しました
▼日記ZINE 2『おろおろオスロ』手元在庫僅少です
▼日記ZINE 1『不在日記』めでたく三刷になりました
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