世の中が世の中を理解しすぎていないか(12/19-12/23)
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします! よい一年になりますように。
2025年12月19日
大学の友人ふたりと半年ぶりに集い、たくさんおしゃべりした。
ふたりともアップルウォッチで睡眠の質をウォッチしているらしい。私は自分の身体の様子をウォッチしたことがこれまでなく、人生の後れをとっている感じがする。自分の状態をウォッチするのは、大人だ。
アプリで睡眠の様子を見せてもらったら、激務の会社で働くひとりがここ一週間、3~4時間ほどしか寝ていなかったことがわかりブルっとした。彼から採取したデータの分析結果によれば、基本的に7時間以上寝ると「とても良質」的な評価になっているようだ。
日々アラームもかけずおおよそ7~8時間眠る私と友人とでは、一日のうち意識がある時間が、なんと4時間もちがう。一週間つづけば28時間。週で一日分以上、私は彼より多く自分の意思で動けない状態にある。えっなんかめちゃくちゃ損してない? そんな事実とは裏腹に友人はうらやましがってくれたので、自慢げにした。
そのときは寝るの好きだからまあいいかと思ったけれど、でも、寝るのが好きってなんなんだろう。だって寝ているときは寝ていること自体を味わえないのだ。眠りに落ちる直前のまどろみや、目が覚めてすっきりと冴える感覚が気に入っているのだとしたら、たっぷり眠る以外にもなにか満足できる方法がありそうな気もする。しかも毎日1時とか2時まで起きているもんだから、私の睡眠が「とても良質」とは思えない。ただ長いだけの眠り。
はたして私の睡眠の質はどうなのだろうか? 人生ではじめて体調を観察してみたい気持ちになったが、まずアップルウォッチを買うところからで、それは現状かなりだるい。いつかそのうち私にも、大金をはたいて自分をウォッチしだす日がやってくるだろうか。
2025年12月20日
あす出店するイベントの前乗りで仙台へ。きのうの夜飲み食いしすぎて胃もたれを起こしており、仙台到着の19時になっても胃はずうんとしていた。宿で大人しくしておくべきか? でも明日は朝から夕方までイベントで、18時半には新幹線に乗り込むことになっている。仙台を味わうなら、ぜったいに今夜だ。逃したくない。ホテルに荷物を置き、あごにできた白ニキビを出来心でつぶして街へ。胃腸が弱いくせに年末は豪快に飲み食いして、毎年肌を荒れさせている。
まずは駅近くにあるアクセアという印刷屋に行き、イベント用に発注してあったポップを受け取る。東京から注文して仙台で受け取るこの浮いたような気持ちを店員の方に見透かされそうだと思いつつ、旅の者なので気にしない。
その足でマツキヨに向かい手頃な胃腸薬を買って飲んだ。仙台の店舗でもいつもどおりにポイントが付与される。アクセアもそうだが、全国チェーン店のなんと頼りになることよ。
漢方はいつだってすぐにじんわりと作用してくれる。漢方、今回もよろしくねと心でほんとうに唱えてから、仙台駅周辺を舐め回すように歩いた。前回来たときから変わっているところ、変わっていないところ。クリスマス直前の土曜の街を歩く人たちの雰囲気。いいですね。
地下道の入口を見つけ、入ってみる。仙台駅周辺は地下道が豊かだ。どこに出るかわからないまましばらく歩くと、S-PALという駅ビルに通じた。ちょっとお腹も空いてきた。ありがとう。今日も漢方を信じている。
フードライターの白央篤司さんが最近仙台に来ていたようで、彼がSNSでポストしていた立ち食いすし屋に寄ってみる。が、「もう終わっちゃいました」。えーん。時計を見るともう20時半。仙台の夜が更けてしまう。まだマツキヨしか行けてないんですけど?
すしの口のまま仙台駅3階にあるグルメストリートを見て回ると、営業中のすし屋がまだいくつかありほっとした。そのなかで一店舗だけ行列ができている。しかも唯一の立ち食いすし屋みたいだ。とりあえず並んで調べると、食べログで百名店に選ばれているではないか。「仙令鮨」君に決めた。並ぶうちさらに薬も効いて一石二鳥だ。
大きな貼り紙には「ラストオーダーの時間後はお並びいただいていてもご案内できません」とある。そりゃそうだろうと思うのだが、こんなにでかでかと貼り出されているということは、並んでいて結局入れず帰らされ文句をつけた人がこれまで何人もいたのだ。私の前には5名。リミットまであと30分。立ち食いの店だ、可能性はある。
結果として、私とその次の女性客で打ち切りとなった。っしゃ! 敗退者のみなさん、名店とも知らずたまたま通りがかったような者が申し訳ありません。しかし敗退者がいるとわかれば胃腸の調子もいっそうよくなる。我ながら残酷だ。
案内されてすぐ注文を聞かれた。「おすすめを適当にください」「あいよ、5貫くらい出しますね」と流れるようなやりとり。事前に注文を決めておらずとっさに言ったけれど、旬が大事なすし屋において最適解ではないか。とっさに口が放つ言葉によって、これまでの人生で多くのものごとが決まってきた。おおむね後悔していない。漢方とおなじくらい自分の口を信じている。信じるというか、勝手に口が言うんだから委ねるしかない。急いで「四季の松島」という地酒も注文した。ちなみにもう胃腸の不調のことは頭からほとんど抜け落ちている。
日本酒をぐびり。辛口でうまい! そこにおまかせで出てきた、かまとろをぱくり。うっ、うま~~~! 最高。最高。まず漢方を買いに行ったこと、駅周辺を歩き回って胃腸を整えたこと、駅ビルに着いたこと、ここに並ぶ覚悟をしたこと。かまとろにたどり着くまでの自分の行動すべてに感謝した。幸せだ。酒がうまい、すしがうまい。それ以上のことが世界にどれほどあるだろう? うまいものたちは、小食の私にも、からだをあたたかくやわらかな風が通り抜けるような幸福をもたらしてくれる。
閉店間近で慌ただしく、すぐにラストオーダーを聞かれた。日本酒一合、すし十貫で出るなんて熟練の客みたいでかっこいい。胃腸の負担も最小限に抑え、すべてが完璧な夜だった。
2025年12月21日
参加したZINEイベントが盛況ですばらしい。インターネットでつながったり、知ってくれたりしているさまざまな人がブースを訪れてくれた。こういうとき、まるで葬式だと思う。私の人生にはこんなにたくさんの人が交わってきたのだな。しみじみとうれしい。一緒に出店した友人・莉奈のはじめてつくった本も売れてよかった。
帰りの新幹線で今日がM-1グランプリであることに気づいたけれど見るすべもなく、イベントで興奮し疲れた心身をただ休ませた。ぼーっと眺めていた電光掲示板に「面白山高原駅」という文字が流れる。おもしろ山。訪れる前から勝手に高いハードルを設けられる山もあるものだ。いったいどんなと調べてみたら「登山もキャンプもでき、紅葉やコスモスなど美しい景観が人気のスポット」との説明で、たしかにこの世界には、お笑いだけじゃなくそういうおもしろこそ無限に広がっている。それを忘れるな。むしろ歳を重ねるほど、そちらがメイン・コンテンツになってくだろうから。
2025年12月23日
当日見られなかったM-1を見た。ミルクボーイ駒場さんが審査員として出ていて、全組へのコメントが「めっちゃええですね」からはじまりニコニコした。審査するからには分析もするんだけど、めっちゃええのが大前提にあることを毎度喚起してくれる。
世間ではどうやら考察が流行っており、さまざまな人がさまざまなものごとの仕組みや裏側について、どんどん詳しくなっている。世の中が世の中を理解しすぎていないか? 私は誰にも頼まれていないのに、謎の目線からこれを危惧している。
映画・音楽・小説・まんが・お笑い、ほかにも就活や転職、恋愛、子育て。なんでもそうだけれど、目の前に差し出されたすべてにそのまま体当たりすることなんて、もうできなくなってしまった。新聞、雑誌、テレビやラジオの登場時もそうだったのだろうが、やはり流し見ているだけで情報の洪水を避けられないSNSは極めつけである。
人の意見や感想と知識が先回りし、分析的・攻略的にばかりものごとを捉えるようになってしまった目や耳は、もはや私のものだろうか。
知らないまま、鈍いまま、世界と自分の間だけに生まれる何かをたのしもうとする気持ちを、なるべく手放さないでおきたい。スマホを遠ざけて観るM-1はとてもおもしろくて、元気をもらった。
✧ ひとこと ✧
noteではひとまず今年も日記を書いていこうかと思います。何人がここまで読んでいるのか、もしかしたらひとりもいないのかもしれないけれど、引き続き気が向いたときに、気が向いた分だけ読んでくださるとうれしいです!
ひそかな宇宙のみせで2025年中にいただいた注文分は、年末に発送しました。年賀状シーズンなのでもしかするとお届けがやや遅れるかもしれませんが、お正月休みのおともにしてくださったら幸いです。
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