かにしゃぶ用のかに、今までもここに、あったのか(12/24-1/1)
発売から約一年、家の押入れから『おろおろオスロ』がなくなりそうです。ぜひともゲットしてください! もうひとつお知らせを下で書きます。
2025年12月24日
クリスマス・イブ。先日STAUBのグラタン皿を買ってグラタンをよく作っており、今日も作った。
ふかしたじゃがいもを皿の底に敷き、その上にミートソース、それに食べたい野菜やきのこなんかも軽く火を通して並べ、ホワイトソースを羽毛ふとんのようにかける。チーズも惜しげなくたっぷりと。ひとつひとつはそれほど複雑でないのに、一層重ねるたび確実においしさが増していく手ごたえ。
焼き上がったグラタンをテーブルにおいた瞬間には、他のどの料理ともちがう興奮がある。一見して中身がわからない、チーズの膜に覆われたここには、おいしい層がいくつも重なって仕舞ってあるのだ。そこにスプーンを突き立て、層を層ごとすくって食べる。なんともぜいたく。最近の私は、グラタンのことがすきだ。
2025年12月27日
わが家に新しいレコードプレイヤーが導入され、今日設置が完了した。部屋の電気をスタンドライトだけにして、ビールを片手に、スピーカー前のベスポジでお気に入りの曲を聞いている連れあいに「大人の楽しみをやっているね」と声をかけたら、はずかしそうに笑った。私もそうだからわかる。自分があたかも大人みたいなふるまいをするたびに笑ってしまう。内面がまるでともなっていないから、ガワだけ大人なことに自分でうけているのだ。
2025年12月28日
実家から届いたりんごを手土産に友だちの家に行ったら、予想外に、友だちの夫がビーフシチューを作ってくれていた。人んちのごはんって基本的においしいけれど、その料理が本気の店レベルの味だったので、りんごではちっとも支払い足りない気持ちになった。贈与論によれば私は完全に弱き者。また何かの贈りもので上回り、力の均衡を保たなくてはなるまい。
その後、別の友だち数名とお茶。近くの喫茶店をてきとうに調べて入ったら、はからずも犬同伴OKのカフェだった。私たち以外のすべてのお客が犬連れで、あちこちからさまざまな犬の熱視線を受け取り、店の看板犬は逆にノールックで背中や尻を向けてきて「なでてどうぞ」と人間をもてなし慣れている。人間が愛でるための犬カフェとかでもないのに、うっかり至福の時間をいただきお得だった。
2025年12月29日
友人がうちに遊びにきた。人付き合いがすくない私も、年末はこうして人と会っては語らえてありがたい。この友人とは20年近い付き合いで、基本的に落ち着いたトーンでしゃべる人なのだが、今日話していて、意外とこちらの発言に対するリアクションはいちいちでかいということに、急に気づいた。だから楽しく話せるんだな。見習いたい。20年経っても知らないことだらけだ。
2025年12月30日
なんと、先日見つけた3分ポスト(家から徒歩3分のところにある郵便ポスト)よりも近い、2分ポストを発見した。3分ポストのときもそうだったように、そういえばかつてこの道を通ったときに「えっここにもポストあるじゃん」と思っていたのだ。そのことを、発見してから思い出した。思っているだけでは、やはり忘れてしまう。でもここに書いたからもう忘れない。
夜は人生初の、家でかにしゃぶをした。数日前からやろうと決めていて、ついにやった。
私は小さい頃からかにがだいすきなのに、なぜ、やってこなかったんだろう? かには基本的に旅館とかで食べるもので、贈答品でいただいて家で食べることも一応あったけれど、やりたかったけどできなかったとかでなく、家でかにしゃぶをするという発想そのものがなかった。
昨日、家でかにしゃぶをやったことがあるかを友人に聞いてみたら「え、あるけど?」といった反応だった。こ、これが文化資本か……。
かにしゃぶをやることになったきっかけは、ある日とつぜん近所のスーパーで「かにしゃぶ用のかに」が視界に入ってきたことだ。一度視界に入ると、かにしゃぶ用のかにというのは、いろんなスーパーにどかどか売られていた。そうか、今までもここに、あったのか。
2025年12月31日
紅しょうがのおふたりがポッドキャストでどうか観てくれと話していた「カギダンススタジアム」という高校生ダンスのコンテスト番組を見た。毎チームで泣いた。泣きすぎて頭痛がした。高校生がみんなまっすぐだし、みんな明るくやさしくてすごい。あと踊っているあいだずっと笑顔ですごい。後日、友だちにその話をしたら「高校時代のかんなといちばん遠いところにいそうな人たちなのに?」。そうだよ。だから美しすぎて、泣いちゃうんだよ。みんなが最高でグランプリだ、どうして一位を決めなきゃいけないのと思ってしまう時点で、いまも彼らとは遠いところにいるのかもしれない。
私が感動でずびずび泣いている間、ごはんは全面的に連れあいが作ってくれて、全部うまかった。天ぷら、だし巻き玉子、年越しそば。今年もおいしいものたくさん食べたなあ。
2026年1月1日
今年こそ本をたくさん読もうと思い、文フリで買ってちょっと読んだまま置いてあった本を元日から読んだ。『BIG SHIP』という、複数人で作られた短編小説集。sudoさんの「稲妻」というお話が好きだった。
たとえば男性がおれはクズだと暗がったり世間を睨みつけて見せても、ひねくれそのものをおもしろがってもらえたり、そうでなくても「こいつほんとにダメだな笑」で済まされる、悲惨さがないあの感じへのあこがれが、私にはずっとあった。私はそれを男の情けなさと呼んでいる。男の情けなさに、私は長年あこがれていた。
でも女であって特段クズでもない私には決して届かない境地であることをいいかげん受け入れなくてはならないし、なんというか、そういう態度じたい見てらんなくなってきたのだ。
生きることや世間に対して斜に構えた姿勢をとることには、もう自分のなかで飽きがきている。どうしようもない人生にいい瞬間を見つけ出すような、きらつく一寸の光をとらえ、躍動するからだを感じるようなものが、今はかがやいてみえる。
✧ ひとこと ✧
年末年始、しっかり休みすぎてしまいました。そのぶん仕事の日の心がずうんと重い! 年明けの出勤日から会社にいけなくなってしまったり、そのまま辞めてしまうような人も、きっとたくさんいるんだろうなと思います。ただそれを実行しなかっただけで、そのように感じる部品は私の脳組織にもあります。一月はほんとうに、なるべく無理せずにいきましょう。
1/23(金)19:00~下北沢のBONUS TRACKで開催されるトークイベントに呼んでいただきました。お近くの方など、もしよかったら遊びに来てください。ちいさな会なので金曜の夜、飲み食いしながらたのしみましょう! ⇒詳細
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