圧倒的なまでの感想(1/4-1/12)

衆議院選挙、2/8までに投票行きましょう。戦争だけはむり! 頼むよ!

2026年1月4日

家から自転車で10分くらいのところにブックオフがあるというのを、ここに住みはじめて一年経っていまさら連れあいが発見した。もう食べることにもゆっくりすることにも飽きつつある。「正月休み終盤の過ごしかた」というタイトルの舞台に出演する我々が、その役をまじめに演ずるような面持ちで自転車を漕いだ。

ブックオフにはすでに演者の方々がたくさんおり、それぞれの役をまっとうしていた。実用書をたくさん抱えた働き盛り世代の男性。「話題の作品」コーナーで何を買うでもなくただイチャつきながらしゃべっているカップル。子どもを少年まんがコーナーに置いてミステリー小説を漁る父親。あ行から順に文庫本を見定める爺。「探している本がありますので」との意志を全方位に放ちながらズバズバ棚をチェックしていく青年。空気はからからに乾いていて、女性がびっくりするほど少なく、誰ひとりおしゃれをしていない。どこも蛍光灯で白く照らされているのになぜか暗く感じられる店内。あのちゃんと安藤なつによるほがらかな掛け合いの店内放送だけが静かな空間に何度も響きわたる。ちょっとブックオフすぎない?

この近くにあるセカンドストリートも、ほとんど同じだ。なぜ中古品を扱う店は決まってこのような雰囲気なのだろう。どちらも多店舗経営のチェーンなのだからきちんとマーケティングをしているはずで、なんらかの根拠をもとにこの光と音だけ明るくて陰鬱とした場が用意されているのだ。

根本が大胆に黒くなった金髪の、マスクをしているのに下がった口角が透けて見えるような女性店員に会計をしてもらった。声がけは最小限だが、抑揚も力みもない発声で一応キャンペーンの案内はしてくれる。その奥では毛質の硬い黒髪を低いところで一本に束ね、縁なしのめがねをかけた女性店員が猛烈に仕分け作業をしているのだった。

ブックオフがブックオフを演じてくれているままに退店。

今日まで本が全品20%オフになる年始セールをやっており、気合いを入れて古本を買い込んだ。安い。安い。どんどん買える! 恥ずかしながら、ブックオフで本をどっさり買うのはほとんどはじめての経験だった。心が豊かな感じがした。

都会の人たちはこの行為を中学・高校時代からはじめているのだ。久しぶりに田舎育ちを実感する。地元にも一応ブックオフはあったし、自力で行けないこともないのだが、やはり親に車を出してもらってまでわざわざ行こうとはならない距離だった。学校帰りとか気軽な外出で行ける範囲にブックオフがあれば、私も十代のうちからたくさん本やまんがを読み、幅広い音楽を聴き、飽きるほどに映画を見ただろうか? その仕草が身についている人たち、ブックオフで自然にいられる人たちと自分とでは、なにかが決定的にちがう。ブックオフ然としたブックオフを訪れて、そのことが強制的に思い出された。

帰ってスマホを見ると、知らない人が私の本をまた一冊注文してくださったとの通知がありうれしい。自主制作本はブックオフには並ばないから、なるべくずっとひとりの方に大切にしてもらえるよう作っている。勇んで2分ポスト(家から徒歩2分のポスト)に出しにいった。


2026年1月6日

仕事を午前で切り上げて、午後は友人Aと阿佐ヶ谷神明宮に初詣&厄祓いに行った。今年は私も彼女も本厄で、さらに八方塞がり? というのに該当するらしい。そんなあ。本厄八方塞がりって誰かの必殺技みたいに……。

いま読んでいる川上未映子『黄色い家』で、主人公が金運アップのために家のなかに黄色コーナーを設けるのだとAに話す。効果を得られる確証がなくてもとりあえずよさそうだからやるという点で風水と厄祓いは似ているのではないかと持ちかけると、A は「ぜんぜんちがう!」と強めに反対した。

結果が不確かであることは同じだが、気の流れを整えて運を呼び寄せるのと神様のご加護をたまわりますようにと祈るのとでは、たしかにこう、積極度がちがう。でも論点はそこではなく、風水は信用に足らぬみたいなことをAは言った気がする。むずかしい話をしていると思って、なんか途中から聞き流してしまった。ごめん。こっちから振った話題だったのにごめん。

とにかくたとえ神頼みでもできることはなんでもするぞという気概で、決して安くない初穂料を包み、厄を祓う。

厄祓いでは願いごとを50種類くらいの四字熟語(「家内安全」「安産祈願」とか)から選んで紙に書くのだが、焦点の絞られた願いを選ぶとそれ以外がうまくいかないのではと不安になり、いつも全体をまんべんなくカバーするようなのにしてしまう。肝が小さい。今年は「神のパワーがここぞと自分に集まる」みたいなざっくりと強欲な熟語を選んだ。

神社を出たあとはgionという素敵な喫茶店に入った。生クリームのせコーヒー的なメニューを頼んだら、生クリームが異様においしくてふたりで唸った。八方の塞がりもいくつかは解放されそうなほどにうまい。今年もなんとかやっていこう。


2026年1月9日

年始めの一週間の記憶がほとんどない。ただぼんやりと労働に耐えては本を読んでいたか?


2026年1月10日

義実家のみなさんとはじめての旅行。長野に一泊する。

誕生日に連れあいに買ってもらった調光レンズのめがねをかけて家を出る。とても晴れている。調光レンズは、紫外線の量に応じてレンズがサングラス化してしまう。いや、それがよくて買ったのだけれど、義実家のみなさんの前で勝手にサングラスになってしまうのはちょっとはずかしい。でも普通に度入りで、外してすごすこともできないので覚悟を決めた。

集合場所に着くと義両親や義妹がにやにやしているので、我慢しきれず自分からこれは調光レンズというものでと説明したところ、義父に「フランス人が歩いてきたかと思ったよ~」ときちんとイジられた。日本のみなさんはもっとサングラスをかけまくってほしい。本来、なにもはずかしいことではないのだ。紫外線ってね、肌に日焼け止めを塗ってもけっこう目から入るんですってよ。私は人一倍、紫外線にやられやすいんですよ。サングラスは健康にいいんですよ。おしゃれ以前にね? そう、おしゃれとかの前に。

この旅は義実家の犬も一緒だ。ポメラニアン。車の後部座席に座る私のひざ上にのってきた犬は、ハッハッ言いながら黄金色の毛をたっぷりとさせて、車窓を眩しそうに眺めていた。犬の、ときどき口角が上がり笑顔みたいになるのはなんなんだろう。鼻の上を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めた。

長野に住んでいる、先方の親戚らしいおばさまの家に立ち寄る。

玄関で初対面の私を紹介されたおばさまが、「あら! ◯◯くん(夫)のお嫁さんなのね! 顔をよく見せて! まあ~~~! はい! いいです! わかりました!」。出だしから怒涛のいきおいだ。いいです!

その後も山盛りの菓子やフルーツ、茶やコーヒーでザ・田舎のもてなしを受けながら、おばさまや義祖母、義母らのトークを聞いた。こういうずっと止まらない、あまりにも個人的で好き勝手にしゃべられる話をたまに聞くのはすきだ。ひろゆきが「感想ですよね?」などと口を挟む隙もない圧倒的なまでの感想。感想に次ぐ感想。感想のオンパレード。感想ですが何か? バチンとはね返すほどの強度で行われる、おばさまたちのハリに満ちた会話にうっとりと聞き入った。

夜は、義母が軽井沢の高級別荘を予約していた。リビングに入ると『パラサイト』の家そっくりで、ソファーの下に寄生する者たちが隠れていないか一応確認したほどだ。この高級別荘のみが犬連れの宿泊をゆるしていたらしく、犬のための大出費とのことだった。本人(本犬)は高級さをいっさい感じとらぬ顔でぶいぶい走り回り、即疲れ、ぱたりと寝た。


2026年1月12日

川上未映子『黄色い家』を読了。上下巻ある長い小説だったのにぐんぐん進み、一週間ほどで読み切ってしまった。すさまじかった。読みやすいのに読みごたえがあった。

ざっくりいえば金についての話で、裏社会の“シノギ”についての描写もたくさん出てきた。いわゆるヤクザは親子システムが確立していて、何かあっても親分に話をつければよいが、ヤクザ以外のギャング(?)は組織立っていないぶんたちが悪い。よそのシノギを躊躇なく奪うし、義理人情のかけらもない……とかいう話を、「龍が如く」シリーズを見まくってきた私はよく知っている。裏社会における機微を、映像で思い描き、感情移入できるレベルでわかるのは、まったくもって龍が如くのおかげである。ゲームの知識がほかで役立つとうれしい。

ただすきなだけで別に使役するつもりのなかった知識・経験がまったく関係のない文脈でうっかり役立ったときには、独特の高揚感がある。お得さもあるし、ちょっと得意げにもなる。ゲームをするとバカになるなんて言説はもうとっくに廃れたのかもしれないが、そのような言いがかりに反旗を掲げるすがすがしさもある。「ほら、龍が如く見ててよかったじゃん」。ただ私の場合、ゲームしすぎを誰かから責められたことはほとんどない。膨大な時間をゲーム実況動画の視聴に当ててきたことの、自分への言い訳だ。

『黄色い家』はべつにヤクザの話ではないです。おもしろい本でした。




✧ ひとこと ✧

みなさん、きびしいことを言うようですが、なんともう一月が終わります。前回「一月は無理しない」と宣言したとおりマジでゆっくりしていたし、そのためにお金もけっこう使ってしまった。二月は節制だ……。

こたけ正義感が『弁論』で、現場は「生活保護に陥るのは誰の責任か」を問うている場合ではない、生活保護を受けるべき人が受けるための手筈を整えるので精いっぱいだと言っていました。そのとおり。貧困は考える力そのものを奪います。自分自身の実感としてもそうです。やはりお金はある程度ないとだめですね。すみません、きびしい話をしすぎてしまいました。

気をとりなおし、おかげさまで『おろおろオスロ』の自宅在庫が完売しました! それでもまだ赤字なので増刷予定ですが、現在ネットで買えるのは「本の栞」さまでのみです。どうか売りきらせてください! なにとぞよろしくお願いします。



【宣伝コーナー】

▼日記本3『ゆらゆらユーロ』11/30に発売しました!

▼日記本2『おろおろオスロ』第一版完売しました!(祝)

▼日記本1『不在日記』ありがたいことに三刷です!


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