自動運転の主戦場は商用車と公共交通機関

――ある意味で、公共交通システムをサポートするレベル4と言えますね。清水さんのお話をうかがっていると、自動運転の主戦場はタクシー、トラック、バスという商用車、公共交通機関ということですね。そこに駐車場の効率化のための限定的な自動運転というものも加わるかもしれません。家族で観光地までワイワイガヤガヤしながら自動運転車に乗っていくというのは今のところ夢に過ぎないと考えても良さそうですね。

【清水】私は公共交通へのサポートがレベル4の一番の「大義」だと思います。テスラはそんな考え方とは違っていて、テキサスのオースチンの工場で完成したクルマをドライバーなしで、数マイルぐらい先のディーラーに納車しています。オースチンに行くと運転手のいるタクシーが珍しいみたいな状態です。

だから日本は随分、遅れていると、受け止められています。でも何度も話していますが、乗用車のレベル4はちょっと考えにくい。すごくコストがかかるからです。カローラが1000万円、2000万円になったら、誰も買いません。

またゲームをしたり、動画を見たりしながら自家用車で移動したい、という人たちのために自動運転車を開発するという「大義」も今のところは少ないと思います。しかしレベル3(高速道路限定)なら乗用車で取り組む意味もあると思います。ドイツではメルセデス・ベンツが高速道路で90Km/hまでレベル3を実装しています。

テスラや中国勢に惑わされてはいけない

――商用車は価格が高くなっても社会的な意味があります。人手不足で困っている物流業者やバス会社、タクシー会社などが運用することでコストアップを吸収できる可能性がある。滞る物流や全国に2500カ所あると言われる交通空白地帯の解消に役立つかもしれません。

【清水】ヤマト運輸さんや佐川急便さんなど運送事業者はトラックメーカーと一緒になって高速道路のレベル4の実証実験をやっています。タクシー業界もレベル4のハードルは低くはないけれど、実現の可能性は見えていて、タクシー業者やソフトバンク、トヨタなどの投資も活発になってきています。

レベル4は運用が大事で、クルマをたくさん稼働しながらコストを下げていくことが大切です。テスラや中国勢の派手なレベル4への動きに惑わされることなく、商用車の分野で一つ一つの課題をクリアし、しっかり開発を進めることが重要だと思います。

清水和夫さんと安井孝之さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
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