いたたまれない思いへと自ら陥る。 「読む前に書け」初参加の記
私の趣味は読書です。ある日ネットで読書会を探していたところ、「読む前に書け」というイベントを見つけました。
その場でランダムに選んだお題で、400字の小説かエッセイを15分間ぴったりで書くという、創作のワークショップです。書いた後は、参加者が順に自作を朗読し、お互いに批評するとのこと。
私は読んでばかりで、そのことになんの後悔もないんですが、ときには出力もしたほうがいいんじゃないかと、参加を申し込んでしまいました。つい出来心で。
ちなみに私の創作歴はまったくのゼロです。そんなのが参加していいのか。まあ時には健康のために、いたたまれない思いをしてみるのもいいでしょう!
たまには体に微量の毒を入れると健康に良いとか、ホルミシスとかホメオパシーとか、いや前提がおかしい、そもそも致死量を超えるかもしれないよね? でもまあいいでしょう! きっとなんとかなる!
しかし実際、いったいどうなってしまうのか!
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当日が来ました。私の経験によれば当日はいつも来てしまうものですが、会場の「犬と街灯」(ZINE中心の品揃えの個人書店)に伺うと、もちろん知らない人しかいません。
時間になると、原稿用紙が配られ、主催の方(安孫子正浩さん、作家、大藪春彦新人賞受賞)が紙の籤を引いて、「今日の1つめのお題は「あくび」です。では今から15分です」
それ以上の説明なし。私は申込フォームに「創作したことないです」と書いたのですが、なんのフリもなし。みんな黙って書き始めました。そう来たか!
私は会場で一言も発していません。ですので私は、上記に書いた以外に何の情報もなく、「あくび」について15分で400字を書いて、さらに喋ったこともない人々の前で朗読するという目に遭うこととなったのです。
何のプレイか。笑う。まあ自分で申し込んだので、この上がないくらい自業自得なんですが。
しかしですね、あくびをテーマにした小説かエッセイ、いきなり書けますか? いや実際、ちょっとチャレンジしてみてくださいませ。
で、私が15分でなんとかひねり出したのが、次の文章です。プレイの一環として披露します。
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「あくびは連鎖する。他人があくびをすると、影響されて自分もあくびをしてしまう。
これは酸欠への警戒ではないか。空気に酸素が少なくなっているかもしれない、そうであるなら先に自分が酸素を確保しておかなければならないという、無意識の、けなげで、いじましいエゴイズムではないか。そもそも他人の行動に影響されるのが気に食わない。
私はこのように考えるようになってしまったがため、他人のあくびを見ても決してあくびをしないように努めている。しかしあくびの影響は存外に強く、あくびに至ってしまうこともしばしばである。この世にまた一つ敗北感の種を生み出してしまった。
電車などで、あくびが連鎖していくことがある。この連鎖を私が止めることができたとき、私は達成感を得ている。やったよ、俺が食い止めたよ、と思っているのである。」
【15分 了】
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さて、15分が経ち、朗読&相互講評が始まりました。お一人目、おそらくベテランの方のようですが、その方に対し安孫子さん曰く、「このように表現した意図は?」
(私の心の声)
いや15分で書くのに、意図なんかないよ! 勘弁してくれよ!
私の番が回ってくるまでの間、相互講評がぜんぜん頭に入ってきません。
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いよいよ私の番です。朗読は、消え入るような声になるんじゃないかと思っていたのですが、大声が出ました。地声がでかくてよかった。模擬裁判の授業の講評で、教官から「声が大きかったのがよかった」とだけ言われた(本当)ことが、まざまざと思い出されます。歴史は繰り返す。今回もなのか?
さすがに初参加ですので、お褒めいただきました。ありがとうございます。ちなみに相互講評で「キャラ設定がよい」と言っていただいたのですが、キャラ設定ではなく、これは私です。
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私の番が済んでからは、やや落ち着いて聞けるようになりました。皆さん、ここの表現が効果的とか、構成が効いているといったようなことが分かるようで、文章に対してとても意識的です。
私はノンフィクションばかり読み、事実を貯めていくような読み方をしているので、面白いな、とは思うのですが、なぜ面白いのかはぜんぜんわからない。うーん、すごい。
具体的な情景が思い浮かぶように書くと効果的、対立構造や段階的拡大など構成が強いと効果的、というのが記憶に刻まれました。
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2つめのお題は「セーター」だったのですが、まったく思いつかず、我ながらしょうもない文章しか書けず、この日の嫌な汗の最高値を記録しました。これが待ち望んだ、いたたまれない思いというものか! いやむしろ、いたたたたたまれない思いだ!
この回は参加者が多かったようで時間がなく、2つめのお題は朗読だけになったので、本当によかった。1つめと2つめのお題が逆だったら、致死量を超えるところだった。
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終了後は中華料理屋で懇親会。皆さんお優しく、また創作の界隈の一端を垣間見ることができて、とても面白かったです。
しかし、いいですよ、たまにはこんな目に遭ってみるのも。
なんというか、新鮮というか、逆に懐かしいといいますか、近ごろ感じていなかった、何をしたらいいのか分からない、雲をつかんで来いみたいな、あの感じですよ!
オチとしては月並みですが、でも心の底から、なんでもやってみるものですね!


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