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たいへんよくできました/Novel by かな子

たいへんよくできました

17,247 character(s)34 mins

ちゅーするつえ/まミ。

・2023エイプリルフールありがとうありがとうありがとうミクデミー軸のつえまミずっとずっとずっとやりたかった!!!!!

・公式の復習ですが司くんとまふゆさんはコーシャスハートクラス、えむさんとミクさんはピュアハートクラスに所属しております。あとは多分覚えてなくてもなんとなく読めるはず……◎

・最初からがっっっつり司えむをやってるし、しっっっかりまふミクもやってる

・2ページ目がまふミク。3ページ目が司えむ

・「入学初日に仲良くなったピュアハートクラスの鳳えむと初音ミク(ここまではある話)は、2人揃って大好きなコーシャスハートクラスの天馬司と朝比奈まふゆにしょっちゅう会いに行っている」というない前提が当然にあるものとして始まっています

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 朝は学校に行く。昼は勉強をする。そして夕方には委員会があったり部活があったり、行事の準備を進めてみたり。学生とは、ミクが想像していたよりずっと忙しないものだった。皆が揃って会いにきてくれた夜という時間は、どれだけ特別なものだったのか。ミクがそれを知るようになってから、もうしばらくが経った。


 いつもと同じ時間に教室に足を踏み入れて、今日の勉強道具が詰まった鞄を机に掛ける。奏と離れて席に座るだけで緊張していたのは、もうだいぶ昔のことだ。一限目が始まるまでまだ余裕があることを確認し、ミクはぐるりと教室を見回してみる。小柄で桃色の頭を探していた。
「あっ……おはよう、えむ」
「わ、ミクちゃん! おはようわんだほーい!」
 えむもちょうど登校してきたようだった。ミクが「わんだほい」と大きく丸を描くえむの両手を真似ると、えむはにっこりと笑顔を見せてくれる。
 でも、あれ? と思った。
 なぜなのか、すぐには分からない。けれどもう何日も同じように朝の挨拶を交わしてきたミクの目には、今日のえむがどこか違うような。いつもじゃない色が映っているような気がした。
 しかし、確証がある訳じゃない。ほんの一瞬の違和感だ。ミクの勘違いだろうか。現にえむは、いつもと同じように自席で鞄の中身の整理を始めた。
「えむ。今日……どこか違うところ、ある?」
「ほえ? 違うところ?」
「あ、ううん。なんでもない……」
 やはり、気のせいだったのかもしれない。きょとんと首を傾げるえむは何も心当たりがなさそうだった。
「じゃあ、えむの準備ができたら……今日もまふゆたちのところ、行く?」
「う! えっと……あ〜……今日は、あたし、ちょっと……」
「えむ、行かないの?」
「……うーん……。うん、今日は〜……あ、そうそう、課題がまだ終わってないものがあったような、なかったような〜っ」
「……えむ……?」
 おかしい……! やはりミクの直感は間違いじゃなかった。今日はのえむは何か違う。いつもならミクを見つけ次第「コーシャスハートクラス、遊びに行こ!」と手を引いてくれるのはえむだったし、たまにこうしてミクから声を掛けてみれば「あたしも行きたいと思ってたの!」とミクより先に教室を飛び出して行ってこそ、えむのはずだ。二人の毎朝の習慣を作り出したのは、他でもないえむなのだ。
 もう一度、まじまじとえむを観察してみる。目が合うと露骨に逸らされた視線を追い、ミクはようやく本当の違和感に気付いた。
「どうしたの、えむ。顔、赤い?」
「ええっ!? 赤い、かな!?」
「何かあったの……? 風邪? 熱が出ると、つらいんでしょう……?」
 いつか、まふゆが熱を出したことがある。頬も額も紅潮し、呼吸が乱れて、声を出すのも苦しそうで、まふゆの身体が無理をしてるのだと一目でわかった。まさか、えむも? ミクがもう一歩近付くと、えむは勢いよく「大丈夫、大丈夫!」とぶんぶん手を振った。
「風邪じゃないない、あたしとっても元気だよ!」
「でも……目もちょっと赤い。寝不足? つらいこと、あったなら……」
「ほんとに平気だよっ! つらいどころか、嬉しくってしょうがないくらいだから!」
「嬉しいの?」
「えへへ〜……うんっ。すごく!」
 そう言ってはにかむ笑顔に嘘はなさそうだ。えむ本人が語る通り、本当に嬉しそうでほっとする。見ているこちらまでえむの明るく弾む気持ちが伝わってくるような気がした。
「そう。なら、よかった。……うん、今日のえむは何だか……今までで一番、にっこりしてる」
「ふぇっ!? そ、そうかな? そんなに……にっこりニコニコしちゃってる……?」
「うん。わたしの目の前にも、えむの『嬉しい』が広がってる。えむにはきっと、いいことがあったんだね。ちゃんと顔を見たら、わかったよ」
 ミクは見えたままを正直に伝える。しかし相槌をくれるえむの声は、不思議とどんどんと小さくなっていくばかりだった。
「えむは、どんな嬉しいことがあったの?」
「えっ? ……あ。えっと〜……」
 ミクが聞くと、えむはまた口籠る。元気で嬉しそうなのは間違いないようだが、やはり今日のえむはいつもと様子が違うみたいだ。いつものえむなら、良いと感じたことはハキハキ大きな声で、両手両足広げて臨場感たっぷりに共有してくるはずなのに。
 どうしようかな、と小さな声で呟いて、えむは脚をぷらぷらと揺らし始める。そわそわした緊張感が、えむのつま先からミクにまで飛んでくるような気がした。
 迷いながらも、えむが「あのね」と口を開く。
「……あたしね。昨日テストでちょっと良い点取れたんだー」
「あ……! うん、覚えてる」


 昨日の、五時限目のことだ。そういえば、先生も教室に入ってきたときからなんだかにこにこしていたように思う。一人一人に答案が返却されていく中、「鳳さん」と呼ばれたえむは走るようにそれを受け取りに行っていた。えむがすぐさま「やったあ〜〜〜〜っ!!」と叫び出し、教室にいるみんなが驚いて振り返る。そして「花丸だ〜〜っ!」と掲げられた答案用紙に大きく『1』『0』『0』が並んでいるものだから、みんなは短い時間に二度もえむに驚かされてしまった。


「えむ、100点満点だったから……みんな、びっくりしてたね」
「えへへー。今回のテスト、司くんと勝負してたから頑張っちゃった!」
「勝負? 球技大会みたいな……」
「うん、良い点とった方が勝ちだよ! 勝った方が、ご褒美もらえるってことにしたの」
「わあ、ごほうび……。いいな。100点なら、勝負はえむの勝ち?」
「そうだよ、えっへん!」
「この前までのえむ、勉強頑張ってた。えらかったね」
「ありがとう! 司くんもね、『えらいじゃないか、すごいな!』って言ってくれて。……だから、昨日は……ご褒美だから〜って思って、ちょっとわがまま言っちゃったんだー」
「えらいから……わがままの、ご褒美?」
 ようやく合点がいく。きっと、今日のえむがいつも以上に幸せそうなのはこのご褒美のおかげだ。
「えむは、何のわがままをしたの?」
 えむといえば、やっぱりショーだろうか。たい焼きも好きだと言っていた。えむが喜ぶこと、なんだろう。
 ここまで話を聞かせてもらったけれど、えむは再び「あー、うー……」と唸りながら両手で口を塞いでしまった。そして今度はえむの首元が、ほんのり赤味を帯びていく。ミクがはっとして声をかけようとしたところで、えむにちょいっと手招きされた。
 小さな小さな声で、ミクちゃん、と呼ばれる。お耳貸して、という指示はかろうじて聞き取ることができた。あのね、と、すぐそばで囁かれる吐息がくすぐったい。

「昨日ね。司くんに、キスしてってお願いしたの」

 人差し指をそっと立てて「内緒だよ」とえむが笑った。




Comments

  • さなぎらす

    May 21, 2023
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