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「あ…まふゆ。来てくれたんだ。」
「うん。お父さんが取引先の人からお菓子を貰ったんだ。私にも1つくれたけど、味、分からないから。」
「そっか…。」
「うん。だからミクに食べて欲しい。」
「ありがとう…。……、……。」
ミクはまふゆの顔を見て、何かを思い出したかの様に、突然思案に暮れ始めた。
「……?ミク?どうかしたの。」
「…まふゆ、少し、しゃがんでほしい。」
「………?良いけど、何を_」
「……ん。どう?まふゆ。あたたかい気持ちに、なった?」
「……………えっ、と。」
冷静沈着、宮益坂の氷の女王と名高い朝比奈まふゆがフリーズするのも無理はない。突然、頬へのファーストキスを、あの幼いミクから奪われたのだから。
「……ミク、こんな事、誰に教えて貰ったの。」
「ルカが、きすは親しい人同士なら皆んなしてるって、あたたかい気持ちになれるって、教えてくれたから…。…まふゆ、もしかして、嫌だった……?」
ミクの不安げな瞳。それは正に、まふゆの凍った心を揺さぶる特攻兵器である。
「……ッ!嫌だった訳じゃない。ただ、少し、驚いただけ。」
「……もう、きすはしないほうがいい…?」
この問いを受けて、まふゆは天を仰いだ。こんな誘惑を振り払う事が出来る人間が、他に居るだろうか?こんなに愛らしい申し出を、断る事なんて出来るだろうか?
いや、出来るはずがない。ルカには後で一言言っておくとして、それはそれとして、これはチャンスだ。
「……私も、あたたかい気持ちになった、と、思う。……だから、またしてくれると、嬉しい。」
「………!うん………!」
翌日、妙な距離感でイチャつく2人を、怪訝な表情で見つめる絵描きの少女の姿があった。
彼女曰く、湖畔のそれは、至高のミューズであった。
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