外ネコ治療の獣医師が感染症で死亡 求められる「室内飼育の徹底」
【ニュートンから】外ネコを取り巻く問題(4)
外ネコは野生動物を捕食するだけでなく,さまざまな感染症を媒介する。なかでも外ネコの影響が大きいのが,トキソプラズマ症とSFTS(重症熱性血小板減少症候群)だ。これらの感染症は,ヒトを含む複数種の動物にも感染することから「人獣共通感染症」とよばれている。
トキソプラズマ症は,トキソプラズマ原虫という単細胞の寄生虫による感染症だ。トキソプラズマ症は最もありふれた寄生虫感染症の一つであり,世界では30~50%,日本では約10%のヒトが感染しているといわれている。トキソプラズマ原虫に感染しても,健康な大人の場合は症状が自覚されないか軽い発熱にとどまる。しかし臓器移植後やエイズ患者などのように免疫が抑制されている場合は,トキソプラズマ原虫が脳や全身の筋肉で増殖して死に至ることがある。
ネズミ対策の外ネコが広げる感染症
トキソプラズマ原虫は“脳をあやつる寄生虫”ともよばれる。ネズミに感染したトキソプラズマ原虫は,ネズミの脳内にすみつく。健康なネズミはネコの尿のにおいをさけるが,トキソプラズマ原虫が感染したネズミはネコの尿のにおいに引き寄せられる。ネズミがネコに積極的に食べられることで,トキソプラズマ原虫は繁殖しやすくなるのだ。このように,トキソプラズマ原虫が動物の脳にすみつくと,動物の精神状態や行動が変化するといわれている。ヒトでも,トキソプラズマ原虫に感染すると統合失調症や双極性障害,うつ病などの精神疾患の発症リスクが高まることがわかっている。
トキソプラズマ原虫は,ネコ科動物の体内でのみ雄と雌が交配する「有性生殖」を行う。トキソプラズマ原虫の感染は,感染したネコの糞で汚染された土壌で収穫された野菜をよく洗わずに食べたり,感染した動物の肉を加熱が不十分な状態で食べたりすることでおきる。沖縄大学で客員教授を務める山田文雄博士は次のように話す。「妊婦が初感染すると胎児にトキソプラズマ原虫が移り,視力障害や流産・死産などを引きおこす『先天性トキソプラズマ症』を発症することがあります。先天性トキソプラズマ症などの患者家族によって設立された『トーチの会』は,ネコを放し飼いしないように訴えています」。
野生動物がトキソプラズマ原…
- 【視点】
トキソプラズマが「ネズミの脳を操る」というSF映画のような現象が、現実の生態系で起きていることに驚きました。また、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の致死率が猫で6割、人間でも3割近いという数字は、単なる「外遊び」で済ませられるレベルではない恐怖を感じます。記事の最後にある「悪いのは猫ではなく、その状況を作り出している人間」という山田博士の言葉。猫好きの一人として重みがありました。猫を愛しているからこそ、バイ菌扱いされないように守る義務が私たち飼い主にあるのだと、改めて考えさせられる内容でした。
…続きを読む - 【視点】
「ワンヘルス」は、環境問題と感染症とをセットで捉える重要な考え方だ。ネコの生態や行動はネコだけの問題ではなく、ヒトを含めたあらゆる生物の健康や活動に関わっている。今のイエネコはヒトの家畜としての生活形態に適応しきっており、屋外での生活に適し
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