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PLC×生成AI、各社の到達点。2026年の開発状況から定義する「勝ち残る制御エンジニア」の条件
「生成AIでラダーが書けたら、どれだけ楽だろうか」
制御エンジニアなら一度はそう考えたことがあるはずです。
しかし同時に、こうも思うのではないでしょうか?
「もしそれが実現したら、自分たちの仕事はなくなるのでは?」と。
先日、大変僭越ながら、ある大手メーカー様よりお声がけいただき、開発中の「最新の生成AI×PLC開発ツール」について意見交換させていただく機会を頂戴しました。
私の現場経験が少しでも開発の一助になればと、恐縮ながら率直なフィードバックをさせていただきました。
守秘義務があるため詳細は明かせませんが、その「開発の最前線」で得た一次情報を含めて、今回は2026年時点での各PLCメーカーの状況と、今後の制御エンジニアがどう立ち回るべきか。
20年大手メーカーでPLCに携わり続けている、私の見解を整理します。
【結論:AIで「書く」ことはできるが、「責任」は取れない】
まず結論から申し上げます。
ご承知の通り、生成AIでラダーを出力できるようになりました。
つまり「書く」ことは可能です。
しかし、「そのまま現場に導入し、安全に稼働させられるラダー」を、AIに全権委任できる段階かと言えば、まだ困難です。
ツールは進化していますが、それを使いこなの前提知識や判断基準がなけ
実際、大手メーカーの設備開発部門では、ページ数にして1000ページにも及ぶPLCソフト設計基準が存在します。
これにはコーディング規約だけでなく、安全対策、異常復帰手順、ログ取得、保守性が網羅されています。
さらに、何重にも重ねられたDR(デザインレビュー)を通過しなければなりません。
AIが一般的なラダーコードを書けたとしても、これら独自の「厳格な社内標準」を遵守しつつ、実機のリスクアセスメントに耐えうる品質に落とし込む作業は、全く別の工程だからです
つまり、仕様が明確で、I/O(入出力)やインターロック条件が言語化されていれば、回路案は迅速に出てきます。
しかし、仕様が曖昧な場合や、現場特有の暗黙知(「停止時の安全挙動の慣例」など)が含まれる場合、AIの出力は「一見正しそうだが、現場では危険なコード」になる傾向があります。

【3D CADシミュレーションに見る「採算の壁」】
このAIの現状におけるもどかしさは、例えば、「3D CAD連携シミュレーション」に非常に似ています。
3D図面とPLCソフトを連携させて、仮想空間で設備の動作確認を行う。
この機能自体はかなり便利です。しかし現実はどうでしょうか。
設定があまりに複雑で、シミュレーション環境を構築するだけで、PLCソフトを設計するのと同じくらいの工数がかかってしまうのが現実です。
「できれば便利だが、準備にとんでもなく時間がかかり、採算が合わない」
長期的に見れば中間システムを開発するメーカーの技術進歩に期待したいところですが、現時点ではコストが見合わないのが実情です。
生成AIによる自動生成も、今のところはこれと同じフェーズにあります。
【各PLCメーカーの生成AI活用したツール開発状況について】
公式発表が出る度に、目を通すのは、現場で実用出来そうか?
という一点のみです。
私が調査した範囲での、2026年時点の主要メーカーの動向も、この「実用の壁」をどう超えるかに注力しています。
【三菱電機】
昨年の「IIFES 2025」にて、自然言語や仕様書からラダープログラムやフローチャートを生成する開発中ツールを公開しました。
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特筆すべきは、「構造化されていない過去のラダー資産」への対応です。
ラダー言語はテキストではなく「図形的な回路」であり、古いプログラムほど機能ごとに分割されていない(スパゲッティコード化している)ため、AI学習の正解データになりにくいという壁がありました。
三菱はこの壁に対し、AIがプログラムの意味を解釈し、必要な機能を抽出・修正する技術を投入しています。
「非定型な過去のプログラムからも、実用レベルのコードを生成できる」という感触を得ており、熟練工の引退に伴うレガシー資産の継承とモジュール化に主眼を置いています。
さらに同社は、このAIツールのリリースを「2026年度中」と公式発表しています。
標準エンジニアリングツールであるGX Worksへの実装が濃厚であり、日常業務に直結する形での提供となるでしょう。
どのような操作感になるのか、私も非常に楽しみにしています。
【オムロン】
ここが現時点で最新のトピックです。
2025年12月、オムロンはAI開発企業の(ラボロエーアイ)との連携により、「PLC向け設計コード生成AI」の開発支援を発表しました。
これは自然言語(チャット)で指示を出すと、必要なマニュアルや仕様を参照し、コードサンプルを生成してくれる技術です。
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従来の「シミュレーション」から一歩進み、いよいよ「コード生成」の領域に公式に踏み込んできました。
熟練者の不足を補う「強力なドラフト作成ツール」として、実用化への期待が高まっていますし、ことSNS界隈には不人気なので、個人的には巻き返してほしい想いです。
【キーエンス】
みんな大好きキーエンス。
ことPLCにおいてはまだ特にリリースはありません。
現在、KV-STUDIO内での生成AIアシスタント(技術問い合わせ支援)を展開していますが、ラダー自動生成が公式機能として実装されたという一次情報は確認できていません。
ただし、同社は画像処理システム等の分野では、既に「AI画像検査」を標準実装し、現場で圧倒的な成果を出しています。
※元キーエンス社長のVRAINなども商材はAI画像検査ですし。。
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AI技術の蓄積は十分にあるため、PLCへの本格導入も時間の問題でしょう。 中途半端なものは出さず、出す時は「使える」状態で出してくるメーカーですので、どのような完成度で登場するのか、私自身、非常に楽しみに待っています。
【結論:自分で仕様書を読み、ソフトを組んで動かすべし】
大手メーカーとの意見交換を通じて、改めて再認識したことがあります。
制御エンジニアの業務フローは、「アナログな経験則」でアタリを付け、「デジタルな論理」で検証する。
結局はこの繰り返しではないでしょうか。
「こう動いたら壊れそうだな」
「こういう制御ならうまくいきそうだな」
この初期衝動や違和感は、経験則に基づくアナログな領域です。
ここからスタートし、その感覚を検証するために0と1のデジタルで論理を組み上げ、担保していく。
AIは0と1の処理は高速ですが、最初の「壊れそう」という物理的な痛みや予感を持ち合わせていません。
だからこそ、AIが出したラダー案を、現場の現実に合わせて修正し、責任を持って実機に流し込む「ラストワンマイルの調整」には、人間の感覚が不可欠なのです。
【2026年の立ち回り:1年後からの逆算】
以上の状況から導き出される、我々エンジニアの立ち回りはシンプルです。
AIで代替できる部分は任せればいい。
そうすれば本質的にやるべきことが増えてきます。
その時、「本当に自分にしかできないことは何なのか」を問うことです。
「AIが来るから今は適当でいい」と考えている層は淘汰され、地力のある制御技術者だけが残っていく。
希少性も増すため、「ブルーカラービリオネア」などとトレンドを持った言葉もありますが、本物の技術者はより高給取りになっていくでしょう。
まずは目の前の設備、ものづくりに全力で注力し、一次情報に触れ続けること。
そして、「こういうことができる時代が来る」という未来から逆算し、今やるべき準備を進めておくこと。
AIという工具の性能が上がるからこそ、それを使う人間の「現場の手触り感」が勝敗を分けます。
今のうちからPLCの習得に全力でリソースを配分しておくこと。
これが勝ち残るための最適解であると断言します。
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