「日本はカモにされていた」Metaがいかにして日本政府を欺いていたのか、その「工作」を明らかにする【プラットフォーマーに問う①】
終わりの見えない「なりすまし詐欺広告」の洪水。前澤友作氏や堀江貴文氏、森永卓郎氏といった著名人の写真が無断で使用され、架空の投資話に誘導される被害が後を絶たない。被害者本人が声を上げ、政府がプラットフォーム事業者に要請を行っても、状況は一向に改善しない。
そんな中、詐欺の舞台の一つFacebookを運営するMetaが意図的に対策を怠っていたのではないかという調査報道スクープをロイターが報じた。取材したのはジェフ・ホーウィッツ記者。
今回、スローニュースは彼に独占インタビューを行った。日本の規制当局がMetaの手玉に取られた経緯と、その結果として日本市場が世界の詐欺集団にとっての「無防備なATM」と化してしまったという、衝撃的な話を明かした。
日本政府はこの事態にどう向き合うのか、プラットフォーマーの責任は。独自の取材を加えて新シリーズ「プラットフォーマーに問う」をお伝えする。
石井大智
詐欺を減らす方法を知っていたのに動かなかったMetaの戦略とは
2025年12月31日、ロイター通信は衝撃的なスクープを報じた。
「Meta created ‘playbook’ to fend off pressure to crack down on scammers, documents show」というタイトルの記事で、日本語に訳すと「Metaは詐欺集団への取り締まり圧力かわすための『プレイブック』を作成していた」となるだろうか。
この記事は、同社で調査報道を担うジェフ・ホーウィッツ記者が入手した膨大な内部資料に基づくものだ。Metaが世界各国の規制当局からの追及をかわすための冷徹な戦略と、あろうことか日本がその「実験場」として利用された事実が克明に記されていた。
「Meta内には、詐欺広告を減らすための決定的な答えがすでに存在していました。それは『全広告主の本人確認(ユニバーサル・ベリフィケーション)』です」
ジェフ記者はそう切り出した。彼が入手した過去4年間にわたる内部文書——財務、法務、公共政策、安全対策チームなどが作成した資料——によると、Meta自身、すべての広告主に対して厳格な身元確認(本人確認書類の提出など)を義務付ければ、詐欺活動を劇的に減らせることを認識していた。文書には、その気になれば運営するどの国でも6週間以内にこの措置を導入可能であることまで記されていた。
しかし、Metaはその実行を拒否したようだ。
理由はシンプルだ。「コスト」である。
内部の試算によれば、全広告主の認証システムの導入と維持には約20億ドル(約3000億円)の費用がかかる。さらに、身元を明かしたくない、あるいは手続きを嫌がる広告主をブロックすることで、広告収入全体の最大4.8%を失う可能性があると見積もられていた。
2024年のMetaの売上が1645億ドル(約24兆円)に達し、そのほとんどが広告収入であることを考えれば、彼らにとってこの「減収」は受け入れがたいものだった。
そこでMetaが策定したのが、「Reactive Only(事後的対応)」と呼ばれる戦略だ。これは、法律で強制されない限り、自発的な全広告主の本人確認は行わないという方針である。
「Metaは規制当局が本気で取り締まりにくると感じた時だけ動く。それが彼らの『プレイブック(戦略手順書)』なのです」とジェフ記者は語る。そして2024年頃、日本の規制当局がこの問題に対して懸念を強め、規制強化の動きを見せ始めた際、Metaはこのプレイブックに基づく、ある巧妙な「工作」を日本で実行に移したという。
日本政府を欺いた「洗浄」工作
日本の規制当局やメディアは、FacebookやInstagram上の詐欺広告の蔓延に苛立ちを募らせてきた。
Metaは、日本政府がシンガポールや台湾のように「広告主の本人確認義務化」へ舵を切ることを強く警戒した。それを阻止するために彼らが実行したのは、プラットフォーム上の詐欺を根絶することではなく、「監視されている場所だけを綺麗に見せる」という、極めて欺瞞的な工作だった。
ここから先は会員限定です。Metaはどのようにして日本の規制当局を欺いたのか、その工作の詳細を明らかにします。さらにはMetaは日本での「成功体験」を世界でも利用したのです。
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