「国鉄にいなかったタイプ」後進には唐池恒二氏…小売り出向や飲食店創業の経歴、事業多角化を意識し人選
JR九州名誉顧問・石原進さん
JR九州の社長や会長を歴任した石原進さん(80)は、今年3月に15周年を迎える九州新幹線鹿児島ルートの全線開業や博多駅ビル建て替えに向けてかじを取った。九州にゆかりはなかったが、置かれた場所で花を咲かせようと根を下ろして約40年、地域の発展のために奮闘してきた。思いは今なお衰えず、未来を語る瞳には力強さが宿る。 【写真】唐池恒二氏
九州新幹線鹿児島ルートの全線開業まで2年に迫った2009年4月1日、福岡市の本社内に「新幹線全線開業準備室」を設置し、発足式では「開業を心待ちにしている人も多い。頑張ってほしい」と発破をかけた。7年間にわたって務めた社長を後進に譲り、会長に退いたのはそれから約2か月後のことだ。
駅ビルは既に核テナントも決まって着工済み。11年3月を目指す鹿児島ルート全線開業とほぼ同時にビルを開業する方針も固まっていた。ラストスパートを託した新社長は、小売り大手の丸井に出向した経験を持ち、グループで飲食店「うまや」を創業するなど異色の経歴を持つ唐池恒二氏(現相談役)。駅ビルや飲食店など、事業多角化を意識しての人選だった。
映画好きで飲食店のデザインなどにも造詣が深い唐池氏については「国鉄にはあまりいなかったタイプで発想がおもしろい」と評価していた。実際、唐池氏は新駅ビル最上層の9、10階を九州最大級の飲食店街「くうてん」とするなど、意表を突く集客策で開業後のにぎわいを生み出してみせた。
新ビルの名称は「JR博多シティ」に決まり、核テナントの博多阪急やJR九州グループが直接、運営する専門店街「アミュプラザ博多」も入って11年3月2日のプレオープンで実質的に開業した。朝から約5000人が行列を作る姿には「JR九州の新しい顔ができた」と、感激がこみ上げた。
九州新幹線の全線開業はその10日後の3月12日。前日に東日本大震災が発生し、次々に被害の状況が明らかになる中、若手時代を過ごした東北地方の惨状に心を痛めた。それでも、これまでまい進してきた全線開業には胸が熱くなる思いだった。