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米国トランプ大統領は、自由奔放な発言をして相手を攪乱させる手法をとっている。「G2」発言もその一つである。これまでの歴代米国大統領は、G2が意味する「米中二大国論」を否定してきた。だが、トランプ氏はいとも簡単にこれを口にした。これを受けて早速、米国は二大国で世界を共同管理するつもりという議論が登場した。「米国は、中国を倒すのではなく協力することで強くなる」とする見方が出てきたのだ。

 

だが、トランプ氏の「ドンロー主義」は、米中協力論と真反対な「中国弱体化」が狙いという見解が強まっている。それは、今回発表された国防総省の「国家防衛戦略(NDS)」において明確に打出された。米国は、中国と対峙するのでなく抑止力として立ち向かうとしているからだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月27日付)は、「トランプ氏の『ドンロー主義』、真の狙いは中国弱体化 周囲で構想浮上」と題する記事を掲載した。

トランプ米大統領が2026年から始めた対外政策は、中国の弱体化を狙いにするとの構想がトランプ氏の周囲で浮上した。ベネズエラやデンマーク領グリーンランド、イラン、キューバなどに力の行使を振りかざすのは中国の力を封じ込め、米国が優位な立場にたつためだとする。

 

(1)「トランプ氏は自身の名前の「ドナルド」と南北アメリカ大陸を含む西半球から敵対勢力を排除する19世紀のモンロー主義を掛け合わせて「ドンロー・ドクトリン(ドンロー主義)」を提唱する。25年末に国家安全保障戦略(NSS)で、この概念を公表した。26年から、ベネズエラ攻撃やキューバなどへの積極的な介入姿勢で具体的な行動に移している。トランプ氏は22日、「ドンロー・ドクトリン、稼働」と題するリポートを自身のSNSから投稿した。このリポートは、3日のベネズエラ攻撃の直後、政権と密接な関係にある保守系シンクタンク、クレアモントのホームページで掲載されたものだ」

 

トランプ氏の基本的外交政策は、ロシアを取込むことにある。米ロで中国へ対抗するというものだ。米国にとって、最終的な標的が中国であることは間違いない。

 

(2)「ベネズエラ攻撃は、イラン、キューバとドミノ倒しのように反米国家を親米に塗り替えて、中国の世界戦略を切り崩す号砲との位置づけにあると説明する。「トランプ氏がその場しのぎではない戦略に基づいて動いていると、時がたてば明らかになる」と書いた。中国の原油輸入に占めるベネズエラとイランの割合は偽装船籍も含めると3割あると推計し、中東諸国と合計すると7割に達するとみる。トランプ氏が関係強化に動く中東諸国も含めて、中国の急所を押さえる青写真だという」

 

米国が、ベネズエラを急襲したことは、中国の勢力を追い払うことにあった。ベネズエラの急襲に成功したことは、米国に自信を与えている。中国が、何らの反応もみせなかったからだ。「中国弱し」と踏んでいる。

 

(3)「第1次政権で首席戦略官を務め、今でもトランプ氏と関係が近いスティーブ・バノン氏も17日、ドンロー主義は対中戦略が真の狙いとの解説を披露した。北極圏は米中が争う重要な軍事的要衝と指摘し、グリーンランドを含めた西半球から中国を排除して、中国の力を弱める重要性を説いた」

 

習近平氏は、中国人民解放軍幹部の粛清に躍起となっている。現状では、米国と戦える状況にないのだ。米国は、これを好機とみて矢継ぎ早に中国勢力のそぎ落としにかかっている。

 

(4)「『ドンロー・ドクトリン、稼働』のリポートを執筆した軍事専門家、マイケル・ウォーラー氏は、日本経済新聞の取材に「トランプ氏が描く国家安全保障戦略は、本質的には共産主義・中国の世界支配を封じ込めることを目的としている」と語った。「『トランプ氏が中国やロシアと世界の勢力圏を分割する構想を持っている』と誤って想定している人がいるが、実際のトランプ氏の構想とは違う」と唱えた」

 

トランプ氏が発言した「G2論」は、中国をおだてた外交辞令と読むべきだ。本心は、中国に経済的な対抗策を打出させないための煙幕であろう。

 

(5)「また、「欧州の同盟国には欧州での責任を、アジアの同盟国にはアジアの責任を主に負ってもらう。米国は主に米州での責任を担うが、自国防衛にあたる同盟国への支援は継続する」と話した。政権内にはルビオ米国務長官ら、もともとは筋金入りの対中強硬派と目されてきた人物がいる。中国との良好な関係を重視すべきだとの勢力もいるが、ベネズエラ攻撃を主導して成功させたルビオ氏のホワイトハウスでの影響力が強まっている可能性もある」

 

トランプ氏は、自ら手を下さないでも中国やロシアを封じ込めるために、EU(欧州連合)を対ロシアへ。中国へは、米国・日本・豪州などで対抗する陣形を整えている。米国の対中戦略は、中国への抑止力を働かせて中国の台湾侵攻を思いとどまらせることにある。

 

(5)「トランプ氏本人は、中国への批判をかたくなに避けている。今年、習近平国家主席と少なくとも2度の会談に臨む予定で、トランプ氏は経済的なディール取引)の実現に強い関心があるとみられる。米ジョンズ・ホプキンス大のハル・ブランズ教授は「政権内に米中が戦略的競争関係にあり、戦略的な勝利を追求すべきだと考える人がいるのは確かだが、トランプ氏がそうした観点で考えているとは私には思えない」と指摘した。「今年は、米中関係を安定した基調で保ち、レアアース(希土類)を巡る経済的な脆弱性に対処し、中国との交渉での多くの材料を構築することに注力するだろう」と分析する」

 

トランプ氏本人が、中国への批判をしないのは戦略である。中国が、レアアースなどで輸出禁止策に出ないように注意している結果だ。まさに、ビジネス出身政治家の典型例であろう。