生成AIやAIの進化が著しい。数カ月単位で性能が向上し、そのスピードゆえに「3年の中期経営計画はもはやリスクそのもの」との指摘もあるほどだ。
「最初の一歩が無ければ、二歩目、三歩目はない」
ただ、日本企業の生成AIへの取り組みは十分といえるだろうか。総務省の令和7年版情報通信白書(2025年7月)によれば、「企業における業務での生成AI利用率(国別)」は、日本の55.2%に対し、米国90.6%、中国95.8%。一方、「生成AI導入に際しての懸念事項(国別)」では、日本は「効果的な活用方法が分からない」が30.1%と多く、これに対して米国は9.7%、中国は10.4%と少ない。
また、「生成AIの活用による効果・影響(国別)」を見ると、日本は「業務効率化や人員不足の解消につながる」32.8%が最も多い。一方、米国は「ビジネスの拡大や新たな顧客獲得につながる」50.2%、中国は「斬新なアイデア/新たなイノベーションが拡大する」45.0%でそれぞれ最多となっている。
日本では社外への情報漏えいなどセキュリティリスクが心配されるが、米国や中国ではそうしたネガティブな面よりも新たな顧客獲得やイノベーションの実現といったポジティブな面に注目する傾向が強く、日本と米中の間には大きな違いが見られるのは興味深い。
リクルートのリクルートワークス研究所 研究員の武藤久美子氏は、生成AIを活用するイノベーター系の人たちにヒアリングした経験から次のように指摘する。
「最初に生成AIを使うのは、新しいもの好きの人たちか、会社から利用しなさいと言われた人たち。こうした人たちは、使ってみたらこういうこともできた、だったら別の使い方もできるかもしれないと次々にアイデアが浮かんでくる。最初の一歩を踏み出さなければ、二歩目、三歩目はない。失敗しても別の方法を試してみればよく、それを高速で繰り返していくことが大切だ」
武藤氏は生成AIが組織人事に与える影響を考える第一歩として「マネジャーの役割」に注目し、2024年12月から2025年2月まで「生成AIが変えるマネジャーの役割 研究会」を企画・運営した。
マネジャーに注目した理由は3つ。1つ目は組織変化の最前線にいること。業務改革やメンバーとの日常的なコミュニケーションに直接携わるマネジャーの役割変化を追えば、生成AIによって今後重要性が増すこと、不要になること、新たに生まれるものが見えやすくなる。
2つ目はマネジャーの成り手不足を解消できる可能性があること。メンバーの労働時間削減のしわ寄せ、コンプライアンス対応などマネジャー業務は増える傾向にあるが、生成AIの力を借りれば、マネジャーは業務負担を軽減し、より仕事の成果やメンバーとの豊かな関係を生み出す役割や業務に注力できるかもしれない。
そして3つ目が従来のマネジャー研究を再考すること。デジタル時代には、新しいマネジャー像やマネジャー理論があってしかるべき。技術や事業が進化しても、十分に変わったとは言いがたいという問題意識があった。