最初に起きるのは「小さなズレ」

第6章:もしこの賭けに失敗したら、何が起きるのか

JT型国家からアマゾン型国家への転換は、成功すれば日本経済を軽くし、国債の信用を強化する。しかし第5章で見た通り、この転換は同時に、失敗すれば最も危うい道でもある。では、もしこの賭けがうまくいかなかった場合、国債の信用はどのように揺らぎ、何が起きるのか。

多くの人は「国債格下げ」と聞くと、ある日突然、金利が暴騰し、円が崩れ、経済が混乱する光景を思い浮かべるかもしれない。しかし、現実はもっと静かで、段階的だ。国債リスクは事件としてではなく、連鎖として進行する。

最初に起きるのは、成長と支出の間に生じる小さなズレである。積極財政によって国債発行は増えるが、期待されたほど成長率が上がらない。AIや人的資本への投資と説明されていた支出が、実際には補助金や給付として消えていく。税収は予想ほど伸びず、それでも財政支出は構造的に減らせない。この段階では、危機感はまだ共有されない。「想定より少し弱い」「一時的な要因だ」という説明で片付けられる。

信用の値段が静かに調整される

だが市場は、こうした変化を敏感に感じ取る。ここで重要なのは、市場がパニックを起こすわけではないという点だ。違和感は、まず価格に反映される。国債入札で、以前よりわずかに高い利回りが求められるようになり、長期金利がじわじわと上昇する。新聞の見出しになるほどの動きではないが、信用の値段が静かに調整され始める。

この段階でも、日本はすぐに困窮するわけではない。国債の平均残存期間は長く、既発債の低金利が利払い負担を緩和している。しかし、新たに発行される国債は、少しずつ高い金利で置き換わっていく。その結果、利払い費は年々増え、予算の中で自由に使える余地を静かに削っていく。企業で言えば、売上が伸びない中で借入金利だけが上がり、投資余力が徐々に奪われていく状態に近い。

国会議事堂
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