日本銀行は1月8日、支店長会議を開いて地域経済報告(さくらリポート)を公表した。実体経済を勘案した場合の利上げの判断はどうなるか。

 今回の報告では、景気の総括判断は全9地域で前回(2025年10月)から据え置き、一部に弱めの動きもみられるが、全ての地域で景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」とした。企業の旺盛なAI(人工知能)関連需要をけん引役に底堅く推移し、幅広いエリア・業種で設備投資に前向きの報告が支店長からなされた。

 雇用・所得環境については、東北と九州・沖縄が「改善している」、北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国は「緩やかに改善している」とされている。

 これは一体どこを見ているのか。各地域の有効求人倍率を9月から11月まで推移を記すと、北海道▲0・02、東北▲0・01、関東甲信越▲0・01、北陸▲0・05、東海▲0・02、近畿▲0・03、中国▲0・04、四国▲0・04、九州・沖縄▲0・03と軒並み悪化している。

 6月から11月まででも、それぞれ▲0・04、▲0・07、▲0・05、▲0・02、▲0・02、▲0・05、▲0・06、▲0・05、▲0・07と悪化傾向は変わらない。

 これで、全ての地域で雇用が改善しているとは、どのように判断しているのだろうか。統計数字を無視した感想にすぎない報告であると言われても仕方ないだろう。

 ちなみに、植田和男総裁が就任以降、日銀政策金利と半年後の有効求人倍率の相関係数はマイナス0・87となっている。これは利上げするたびに雇用が悪化していることを示している。本コラムで既に指摘したが、植田金融政策は高市財政に冷や水を浴びせている。

 2026年度の賃上げスタンスについても、高水準だった「前年(25年度)並み」を意識する経営者の声が多数を占めた。支店長会議では、AI関連製品を中心とした世界的な需要増を受け、輸出企業を含む製造業で堅調な受注を見込む前向きな意見が報告された。

 確かに、円安なので輸出企業ではそうした声があるだろうが、輸入企業、その他も含めてみれば、違う意見もあったはずだ。日銀のさくらリポートは偏っていると言わざるを得ない。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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