青山透子
青山 透子(あおやま とうこ)は、日本航空123便墜落事故を題材とするノンフィクション作家[1]。元日本航空の客室乗務員[1]。
来歴
[編集]宮城県出身。高校在学中に全国学芸コンクール、戯曲・シナリオ部門第一席、社団法人日本民間放送連盟会長賞受賞歴を持つ。1982年JALに客室乗務員として入社。その後、JAL客室訓練部のノウハウをもとに関連会社のJALアカデミー講師となる。全国の官公庁、各種企業、病院等の接遇教育インストラクターを経て、専門学校、大学講師。1990年大阪国際花と緑の博覧会、2005年愛知万博の日本館で教育担当[2]。
この間、JAL123便事故から20数年後に先輩たちとの思い出話を綴る際、事故当時の新聞記事を読む。それまでは「後部圧力隔壁破壊」が事故原因と思い込んでいたが、航空事故調査委員会の調査に疑問を持ち始め、当該事故の資料や日本および米国公文書を調査し、それらをもとに著作活動に入る。
東京大学大学院新領域創成科学研究科在学中の2014年5月20日、三重県名張市で開催されたモンキードッグ記念講演会で『モンキードッグ活動による野生サル追い払いの成果と課題』の演題で講演。視察に訪れていた安倍昭恵ファーストレディー(当時)から「動物と共存する取組みを総理にも報告したいです」と高い評価を受ける[3]。同年12月には2014年度冬季棚田学会で研究発表[4]し、モンキードッグ (猿追い犬) [注釈 1]研究者として活躍[7]。
博士論文は「野生鳥獣被害対策における住民参加型実践アプローチの手面的効果と課題:野生サル追い払い犬事業の評価から」。共同研究者兼主査・指導教授は山路永司 [8]。
2017年に『日航123便墜落の新事実:目撃証言から真相に迫る』が10万部のベストセラーとなり、本屋大賞ノンフィクション部門で最終選考候補となる。『日航123便墜落 遺物は真相を語る』(2018年)、『日航123便 墜落の波紋:そして法廷へ』(2019年)とともに、3年連続全国学校図書館協議会選定図書に選定される[注釈 2]。
2019年7月16日に早稲田大学で行われたシンポジウム「情報公開と知る権利--今こそ日航123便の公文書を問う」で、弁護士の三宅弘、獨協大学教授の森永卓郎とともに講演した[10]。
事故遺族の吉備素子が会長を務める「日航123便墜落の真相を明らかにする会」(以下「真相を明らかにする会」)では事務局を担当する[1][11]。
2021年3月26日に前出「真相を明らかにする会」会長と123便副操縦士の遺族は、ボイスレコーダーとフライトレコーダーのデータ開示を求めて東京地方裁判所へ提訴したが、2022年10月13日に東京地裁は請求を棄却した[12]。2023年2月18日の訴訟報告会と講演会で、弁護団の三宅弘が経過報告を、青山は講演を行った[13]。会は経緯をウェブサイトで公表している[14]。
論調
[編集]- 事故の1985年8月12日に88式地対艦ミサイルの射撃実験は予定もなく、対艦ミサイルで艦船よりも速く移動する航空機を追尾することは不可能、など多くの矛盾点が指摘されている[15]。また、軍事ジャーナリストの黒井文太郎は「もし自衛隊のミサイルが撃ち落していたのであれば、指示を出した人や実行した人全てに箝口令を敷き、且つ痕跡も完璧に消し去らなければならない。そんなことは不可能です」[15]と語っている。
- 事故の520遺体は旅客機事故であり得ない焼損状態で、一般人は入手不能な武器燃料で焼かれた、との可能性を主張する。
- 事故当時、日本航空の労働組合で役員を務めていた、航空評論家の秀島一生はJAL123便事故の調査報告書について「正確ではないのではないかとの疑念を抱いていますが、それにしてもこの本は話が飛躍し過ぎています。自衛隊のミサイルが機体に当たった根拠が全く示されていませんし、遺体の焼け方が激しかった例としては72年のJALニューデリー墜落事故が挙げられ、123便に限った話ではありません。事故原因の真相解明を求める声が、この本のような陰謀論と一緒くたにされてしまいかねず、非常に困ります」[15]と語っている。
- 公式記録に存在しない、ファントム2機がJAL機を追尾していたという目撃証言
- 静岡県藤枝市上空を18時35分頃、群馬県吾妻郡上空を18時40分頃にファントム2機が通過したという目撃情報から、墜落前に航空自衛隊ではJAL機を追尾して飛行状況を確認し、墜落するその時までしっかりと見ていたと主張している。しかし、これらの地域の直線距離は約200kmであり、5分で飛行したとなると速度は1.96マッハ (2,401.09 km/h)にのぼり、離陸から加速までの時間を考慮すると、それ以上の速度が必要となる。超音速飛行には様々な制約があるうえに、目視できる高度でこの速度に達すればソニックブームによる影響で地上の家屋で被害が出たり、爆音によって目撃者が多くいたはずだと指摘されている[16]。
その他、地理的に不可能な群馬県上野村からとされる目撃情報など、客観的論証や物理的根拠の裏付けがない伝聞に依拠する記述がある[注釈 3]。
なお、上野村からの目撃情報を検証するべく週刊文春が情報の提供を求めたが、拒否している。
著書
[編集]- 『天空の星たちへ:日航123便 あの日の記憶』2010年4月29日、マガジンランド ISBN 4-94410-190-2
- 『日航123便 墜落の新事実:目撃証言から真相に迫る』2017年7月30日、河出書房新社 ISBN 978-4-309-02594-0 - 全国学校図書館協議会選定図書
- 『日航123便墜落 疑惑のはじまり:天空の星たちへ』2018年5月28日、河出書房新社 ISBN 978-4-309-02702-9
- 『日航123便墜落 遺物は真相を語る』2018年7月21日、河出書房新社 ISBN 978-4-309-02711-1 - 全国学校図書館協議会選定図書
- 『日航123便 墜落の波紋:そして法廷へ』2019年7月12日、河出書房新社 ISBN 978-4-309-02812-5 - 全国学校図書館協議会選定図書
- 『日航123便墜落:圧力隔壁説をくつがえす』2020年7月21日、河出書房新社 ISBN 978-4-309-02906-1
- 『日航123便墜落事件 JAL裁判』2022年12月2日、河出書房新社 ISBN 978-4-309-03052-4
- 『日航123便墜落事件 隠された遺体』2024年8月13日、河出書房新社 ISBN 978-4-309-03202-3
監修
[編集]- 『マンガ 誰も書かない「真実」:日航123便はなぜ墜落したのか』森永卓郎:著, 青山透子:監修, 前山三都里:マンガ、宝島社、2024年7月
著作に関する議論
[編集]2025年4月10日、参議院外交防衛委員会で質問に立った佐藤正久議員は、青山の書籍を要約して読み上げ、政府に事故と著作に関する認識を求めた。これに対して高橋克法国土交通副大臣が、事故の調査報告書に基づき「事故原因については、後部圧力隔壁の不適切な修理に起因し、後部圧力隔壁が損壊したこと」と回答。続いて中谷元防衛大臣が「自衛隊が墜落に関与したということは断じてない」、「このようなことは偽情報である」として青山の著作の内容を否定した[18][19]。
これに対し2025年5月2日、青山は産経新聞に以下の反論を投稿している[20]。
私の作品は、膨大な日米公文書や250名以上の子どもたちの証言集の分析、当時の現役自衛官の証言、日航OB、米軍、横田基地の証言、元自衛官と遺族のもつ長年の疑問や出来事の裏付けとなる科学的調査分析を行い、帰納法として事実を積み重ねた結果、一つの仮説を提示している。反論は、単なる感傷論や意見であってはならず、それを裏付ける科学的データが不可欠であり、それがないものは質問にも反論にもなっていない。 私の7冊の著作には巻末資料も掲載しており、それを帰納法で読み解けば、誰もが恣意(しい)的ではないとわかる。その結果、一つの事実が浮き出されたとしても、OBであればこそ身を正し、冷静にならなければならない。 最大の証拠物である生のボイスレコーダー等を開示してこそ真実がわかる。
しかし、40年間も日本航空はそれを開示しようとしない。文字記録ではない生の音声データを開示することこそが、不毛な議論に終止符を打つのである。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “青山 透子”. www.amazon.co.jp. 2021年9月23日閲覧。
- ^ “日航123便墜落 疑惑のはじまり 天空の星たちへ 河出文庫”. HMV&BOOKS online. 2021年9月23日閲覧。
- ^ 「総理大臣夫人安倍昭恵さんイン名張 野生獣追い払い犬 飼い主と懇談」『猿新聞』第96号、名張鳥獣害問題連絡会、2014年、2025年11月14日閲覧。
- ^ “2014年度 冬季棚田学会発表会”. 棚田学会. 2025年11月14日閲覧。
- ^ “猿追い犬「モンキードッグ」とは”. 長野県大町市公式サイト (2020年4月1日). 2025年11月12日閲覧。
- ^ 吉田洋、中村大輔, 林進, 小林亜由美, 藤園麻里, 杉田幹夫, 北原正彦「サル追払い時におけるニホンザルとモンキードッグの行動」『霊長類研究 Supplement』第25巻第0号、2009年、30頁、doi:10.14907/primate.25.0.30.0、NAID 130006997716。
- ^ 山口薫 (モンキードック研究者)
- ^ 『野生鳥獣被害対策における住民参加型実践アプローチの多面的効果と課題: 野生サル追い払い犬事業の評価から』(博士(国際協力学)論文・新領域創成科学研究科国際協力学専攻専攻)甲第32004号、東京大学、2015年。doi:10.15083/00072906。2025年11月14日閲覧。
- ^ “全国学校図書館協議会選定図書”. 公益社団法人 全国学校図書館協議会. 2025年10月18日閲覧。
- ^ “7/16 シンポジウム 「情報公開と知る権利--今こそ日航123便の公文書を問う」開催”. 河出書房新社. トピックス (2019年7月16日). 2022年2月20日閲覧。
- ^ “日航123便墜落 疑惑のはじまり 天空の星たちへ 河出文庫”. HMV&BOOKS online. 2021年9月23日閲覧。
- ^ “日航機事故遺族の飛行・音声データ開示請求を棄却 東京地裁”. 時事通信社 (2022年10月13日). 2022年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月24日閲覧。
- ^ “日航機レコーダー開示訴訟、オンラインで報告会と講演 弁護士「裁判最後まで」”. 上毛新聞 (2023年2月19日). 2023年5月12日閲覧。
- ^ 森永卓郎 (2021年8月12日). “日航123便はなぜ墜落したのか”. 毎日新聞「政治プレミア」. 2021年9月28日閲覧。
- ^ a b c “日航機墜落は自衛隊のせい――元CAが書く「御巣鷹山」トンデモ本(全文)”. デイリー新潮. 新潮社 (2018年9月1日). 2024年9月27日閲覧。
- ^ “「日本航空123便墜落事故」の陰謀論を元航空自衛官が実名で否定する“明確な論拠”「ないですね。これは即答です」”. 文春オンライン (2025年8月12日). 2025年8月13日閲覧。
- ^ “シンポジウム公式動画「第二回 航空機事故と災害派遣 ~ JAL123便墜落事故から40年 現場からの証言 」2025.7.28 衆議院第一議員会館”. 2025年10月20日閲覧。
- ^ “日航機墜落の「デマ本」3冊を学校図書館に推薦、文科省「天下り次官」の無責任”. フォーサイト (2025年5月1日). 2025年5月3日閲覧。
- ^ “日航機墜落に5つの陰謀説「自衛隊と隊員への冒瀆だ」当時捜索のOBが反論”. 産経新聞 (2025年5月1日). 2025年5月1日閲覧。
- ^ “日航機墜落に「自衛隊関与説」の作家、青山透子氏「科学的調査分析を行った」コメント全文”. 産経新聞社 (2025年5月2日). 2025年5月5日閲覧。
注釈
[編集]- ^ 農作物を荒らすサルを山へ追い払うために訓練した犬を活用する鳥獣害対策[5]。サル追払い犬という術語も存在する[6]
- ^ なお、当該図書は5年間の指定有効期間を終了している[9]
- ^ 群馬県吾妻郡東村(現在東吾妻町)でファントムを見たという元自衛官の手記を『上毛警友』から発掘したとしているが、当人に直接取材していないことが判明しており、当時の状況から付近の訓練空域から帰投する米軍艦載機と誤認した可能性も指摘されている[17]。