謎に満ちた超巨星ベテルギウス、新たな観測で最大級の疑問解明か 伴星の「航跡」で減光?
デュプリー氏のチームはハッブル宇宙望遠鏡に加え、フレッド・ローレンス・ホイップル天文台やロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台といった地上の観測施設も用いて、長年にわたりベテルギウスの光の変化を追跡してきた。
ベテルギウスの遠近両方から観測データを取得した結果、伴星がベテルギウスの広大な大気の中を進んでいることを示唆するパターンが浮かび上がった。
研究チームは、大気の攪乱(かくらん)により、ベテルギウスの外層大気を構成するガスのスピードや方向に変化が生じるのを記録した。
またハッブル望遠鏡を使うことで、ベテルギウスの深層大気(彩層)がシワルハの動きにどう反応するか確認が可能になり、さらに地上からの観測の結果、外層大気に変化が生じていることも判明した。
「こうした最新の研究結果から、シワルハは公転時にベテルギウスの外層大気を『かき乱している』とみられる」。そう指摘するのは論文共著者のモーガン・マクラウド氏だ。マクラウド氏は理論天体物理学を専攻するポスドク研究員で、ハーバード・スミソニアン天体物理学センター理論計算研究所に所属する。
「この航跡はシワルハが存在する証拠であり、これほど小さな伴星がどうしたらベテルギウスの見え方に影響を与えうるのかを示す痕跡でもある」(マクラウド氏)
巨大恒星を理解する手がかり
マクラウド氏によると、ベテルギウスの動きや変化を追跡することは、遠方にある他の暗い巨大恒星を理解する助けにもなるという。
ただ、近年のベテルギウスは不可解な疑問をいくつか投げかけており、天文学者は解明のために本格的な謎解きを迫られてきた。
2019年末から20年初頭にかけて、ベテルギウスは急激に暗くなり、専門家の間では超新星爆発の直前ではないかとの見方が出た。「グレート・ディミング(大減光)」と呼ばれるこの現象を受け、天文学者たちはベテルギウスが巨大な塵(ちり)の雲を放出し、地球から見た時に光の一部が一時的に遮られたとの結論を下した。
これに加え、ベテルギウスは6年周期と約1年周期という二つの周期で定期的に光度の変化を示してきた。
長年かけて収集されたデータでは、ベテルギウスの光度は約416日周期で変化し、明滅を繰り返すことが示されている。ベテルギウスの中心部で発生しているこの脈動は、赤色超巨星に典型的な現象であることが判明した。
2100日というより長い方の周期は、塵の雲や恒星上の大規模な対流構造、磁気活動、あるいは望遠鏡の光学的な観測範囲の外にある捉えにくい伴星によるものと考えられていた。
この1年間に複数の研究チームから寄せられた証拠では、その原因はシワルハの存在にあることが示されている。
デュプリー氏は「こうした直接的な証拠が得られたことで、ベテルギウスを観測する我々は、巨大恒星が時間の経過と共にどのような変化をたどるのか、特等席で見ることができる」と説明。「伴星の航跡が見つかったことで、我々は今や、こうした星がどのように進化して物質を放出し、最終的に超新星爆発を起こすのか理解できるようになった」と語った。