大動脈がやぶれ、激痛が走る「大動脈解離」 高血圧が最大のリスク
みなさん、血圧をはかりましたか? 今回は、突然血管が裂けてしまう、怖い病気と血圧の関係を考えます。鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学の大石充教授に語ってもらいます。 【写真】高血圧は心臓・血管の病気につながる ■激しい痛みと、冷や汗 心臓や血管の病気の中で、高血圧の影響を最も受けやすいものの一つが、「大動脈解離」です。突然、動脈が裂けてしまう病気です。 長年、血圧が高い状態にさらされてもろくなった血管が、ある日突然、びりっと裂けます。大変な痛みをともない、患者さんによれば「まるで火箸を頭から突っ込まれたような痛み」が走るのだといいます。尋常ではない痛みと、冷や汗が出るのが特徴です。すぐに救急車を呼びましょう。 大動脈解離が最もおこりやすい場所は、心臓のすぐ近く。心臓から全身に血液を送る大動脈の、アーチ形になった部分です。裂け目が心臓の方向に走ると、緊急手術をしても残念ながら救命率は低いです。心臓から遠くの方向へ裂けた場合も、緊急手術が必要になる場合があります。 大動脈解離は、ひとたび起こると命に関わりますので、起こさないように予防すること、つまり、血圧のコントロールが何よりも大切です。 ■心臓がふるえる心房細動も怖い 命に直結する病気でもうひとつ知っていただきたいものに、「心房細動」があります。心房細動の発症にも、肥満や加齢に加え、高血圧が影響しています。高血圧にさらされつづけて心臓(心房)の筋肉が硬くなってしまい、異常な電気信号がおこって心臓が細かく振動してしまうのです。 心房細動が怖いのは、心臓の中に血栓をつくってしまうことです。この血栓が脳に飛ぶと、脳卒中の原因になります。 ところで、読者のみなさんは、健康診断をどれくらいの頻度で受けていますか? 会社などに勤めていると、毎年、健診がありますね。一方で、農業や漁業、自営業や、仕事をしていない方の中には、そもそも健康診断をしばらく受けていない、という人もいるかもしれません。 私のいる鹿児島県は、脳卒中による死亡率が全国平均よりも高いのですが、中でも高いのが、枕崎市という地域です。カツオで有名な漁業のまちです。心臓病や脳卒中で倒れて救急車で運ばれてくる患者さんが少なくなく、中には「血圧を一度もはかったことがない」「血圧が高いことをまったく知らなかった」という人も少なくありませんでした。 ■血圧計をあちこちにしのばせて 血圧コントロールは、まずはかって、自分の値を知ることから始まります。とはいえ、人間、面倒なことにはなかなか食指が動きません。 そこで、私たち鹿児島大学も協力して、枕崎市では2019年ごろから、「高血圧ゼロの街」を目指して、市内のあちこちに血圧計を置く取り組みをすすめてきました。まずは血圧測定を身近に感じてもらいたい、と考えたのです。公共機関に置くのはよくある取り組みですが、コロナウイルスの流行前には、より生活に身近な、パチンコ店や居酒屋などにも置いていました。 他にも、市長室の前に置いて、市長に面会する人は必ず血圧をはかりましょう、と呼びかけたり、高校の職員室の前に置いたりしています。 子どもたちへの血圧教育にも力を入れていて、中学生向けに、血圧の出前授業も行っています。ここにはもう一つねらいがあって、自分では血圧に関心がない大人も、孫や子どもから言われたら、ちょっとはかってみようかな、と思いますよね。 血圧をはかれば、自然と、健康に少し目を向けるようになるものです。県内のいくつかの自治体で同様の取り組みをすすめたところ、医療費や介護費が少し、下がりはじめる自治体が出てきているんですよ。 ■せめて数年に1回は健康診断を 自分で血圧をはかってみて、130/80mmHgを超えていたら、要注意。お酒が大好きで、生活習慣を簡単には変えられない人も、せめて休肝日をつくるなど、できることからはじめてみてください。 もし、140/90mmHgを超えていたら、治療の対象になります。心臓や血管の病気による不慮のアクシデントを防ぐために、若いうちから薬をのみはじめる、というのも一つの選択肢ですよ。 そして、しばらく健康診断を受けていない人や、「若いころに受けて、健康と言われた」という人も、せめて数年に1回は健診を受けてくださいね。特に40代以降は、加齢によって身体の状況が変化していきますから、過信は禁物です。(日本高血圧学会 大石充・鹿児島大学教授、構成・鈴木彩子)
朝日新聞社