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感動話なのか?12歳が5人育児、ナイトスクープのヤングケアラーを法はどう見る #エキスパートトピ

元特捜部主任検事
提供:イメージマート

人気番組『探偵!ナイトスクープ』で、12歳の小学6年生の長男が共働きの両親に代わって0歳から10歳までの5人のきょうだいの世話をしている家庭が紹介され、大きな反響を呼んでいます。1日でいいから次男になりたいという長男の依頼に基づき、お笑いコンビ「霜降り明星」のせいやがその役を引き受けるという話でした。感動したという声が上がる一方、法の視点から見ると、この状況には無視できないリスクも潜んでいます。理解の手がかりとなる記事をまとめました。

ココがポイント

同級生は自由に遊んでいてうらやましい。正直、長男をやるのに疲れた
出典:MANTANWEB 2026/1/23(金)

「ヤングケアラー」とは、“本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども・若者”のこと
出典:こども家庭庁

多くのヤングケアラーは、自分がヤングケアラーだということを認識していません
出典:公益財団法人 交通遺児育英会 2025/5/24(土)

子ども本人が「困ってない」と言うのであれば、周りの大人は放っておいていいのかというと、それもまた違う
出典:介護ポストセブン 2025/1/18(土)

エキスパートの補足・見解

民法では子どもを養育・監護する義務は親にあります。兄弟姉妹が弟や妹を育てる法的義務などありません。家族はワンチームだと12歳の子どもが日常的に5人分の育児や家事を担わされ、友人との遊びや部活、学業、睡眠、心身の健康などに支障が生じていれば、親の監護義務違反が問題となりえます。

児童虐待防止法との関係も無視しえません。虐待には暴力だけでなく「ネグレクト(育児放棄)」も含まれます。親がいるのに年齢に不相応な責任を恒常的に子どもに転嫁していれば、本人が不満を口にしていなくても、ネグレクトと評価される余地があります。状況が深刻化し、子どもの心身に被害が生じているにもかかわらず、親が支援を受ける努力を怠っているのなら、児童相談所の介入も必要です。

番組では、せいやが「お前はな、まだ12歳や」と言いながら、慈しむかのように長男を抱き上げていた姿が印象的でした。番組の内容に演出上の誇張が含まれているとしても、単なる感動話として消費されるべきテーマではありません。2024年施行の改正子ども・若者育成支援推進法でも、ヤングケアラーは支援の対象になっています。社会や行政がどう支えるべきかを考える必要があるでしょう。(了)

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元特捜部主任検事

ベスト エキスパート受賞

2025

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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