落第騎士の英雄譚 意識低い系風味   作:一般落第騎士

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第五話

 

 今でも、東堂刀華は鮮明に思い出せる。

 

 彼との試合。七星剣武祭で、彼に完膚なきまでに負けた記憶。

 

 回想。

 

『《雷切》―――!』

 

 あの時。

 己は紫電を纏い、固有霊装である《鳴神》を振り切った。

《天譴》という二つ名の由来となった、圧倒的なカウンタースタイル。それを知っていながらも、東堂刀華は敢えて自ら踏み込むという決断を下した。

 

 理由は二つ。

 生半可な遠距離攻撃では彼の接近を妨げられないと判断したのが一つ。

 そして、己の《雷切》に対する絶対的な自負が一つだ。

 

 超速の伐刀絶技、《雷切》。

 鞘を砲身(バレル)、刀を弾とし、電磁加速によって刀を撃ち出す超電磁砲(レールガン)

 東堂刀華の類い稀なる才能と、血の滲むような鍛錬の元に産まれた異形の抜刀術。その抜刀速度は優に音速を超える。試合開始直後に距離を詰め、即座に《雷切》を甘木悠の首に向けて振り抜いた。

 

 最高の手応えだという確信。

 己の思考と身体がかつてなく一致し、思うがままに動かせるような全能感があった。

 

 全身に纏う雷光で視界が白く光る。

 白く輝く《鳴神》が、甘木悠の首筋へと迫り―――そして、東堂刀華は敗北した。

 

 

 舞台が移り変わる。

 

 

 敗北後。

 東堂刀華は己に、気の狂ったハードトレーニングを課した。

 雷速の抜刀術である《雷切》を放って、カウンターで斬り伏せられた。それはつまり、彼の剣速が東堂刀華のそれを大きく上回っているという意味だ。敗北を糧とすべく、東堂刀華は涙を零しながら己の身体を苛め抜いた。

 

 甘木悠に勝つための策はあった。

 己の伐刀絶技にはまだ先がある。以前から構想だけは存在した、未完成の伐刀絶技。

 超電磁砲で刀を撃ち出すのではなく、()()()()()()()()()()という狂気の発想。一つ間違えば全身がバラバラになる禁断の秘技。

 

 《天譴》甘木悠を超えるにはその狂気に身を浸す必要があると考えた東堂刀華は、周囲に幾ら止められようと、その鍛錬を断行した。

 

 血反吐を吐き、友人たちから涙ながらに止められ、iPS再生槽に運び込まれる回数が両手の指でも数えきれなくなった頃。ついにその新技は完成した。

 

 《建御雷神(タケミカヅチ)》と名付けた、東堂刀華の執念の結晶。

 これがあれば、あの《天譴》の支配する剣域を超えられる。そう感じた刀華は、甘木悠へ模擬戦の申し込みを行った。

 休日と金銭を要求された事には面食らったが、元来決闘には適正な報酬が支払われるもの。申し込んだ側として当然の事と受け止め、生徒会の権威を通じて彼に便宜を図った。

 

 そして、決闘当日。

 

 

『へっへへ……いやー、流石東堂会長。強いですね。完敗です、完敗』

 

 

 二戦二勝。

 東堂刀華は、《建御雷神》を使うことなく完勝した。

 

 《雷切》の一閃で、甘木悠は刀を返す事もなく斬り伏せられた。

 東堂刀華は、いとも簡単にリベンジを果たすことが出来た。

 

 一瞬だけ喜んだ。

 

 そしてすぐに、『そんな訳はない』と思い直した。

 

 あの日、《雷切》を繰り出した己は文句のつけようもないベストコンディションだった。

 孤児院『若葉の家』の仲間たちの応援、七星剣武祭という大舞台への自負。東堂刀華の本質は“守護”だ。『誰かの支えになりたい』という願いを叶えるための、理屈の無い、再現性の無い何かが、あの日の東堂刀華には降りてきていた。

 

 いくら以前に比べ魔力制御が向上したとはいえ、今繰り出した《雷切》が、あの日のそれに(まさ)っているとは思えない。

 

 手加減された。

 

 そう思った刀華は、彼に本気を出すよう要求した。目で追えていたはず、一回ならまだしも、二回もカウンターを返せなかったのはおかしいと。幸いなことに、隣に居た貴徳原カナタ(カナちゃん)もそれに口添えしてくれた。

 

 そうして迎えた三戦目。ここで、己の全力を出し切る。刀華はそう腹を括った。

 《建御雷神》は此処で出すと、最初から決めていた。最初の二戦で彼の剣域を測り、三戦目に予想外の新技で仕留めるのだと。

 予定とは少し異なるが、それでも全力の《建御雷神》を。

 

 そうして、東堂刀華は未だ制御の甘い《建御雷神》を見事に成功させた。

 

 それなのに。

 

 

『―――正直に言うと。前戦った時と何が違うのか、あんまり分かりませんでした』

 

 

 《建御雷神》に対し、避ける事も無く刀を一振り。

 渾身の一刀をあっさりと斬り伏せ、彼は申し訳なさそうにそう言った。

 

 怒り。屈辱。悔しさ。胸の奥で爆発したあの混沌とした感情を何と表現すればいいのか、東堂刀華には今でもよく分からない。 

 

 《建御雷神》が完成したとき、皆で涙を流して喜んだ。

 無茶な鍛錬に苦言を呈した者も、逆に刀華を後押しした者も、みんなが刀華を祝福してくれた。 

 努力が結実し、東堂刀華は魔導騎士として一つ殻を破ったような気がした。

 

 それら全ては、甘木悠にとって『何が違うのかよく分からない』程度の物だったらしい。

 

 成長した。

 高みへ登った。

 いくら人がそう騒ぎ立てようが、天から見ればどれも同じこと。

 

 東堂刀華の血の滲むような修行は、彼の()()()を引き出しただけだった。

 ……もう、努力に意味が見いだせなかった。

 

 泣いて、泣いて、泣いて。

 三日間はそうやって泣き腫らしていたと思う。

 

 

 同時期、甘木悠には不名誉な二つ名が蔓延していた。『七星剣王で最も努力しなかった男』。

 彼は、東堂のように血反吐を吐くような思いなど一切せず、ただ生まれ持った才能だけで七星の頂点に立ったのだ。

 

 そんな男に、東堂は、己の全てを懸けても届かなかったのだ。

 

 全てが馬鹿らしくなった。

 東堂刀華は、自室に飾っていた孤児院の家族たちの写真を押入れにしまった。

 

 自分はもう、これを持つのに相応しくないと思ったからだ。

 

 

 場面が移り変わる。

 

 

 ……東堂刀華が立ち直るのに、劇的なきっかけは何も無かった。

 

 ライバルからの叱咤とか。

 鮮烈な覚醒イベントとか。

 新たな師匠との出会いとか。

 そういう物は一切無かった。彼女は、そういう星の元に産まれて無かった。

 

 

 普通に落ち込み、普通に友人たちに励まされ、泣きながらご飯を食べ、普通に寝て起きて。

 

 

 ―――そして、しばらくして普通に立ち直った。

 

 

 今までもそうだった。

 東堂刀華は、劇的な何かに恵まれるような人間ではない。

 彼女は、当たり前の事を当たり前にこなしただけだ。

 

 家族に愛され、事故で両親を失った彼女は、孤児院で新たな家族に出会う事で立ち直った。

 己が両親から受け取った愛を、次は誰かに渡せるようになろうと願った。

 

 伐刀者となってからも、彼女は幾度となく負け、挫折を経験した。

 彼女は制御の難しい己の異能に当たり散らし、ウタくんを呼び出しては八つ当たりし、そして暫くすると、また涙を拭って練習を再開した。

 

 ありとあらゆる絶望が、苦痛が、彼女の足を止める理由にならなかった。

 幾度となく折れて、そこからまたやり直せる人間だった。

 

 魔導騎士として成長し、《雷切》と称賛され、そして遥かなる高みを知った今も。

 彼女は《天譴》の強さを目の当たりにして、当たり前に心が折れて、そして、しばらくすれば普通に立ち直った。

 

 三日間落ち込んで泣き腫らした後、四日目から彼女は再び剣を振るい始めた。

 ご飯をもりもり食べて、友人にからかわれて、その後で突然泣き出してしまった友人(ウタくん)を慌てて慰めて。

 押入れに仕舞っていた写真は、『閉じ込めてしまってごめんなさい』と一礼してから再び元の場所に戻した。

 

 東堂刀華は、特別な星の元に産まれていない。

 

 覚醒も、都合の良い展開も、決して彼女には訪れない。天運がもしあるならば、きっと彼女を愛していない。

 

 しかし。彼女は、そんなものより遥かに重要な事を知っている。

 

 自分が、昨日より成長していると知っている。

 天がどれほどの高みにあるかは知らない。しかし、今日の自分が昨日の自分より高みに居ると分かっている。

 

 だから、東堂刀華は立ち直るのだ。必ず。

 

 どんな理不尽な才能があろうが、それはそれだ。

 己は一歩ずつ階段を登って、いつかは超えてみせるのだと。

 

 

 天がどれほど高みにあろうが、(いかづち)は上に昇るのだ。

 

 

 景色はさらに移り変わる。

 

 

 敗北の記憶。彼の太刀筋。御祓泡沫の言葉。貴徳原カナタの声。生徒会の仲間たち、孤児院の家族、笑顔、鍛錬の風景、初めて《雷切》に成功したときの記憶―――。

 

 

 ―――そして、東堂刀華は眼を見開いた。

 

 

 走馬灯とは、過去の記憶を漁ることで、今ある危機への対処法を探そうとする脳の働きだと言われている。雷使いであり脳の神経信号さえ観測する東堂刀華にとって、疑似的なそれを引き起こす事など容易いことだ。

 

 己の敗北。

 再起。

 心の一番底に刻まれている、己が戦う理由。

 

 全てを今一度思い返し、闘志を強く燃やすための薪にするために。

 

 

 

『―――さあ! 両者固有霊装を展開し、準備は万端! この場に居る全員が、開始の合図を今か今かと待ち望んでいます!』

 

 

 

「……お久しぶりですね、甘木くん。去年度の三学期……黒鉄くんとの決闘以来ですか」

 

 目の前の男へ、平静を保ちながらそう話しかける。

 

 彼の才能を見て、心を折られ、そして立ち直って。

 東堂刀華は、初めて正面から彼と向き合った気がした。

 

 《七星剣王》。《天譴》甘木悠。七星剣王の中で最も努力しなかった男。

 学園内において、彼は畏怖と戦慄、そして少量の()()の対象として見られている。あまりにも巨大な才能に対し、皆が態度を決めかねているのだ。

 

 確かに、魔導騎士たちの間にも才能の格差というものは存在する。しかしそれは努力が軽んじられるという意味ではない。むしろ才能に胡坐をかき、努力を怠ったものこそ、決して頂点にたどり着くことは無く、そして愚直に努力を積み重ねたものに追い抜かれる定めにあるのだ。そのはずだったのだ。

 

 その定説を破壊した存在へ、生徒たちはただ畏怖の目を向けるしかない。

 内心に嫉妬や、こんなことが許されて良い訳が無いという義憤を抱えて。

 

 今も、会場の声援は東堂へ向けられた者の方が多い。《七星剣王》の試合としては有り得ない事態だ。

 そんな状況を彼も把握はしているのだろうか。甘木悠は、どこか所在なさげにゆらゆらと立っている。

 

 

「(―――あ)」

 

 

 そんな彼を見て。

 東堂刀華は、やっと『甘木悠』という存在を少し理解できた気がした。

 

 才能や嫉妬というフィルターを抜き、ただ一人の甘木悠という後輩を見ることが出来た。

 

 

「(彼も、アウェーな環境で緊張したりするんですね)」 

 

 

 彼も人間だ。普段の言動を見る限り、なんなら人間初心者と言ってもいいだろう。

 彼だって当然、嫌われたら落ち込むし、好かれようとして空回るし、アウェーで試合するのは落ち着かないのだ。

 そんな当たり前の事に、東堂刀華は初めて気がついた。

 

 

「―――ありがとうございました」

 

 

 驚くほどするりと、その言葉が胸を衝いて出てきた。

 

「え……。え、何がですか……?」

「破軍学園に、七星剣武祭の優勝旗を齎してくれた事です。ごめんなさい。生徒会長として、貴方にきちんとお礼を言うべきでした」

 

 才能の格差を目の当たりにして、それでも前に歩み続けると決めた。

 嫉妬を呑みこみ、甘木悠という天才へ正面から向き合うことが出来た。

 

 そうして改めて彼を見た時、“自分は甘木悠に感謝するべきだ”と素直に思えたのだ。

 

「七星剣王としての名誉を持ち帰ってくれた事。

 『特別招集』で、国防の務めを果たしてくださっている事。

 マスメディアに愛想よく対応し、破軍学園の評判向上に貢献してくださっている事。

 それらすべてに、破軍学園を代表して感謝します。ふふ。どれもこれも、もっと早くにお伝えするべきでしたね」

 

 申し訳ありません。

 そう言って、東堂刀華はぺこりと頭を下げた。

 

 ざわめきが静まる。

 実況さえも言葉を発せられないまま、東堂刀華の言葉だけがアリーナに染み渡っていく。

 

 

「わたしに出会ってくれてありがとう。戦ってくれてありがとう。

 

 ―――あなたという超えるべき壁を、わたしに与えてくれてありがとう」

 

 

 誰かが息を呑む音がした。

 

 

「その上で、宣言させてください。……今年の七星剣王は、わたしです。 

 

 誰にも譲らない―――わたしは、今日ここであなたを超える!!」

 

 

 誰もが、東堂刀華から眼を離せない。

 彼女の発する覇気が。清廉なる闘気が、アリーナを塗りつぶしていく。

 

 彼女を中心として風が渦巻いているような、

 アリーナの光が全て彼女へ注がれていくような、

 ただそこに居るだけなのに、彼女を見るだけで肌がビリビリと震えるような。

 

 そんな錯覚を抱くほどの澄み切った闘気。

 

 

 端的に言えば、今の東堂刀華は神憑(かみがか)っていた。

 

 

「刀華……!!」

 

 ガタンと椅子を倒し、御祓泡沫が立ち上がる。

 感動を抑えきれず両手で口を押さえながら、敬愛する幼馴染が見せた成長へ涙を零した。

 

 刀華は、甘木悠という才能(不条理)を、真の意味で乗り越えたのだ。

 才能の壁を知り、遥かなる天の高みを知り、それでも挑み、超えてみせると誓った。不条理をあるがままに受け入れ、それでもなお踏破してみせると決めたのだ。

 

 甘木の舐めた忖度に怒り、その理不尽な才能に嫉妬していた御祓泡沫では決してたどり着けなかったであろう境地。羨望と嫉妬を受け入れ、清も濁も呑みこんだ彼女は、かつてない爆発的な覇気を纏っていた。

 

 

「(―――勝てる)」

 

 

 御祓泡沫はそう確信した。

 甘木悠には死闘の経験が無い、と以前御祓は分析した事がある。

 

 己の弱さに歯噛みし、眠れない夜を過ごした事が無い。格上へ食らいつき、決死の執念で一撃報いた事も無い。()()()()()()()()()()()()()()。故に彼は、強くとも、脆い。

 

「(彼が決して手に入れる事が出来ない、"心の強さ"という武器―――! 今の刀華は、誰よりもそれを持っている!!)」

 

 ()し潰されるような。しかし、足先から力が入り、叫びたくなるほど心が沸き立つような。

 

 刀華を見ているだけで涙が止まらない。誇らしさから来る笑みを抑える事が出来ない。

 あれが東堂刀華なのだ、あの素晴らしい少女が僕たちが愛する家族なのだと、全世界に騒ぎ立てたくなる。

 

 

 

『……月夜見ちゃん、合図、合図出さなきゃ……っ』

『あ……っ、は、はいッ!! 失礼いたしました! 《七星剣王》と《雷切》の因縁を感じさせる会話に、思わず息を呑んでしまいました! とっ……東堂刀華選手の様子は、何と言えばいいのか……まさに、準備万端と言ったところ!! アリーナ中が、彼女から目を離せません!! どんな試合を見せてくれるのか、否が応でも期待が高まります!!』

 

 

 

 声をもつれさせながら、実況席の生徒が開始の合図をしようとする。

 

 それを感じながら、東堂刀華は深く意識を集中させた。五感が引き延ばされ、周囲の喧騒が遠のいていく。

 

 東堂刀華に"劇的"は訪れない。

 

 一世一代の勝負だと感じているこの時も、別に突如として新技や、新たな伐刀絶技を編み出せたりはしない。そして、それを恥ずかしく思う事ももうない。

 

 ただ、やれることをやるのだ。今までやってきた事を、そのまま出すのだ。

 

 電気信号から相手の思考を読み取る《閃理眼》は使わない。 

 ただ、全ての魔力制御を、《武御雷神(タケミカヅチ)》に注ぎ込む。

 

 

 極限の集中によってリミッターを外し、魔力・体力・気力等のあらゆる力を短時間に放出する。

 

 ―――それは、黒鉄一輝の使用する《一刀修羅》の思想に近い物。

 将来彼が辿り着く《一刀羅刹》を、東堂刀華が独自に編み出した、彼女なりのオリジナル。

 

 

 魔力を全開で吐き出す。全身を巡る荒れ狂う力を、彼女の全霊を込めて制御する。

 普通に戦えば数時間は持つだろう魔力を、一刀に圧縮することで威力を劇的に高める破滅技。

 

 東堂刀華の魔力制御では未だ効率も悪く、魔力を全開で巡らせるだけで全身の血管や筋肉がズタズタに引きちぎれる。そして魔力を使い果たす都合上、この技の使用後は当然ながら魔力欠乏を起こし気絶する。

 《一刀修羅》の出来損ない。一度の剣戟に全てを懸ける、愚者の剣だ。

 

「(―――それでも)」

 

 

 それでも。

 

 

 天を穿つには、そんな無茶でもしないと届かないから。

 

 

『皆さん、どうかご唱和ください!』

 

 

 勝負は一刀。

 開始直後の速攻、そこに全てを懸ける。

 

 

『Let's GO AHEAD――――――!!』

 

 

 紫電が走る。

 逆巻く魔力の燐光。

 爆発する剣気。

 

 

 魂からの叫びをあげながら、東堂刀華は閃光となった。

 

 

「―――命脈(ケラ)焼き尽くす(ウノス・)紫電の(ディザ)刹那(スター)――――!!

 

 

 

 裂帛の気合が、()()()()()()()

 

 

 誰も、その瞬間何が起きたのか説明できなかった。

 

 

 東堂刀華は、突然自分の声が上手く出せなくなったように感じた。

 裂帛の気合を込めて叫んでいるはずなのに、なぜか己の声が小さくなっていく。魔力制御のミスで聴覚に影響が出たか? と思うが、それとも少し違うような。

 

 ヒュゥ、というような空気の漏れる音。喉のあたりを冷たい風がスースーと通り抜ける。

 

 

「刀華――――!?」

 

 

 遠くで幼馴染の声がする。

 視界がスローになる。全身が上手く動かせない。悲痛な声を上げる幼馴染へ振り返りたいのに、それが出来ない。

 

 首が、回してはいけない角度までヌルリと回った。

 

 足が縺れ、世界がガタンと傾いた。

 制御を失った雷が彼女の身体を焼いた。

 

 首元が熱い。

 

 床が持ち上がって来る。

 視界が端から黒くなっていき、何故か己の姿が見える。

 

 胸。

 腹。

 脚。

 最後に地面。

 

 せり上がってくる。いや。自分が落ちているのだ。

 

 ぐしゃりと()()()()()()()、やっと東堂刀華は自分が断頭されたことに気づいた。

 

 

「よし」

 

 

 ゴトンと頭が落ちる。

 遠くなる意識の中、そんな声が聞こえたような気がした。

 

 

 




ちゃんとやった(試合時間一秒)
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