「不安で夜も眠れない」 医療的ケア児の介護休暇申請も職場が難色 親の就労は死活問題に
そんななか、長男の就学が迫る。特別支援学校や地域の学校の支援学級の情報を収集したが、特別支援学校はバスで片道1時間ほどかかる距離にあり、通学は難しそうだ。地域の学校なら距離の心配はないが、発達の遅れもある長男に対応してもらえるのか不安もある。下校後を過ごす放課後等デイサービスの受け入れを断られたこともあり、このままでは職場復帰もままならないという。 ■親の就労は死活問題 今、女性の心の支えになっているのは、週5、6回の頻度で支援してくれる訪問看護師や訪問ヘルパーといった専門家たちだ。「息子だけでなく、私の多忙さを気遣ってくれたり、励ましてくれたりする貴重な存在です」 医療的ケア児や障がい児のケアでは家族に過大な負担がかかるが、家族への支援制度は充実しているとは言いがたいのが現状だ。 重度の知的な遅れをともなう自閉症の長女(18)を育てながら新聞社に勤務する工藤さほさん(53)は、こう話す。 「親の就労は死活問題で、今後どうやって育てていこうと、夜も不安で眠れない親たちがいます。日々のやりくりで慢性的に疲弊していますが、親たちが心身ともに健康でなければ当事者の子どもたちを含め、すべてが崩壊してしまいます」 工藤さんは働きながら医療的ケア児や障がい児を育てる親たち約500人でつくる一般社団法人「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」の会長としても活動している。 これまで国などに障がい児育児と就労の両立を支援する制度の必要性などを訴えてきた。障がい児や医療的ケア児を育てながら働く親への配慮を初めて盛りこんだ改正育児・介護休業法は25年10月に全面施行されたばかりだ。 「法律は両立支援制度に実装されてこそ意味がある。障がい児や医療的ケア児が笑顔で人生をまっとうできる社会にしていくことは、社会全体を幸せにすることにつながると信じています」(工藤さん) (ライター・浴野朝香) ※AERA 2026年1月26日号より抜粋
浴野朝香