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八男って、それはないでしょう!   作者: Y.A
みそっかす編

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第53話 桃色カバさん再び(その2)

新作「誰か、前世が凄腕の機動兵器操縦者である私に平穏を!」が連載中です。

読んでください!

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同じくロボット物です!

「(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった」

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「桃色カバさんの肉と内臓が四体分も手に入るとは。下民、褒めてつかわす」


「ははぁ、ありがたき幸せ」


「お前の息子だが、将来はリリエンタール伯爵家で取り立ててやろう」


「息子もきっと喜ぶでしょう。 感謝の言葉もございません」


「ヘッケナー卿、凄腕の魔法使いをワシに差し出した功績を評価し、将来はそなたにも報いよう。準男爵への襲爵……いや、男爵も夢ではないぞ」


「さすがは、リリエンタール伯爵様。あなた様こそ貴族の中の貴族です」




 寄子のヘッケナー卿などこれまで眼中にもなかったが、まさかリリエンタール伯爵家に優れた魔法使いをもたらしてくれるとは。

 貧しい領民の子供に多くの魔力があることが判明し、寄親であるワシに預けてくれた。

 ヘッケナー卿も貴族なら、その子を自分で活用して成り上がればいいものを。

 と思わなくもなかったが、彼が臆病者ながらも身の程を弁えている点は評価してやろう。

 彼のおかげで、ワシはバウマイスター辺境伯に匹敵するかもしれない魔法使いを手に入れることができたのだから。

 だが、それだけでは財務閥におけるルックナー侯爵家優位を覆せない。

 先代はヴァイゲル家の件でのしくじりもあるので長い目で対応すると言っていたが、急死していれば世話ない。

 まったく、先代の子供たちはまだ幼かったので、先代の叔父であるワシが一時的にリリエンタール伯爵家を継ぐ羽目になってしまったではないか。

 領地持ち貴族なら幼児に継がせても、一族や家臣たちの補佐でなんとかできるが、役職持ちの貴族ではそれも難しい。

 家臣たちが懸命に補佐してなんとかする貴族は多いが、それではお役目を果たせないと、色々と工作して代理世襲を認めさせたのは、実はワシなんだがな。

 ここでワシがなにか大きな功績をもたらせば、甥の子供ではなく、ワシの子に跡を継がせることができる。

 武力を用いない下剋上が可能というわけだ。

 だが、財務系法衣貴族が誰にでもわかる功績を得るのは難しい。

 そこで、世間にはわからない裏の功績……他の貴族たちの支持を得られるものを探したわけだ。


 ちょうどその頃、ヘッケナー卿がワシに幼子を差し出した。

 幼子などなんの役に立つ?

 食い詰め者を寄越したのか?

 などと思っていたら、なんとその子には恐ろしいほどの魔力があった。

 ワシは喜んでその子を引き取り、魔法使いとしての教育を受けさせる。

 するとその子は、短期間で魔法使いとしての才能を開花させた。

 その子の得意な魔法は超遠距離からの狙撃で、さらに気配を消すのも得意だった。

 この子の魔法があれば気に入らない貴族を暗殺できる……とはいえ、今の時代に暗殺などリスクが大きすぎる。

 この子の魔法をどう利用するか。

 色々と考えた結果、天下の秘獣、桃色カバさんの密猟という答えに行き着いた。

 桃色カバさんの密猟はリスクが大きいが、見返りも大きい。

 貴族は子供を作って家を繋がなければならないが、子供がいない貴族など珍しくもない。

 だから貴族には側室を持つ者も多いのだが、男性側に問題があってなかなか子供が生まれない家も多かった。

 そんな貴族たちは、桃色カバさんの卵の殻から作った精力剤を試すことが多いのだが、それでも効果がないケースも少なくない。

 このことがショックで、ついには怪しげな魔法薬にあり得ない大金を積んだり、安全性が確かではないものを飲んで死んでしまう者までいた。


 そこでリリエンタール伯爵家の当主たるワシが、桃色カバさんの肉や内臓を、適正な価格で提供しようというわけだ。

 リスクは高いが、桃色カバさんの肉や内臓を欲する貴族たちとしても、それを使って子供をなしたという事実が世間に漏れると困るから、隠匿はそう難しくない。

 もし効果がなくても、それを公にすれば密猟品を購入した自分たちも罰せられてしまうから、どうせ黙っているしかないのだ。


 問題は幻術を使う桃色カバさんをどうやって倒すかだが、そこで相手に悟られることなく、遠距離から魔法で狙撃できるこの子が役に立ったわけだ。

 すでに四頭の桃色カバさんを倒すことに成功しており、今は密かに購入者を募っているところだが、その引き合いはとても多かった。


「(子供がいない、できない貴族たちからしたら、桃色カバさんの肉と内臓はまさに恵みの雨だろう)」


 同時に、桃色カバさんの肉と内臓のおかげで子をなせた貴族たちは、ワシに弱みを握られることになる。

 彼らもまさか、違法な品である桃色カバさんの肉と内臓を購入したことを他人に知られたくないだろうからな。


「(つまりこれは、リリエンタール伯爵家が財務閥以外の貴族たちで派閥を作れることを意味する!)」


 ルックナー侯爵家や他の財務系貴族たちと支持者の奪い合いをしても頭打ちで、今ルックナー侯爵家と繋がっている連中も、バウマイスター辺境伯家と溝があるリリエンタール伯爵家につこうとは思うまい。

 だからこそリリエンタール伯爵家は、桃色カバさんの肉と内臓を用いて新たな派閥を作る必要があるのだ。


「とりあえず、五頭分の在庫があればしばらくは大丈夫だろう。あと一頭頼むぞ」


「はい」


 子供は素直なのが一番だ。

 それにしても、この幼さでこれだけの魔法の実力を持つとは。

 上手く育てれば、バウマイスター辺境伯をも上回る魔法使いになるだろう。


「(リリエンタール伯爵家の家督を、ワシと子供、孫たちで完全に乗っ取る。そして、ルックナー侯爵家優位の財務閥を必ずひっくり返してやるぞ!)」


 この子が狩った桃色カバさんの肉と内臓を使って、リリエンタール伯爵家が財務系法衣貴族の……いや、すべての法衣貴族たちの頂点に立つのだ!






「……ブランタークさん?」


「うわっ、わかりにくいな! それにしても辺境伯様、随分と『探知』の腕を上げたじゃないか」


「師匠の師匠のおかげですけど……また見失った!」


「ちっ! こっちが『探知』していることに気がついて、魔力を完全に遮断しやがった! なんなんだ? こいつは? これだけのことができる魔法使いなのに、誰なのか皆目見当もつかない。俺の頭の中には、ヘルムート王国の優れた魔法使いのデータがほぼ全員分入っているんだが……」


「きっと子供なんですよ。魔法の天才児なんだ」


「なあ、辺境伯様。子供がこんなことできると思うか? きっと暗部に属する、その存在を隠していた凄腕の魔法使いだと思うぜ」


「そうかなぁ?」


 やっと密猟者らしき反応があったのに、どうやら向こうに勘づかれて魔力を消されてしまったようだ。

 俺は密猟者の正体を天才子供魔法使いだと推測したけど、ブランタークさんはマフィアや軍の特殊部隊に所属しているような魔法使いだと予想していた。

 確かにやってることは凄いから、老練で、世間に知られていない、マフィアや軍の暗部に所属しているような人を想像しがちだけど、そんな人が桃色カバさんの密猟なんてやるかな?


「陛下に目をつけられてまで、そんな人たちがここまで無茶しますかね?」


 マフィアや暗部の人たちは、我々が思っている以上に慎重だ。

 下手にお上に目をつけられたら、必ず潰されるとわかっているからだ。


「そういう人たちって、もっとコソコソ悪事を働くような気がしますよ。桃色カバさんの密猟なんて身を滅ぼしかねませんよ」


「そう言われてみると確かに、辺境伯様の言うとおりだな」


「帝国の連中ってことはないのか?」


「エル、もし密猟が帝国の仕業だってバレたら、両国の関係に皹が入るじゃないか。ペーターがそんなことをさせないさ」


 この件が原因で、王国と帝国が戦争状態に陥るかもしれないのだから。

 もしそうなったら、いまだ国力が回復していない帝国は厳しい局面を迎えるはずだ。 

 

「ペーター陛下としては、それは避けたいだろうな」


 ブランタークさんも、俺の考えに賛同する。

 せっかく内乱が終わって戦後復興が進んでいるのに、また戦争になったら国内が疲弊してしまうのだから。

 

「どっちにしても、捕らえてみればわかるのである! ブランターク殿!」


「この辺だな」


 ブランタークさんが、見えない魔法使いの反応のあった場所を地図で指し示すと、導師が全力疾走で現場へと駆け出した。


「捕まえる気満々だな、導師」


 俺とブランタークさんは、この場から動けない。

 下手に捕縛しようと動いて、その結果、桃色カバさんが狙撃される事態だけは避けないといけないからだ。

 幸いなことに、この魔法使いが魔法で狙撃しようとすると、わずかだけど魔力を感じることができたので、桃色カバさんが撃たれるのだけは防げる。

 ただその反応が微弱すぎて、正確な位置を測定できない。

 導師に至っては、見えない魔法使いの魔力を『探知』することができなかった。

 というか、この魔法使いの魔力を『探知』できる魔法使いの方が希少だろうな。

 他の保護区を狙われたら、そこを守っている魔法使いでは防げないかもしれない。

 だから導師は、自らが動いて魔法使いの捕縛を試みているのだ。


「うぉーーー! どこである!?」


 ブランタークさんにおおよその位置を教わった導師が全速力でそこに辿りつき、見えない魔法使いを探しているが、もう逃げてしまったような気がする。


「もうあそこにはいそうにないな」


「それは俺も思いました」


 見ない魔法使いは、探知されにくい遠距離からの狙撃が売りであり、超近接特化戦闘型の導師とまともに戦うわけがないはずだからだ。


「うぉーーー! 見つからないのである!」


 導師が向かった場所から彼の絶叫が聞こえる。

 見えない魔法使いも、導師と近接戦でやり合う愚は犯さなかったか。

 

「見失ったな、導師」


「ええ。こいつは、思っていた以上に厄介だな」


 俺とブランタークさん、そして一部の『探知』に優れた魔法使いが見張り続ければ、桃色カバさんが狙撃されるのは防げる。

 だが、いつまでも俺たちを桃色カバさんの監視に当てるわけにもいかず、密猟者を捕らえることも極めて困難だ。


「陛下はどうするんだろう?」


「見えない狙撃手か。厄介な話だぜ」


 それから三日間。

 俺たちは王都郊外の保護区で見張りを続けたが、状況に進展はなかった。

 探知精度が低い魔法使いが見張る保護区で被害が出るのではないかという懸念を俺たちは抱いていたのだけど、見張っていれば問題ないことが判明した。


「狙撃した桃色カバさんの死体を回収しなきゃ意味ないからな」


「確かにそうですね」


 彼ら目的は桃色カバさんの肉と内臓であり、魔法での狙撃は手段でしかないからだ。

 倒した桃色カバさんの回収作業を妨害する人がいれば、密猟は防げるかもしれない。

 ただ、いつまでも俺たちや凄腕の魔法使いと冒険者が保護区を見張っているわけにもいかず、もう少ししたら王国軍の兵士たちにでも任せるしかないだろう。


「唯一の懸念は、魔法も使えない兵士たちだと密猟者の魔法使いに無力化されてしまう危険があるってことだな。なにしろ向こうは、凄腕の魔法使いだ」


 エルの考えも正しく、俺たちはどうしたものかと悩んでしまった。

 みんないつまでも、王国内のすべての保護区で桃色カバさんを見張っているわけにいかないからだ。


「陛下も、そこをどうしたものか悩んでます」


 俺たちの様子を見に来たワーレンさんから、さすがに陛下もこのまま俺たちを保護区に張り付けることは難しいとは思っていると聞いた。

 大勢の魔法使いと優秀な冒険者が、ただ桃色カバさんが密漁されないよう、 見張りとして配置されているのだ。

  これ以上の非効率は存在しないと思う。


「こうなったら、別のアプローチが必要かも」


「バウマイスター辺境伯殿、と言いますと?」


 謎の魔法使いが倒した桃色カバさんの肉と内臓は誰が購入するのか。


「多分、子供が生まれない貴族、それも桃色カバさんの卵の殻で作った精力剤では効果がない貴族でしょうね」


「それは陛下も考えておられましたが、彼らは違法な方法で桃色カバさんの肉と内臓を手に入れようとしているのです。そう簡単に他人には漏らさないでしょう。対外的には、自然妊娠したことにしたいはずです」


「精力剤を使って子供を作りました、とは言いにくいよな」


 ブランタークさんが言葉を続ける。

 桃色カバさんの卵の殻を使った精力剤は貴族に必要不可欠だが、それを使ったと公言はしたくない。

 それに他の貴族たちもお互い様なところがあって深くは追求はしないので、誰が桃色カバさんの精力剤を王宮から入手したのか、情報が厳重に管理されてわからないようになっていた。

 ましてや、密猟した桃色カバさんの肉と内臓は、密猟の黒幕が誰に売るか決められる。

 自分の悪事を漏らそうとする貴族には売らないだろうし、買った側も同罪だから、購入者も口が固いはずだ。


「桃色カバさんの方は見張りを強化して密売を防ぎつつ、その間にオトリ捜査をして黒幕を捕まえた方が早いかもしれませんね」


「魔法使いは、命令する奴がいなくなれば、桃色カバさんの密猟なんてしないだろうからな」


 効率を優先するブランタークさんも、俺の考えに同意した。


「先に見えない魔法使いを操っている黒幕を捕まえる。いい方法だと思いますが、バウマイスター辺境伯殿。誰がオトリになるのですか? 下手な貴族だと黒幕に感づかれるかもしれません」


「そうだなぁ……」


 桃色カバさんの密猟をしている黒幕に接触できる貴族……。

 誰が適任なんだろう。

 見えない魔法使いの捕縛が難しい以上、そっちから解決しないと駄目だろうな。

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― 新着の感想 ―
魔法使いの性別が書いてない。新たな嫁が来た〜〜。 それにしても魔法使いの存在を把握する制度が必要ですね。教会に任せれば簡単にできそうだけど、それはそれで問題あるだろうなぁ。
ここでリリエンタール伯爵登場とは思いませんでした。  カタリーナがアップを始めてる?w
男の子じゃなく、またボーイッシュ系女の子だったりして。
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